2019-12-13 2019-12-25
アメリカの教育の特徴・制度は?義務教育期間は学費無料!多様性を認める教育
アメリカの教育は各州の裁量によって制度が異なり、多様です。
アメリカへの留学を検討している学生やアメリカへの移住を検討されている方等、各州の教育制度が気になる方もいらっしゃるかと思います。
この記事では、アメリカの教育の特徴や日本との違い、教育制度の歴史などについて説明します。
高校まで学費無料!アメリカの教育の特徴
日本とは異なり、アメリカの教育制度は各州の裁量によって決められます。
各州に教育省、群に教育局、学校区に教育委員会がそれぞれ設置されています。
学校区の裁量が非常に大きく、実質的には学校区がほとんどの教育制度を決定しています。
義務教育の年限や小中高の修業年限、カリキュラム・教科書・休日などを学校区が決めています。
学校区によって教育レベルが異なり、子どもを持つ親の中には教育レベルの高さによって住む地域を決める人もいるようです。
原則無料の義務教育期間「K-12」
アメリカでは学年のことをKもしくはグレードと言います。
日本の幼稚園年長をK、小学1年生から高校3年生までの12年間をグレード1~12と呼びます。
12年の分け方も州によって異なります。
※一般的には、グレード1~5が小学校・グレード6~8が中学校・グレード9~12が高校です。
アメリカの義務教育期間は「K-12」と呼ばれています。
K(幼稚園年長)からグレード12(高校3年生)までが義務教育期間で、原則教育費は無償です。
▶K-12とは?アメリカで主流の幼稚園~中等教育を含む13年間の教育期間
ホームスクーリングが普及
アメリカでは、学校には通わず家庭で教育を行うホームスクーリングが認められています。
ホームスクーリングには、
- 保護者が教育を行う
- 家庭教師に一任する
- 一部の教科は学校で受ける
など、様々なケースがあります。
多様性を認めるさまざまな教育
モンテッソーリ・シュタイナー教育
教育に関する裁量が学校区に与えられていることから、アメリカの教育は日本よりも多様性に富んでいます。
モンテッソーリ教育やシュタイナー教育など、様々な教育を提供する学校があります。
▶シュタイナー教育とは、1人1人の個性を尊重し能力を最大限に引き出す教育
特別支援教育
アメリカの教育制度は、障がい者教育も充実しています。
個別障がい者教育法により、個々の課題を見極め適切な支援を無償で提供することが義務付けられています。
▶インクルーシブ教育とは│障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けること
アメリカと日本の教育の違い
外務省の「諸外国・地域の学校情報:アメリカ」を参考に、アメリカと日本の教育制度を比較したものが以下の表です。
先述した通り、アメリカの教育制度は各州で大きく異なります。
ここでは、マサチューセッツ州、メリーランド州、バーモント州の3つの州を例として取り上げます。
アメリカ | 日本 | |||
マサチューセッツ州 | メリーランド州 | バーモント州 | ||
学校制度 | 小学校:1年生から、5~8年生までのいずれかの学年まで
中学校:6年生~12年生 |
州内24の学区によって異なる | 小学校:Kから6年生までの7年間
中学校:7年生から12年生まで |
6-3-3-4制 |
義務教育期間 | 6歳~16歳 | 6歳~16歳 | 6歳~16歳 | 満6歳~満15歳 |
学校年度 | 9月上旬~6月下旬まで | 8月末か9月~6月中旬まで | 7月1日~6月30日(通学期間は8月下旬~6月中旬) | 4月~3月 |
学期制 | 学校によって異なる | 2学期制(9月~1月、2月~6月) | 学校区によって異なる | 3学期制 |
▶教員免許を活かせる仕事にはどんな求人がある?成功の秘訣を解説
アメリカの教育の歴史
アメリカの義務教育制度は、19世紀末後半頃に確立しました。
当時から政府による普遍的な教育制度は構築されておらず、全米各州で多様な教育制度が確立されました。
1965年に政府は初等中等教育法を確立し、貧困家庭の児童に対する教育支援事業などを開始しました。
1990年代以降、連邦政府が州政府の教育に関与するようになりました。
1994年には、アメリカ教育法とアメリカ学校改善法の2つの法律を制定しました。
連邦政府はこの2つの法律において、州および地方教育機関に学力水準の達成を要請しました。
2002年には、落ちこぼれをつくらないための法律を制定しました。
これは、連邦政府が州および地方教育機関に対して、教育水準の達成を要請する内容で、達成できない学校には生徒の転校や補習の提供や学校再編の制裁措置などを実施しました。
2011年頃、オバマ政権下では産業競争力向上を目的として、STEM教育を国家戦略として位置付けました。
STEM教育を実現するため、
- 学校におけるブロードバンドの推進
- EdTechを活用する政策方針
- EdTech開発者向けのガイドライン
などの実施プロジェクトを連邦教育省が発表しました。
▶STEAM教育とは何か?国内、海外での取り組み、推進に当たっての課題は?
2016年の振興計画では「テクノロジーが可能にする学習経験の変化をすべての人が享受できる」ことを国民に呼びかけ、それを実現するためのPersonalized Learning(個別化された学習)が指摘されました。
Personalized Learningは、以下の3つの内容から構成されています。
- オンライン学習:学習内容と指導内容がインターネット上で提供される学習
- ブレンド型学習:教室での教師による指導とオンライン学習を組み合わせた学習
- コンピテンシーに基づく学習:コンピテンシーの習得によって進級・進学できる学習
EdTechの活用やそれによる学習形態などの変化によって、教師に求められる役割が変容しつつあります。
▶EdTech(エドテック)とは何か?読み方は?注目される背景やeラーニングとの違いを解説
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アメリカの教育の成果
国際的な学力調査PISAやTIMSSにおけるアメリカの順位の推移について表にして説明します。
PISA2018「読解力」で世界第13位
国立教育政策研究所の「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」によると、アメリカのPISA調査の結果は以下の通りです。
年 | 読解力 | 数学的リテラシー | 科学的リテラシー |
2000年 | 15位 | 19位 | 14位 |
2003年 | 18位 | 28位 | 22位 |
2006年 | 調査対象外 | 35位 | 29位 |
2009年 | 17位 | 31位 | 23位 |
2012年 | 24位 | 36位 | 28位 |
2015年 | 24位 | 40位 | 25位 |
2018年 | 13位 | 37位 | 18位 |
これまでの結果を見ると読解力・科学的リテラシーは20位前後、数学的リテラシーでは30位前後で推移しています。
数学・理科教育調査(TIMSS2015)では10位以内
国立教育政策研究所の「算数・数学及び理科の到達度に関する国際的な調査(TIMSS)」によると、アメリカの調査結果は以下の通りです。
年 | 算数・数学 | 理科 | ||
小学校 | 中学校 | 小学校 | 中学校 | |
1995年 | 12位 | 28位 | 3位 | 17位 |
1999年 | – | 19位 | – | 18位 |
2003年 | 12位 | 15位 | 6位 | 9位 |
2007年 | 11位 | 9位 | 8位 | 11位 |
2011年 | 11位 | 9位 | 7位 | 10位 |
2015年 | 14位 | 10位 | 10位 | 11位 |
アメリカは平均的に10位前後で推移しています。
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レベルの高い教育を提供するアメリカの大学
世界大学ランキングTOP10に7校ランクイン
高等教育専門誌「THE(TIMES Higher Education)」によると、2020年の世界大学ランキングの10位までの結果は以下の通りでした。
- 1位:オックスフォード大学(イギリス)
- 2位:カリフォルニア工科大学(アメリカ)
- 3位:ケンブリッジ大学(イギリス)
- 4位:スタンフォード大学(アメリカ)
- 5位:マサチューセッツ工科大学(アメリカ)
- 6位:プリンストン大学(アメリカ)
- 7位:ハーバード大学(アメリカ)
- 8位:イエール大学(アメリカ)
- 9位:シカゴ大学(アメリカ)
- 10位:インペリアル・カレッジ・ロンドン(イギリス)
トップ10にアメリカの7大学がランクインしています。
世界大学ランキングは、
- 教育
- 研究
- 被引用論文(研究影響力)
- 国際性
- 産業界からの収入
の5分野13指標でスコアを算出し順位付けしています。
トップ10の大学は2019年から順位は変動したものの、構成する大学は変化していません。
アメリカの大学の仕組み
アメリカの大学では、日本の入試制度のようなものはなく、すべて書類審査で入学の可否が決定されます。
主に、過去の自分の成績などで評価されます。
9月から翌年の5月までの9ヶ月間を1年間として、
- 2期制(セメスター制)
- 4期制(クオーター制)
のどちらかが取られています。
大学の成績は単位制で、各学期ごとに単位を取得します。
学年の分け方は、在学している年数ではなく、取得した単位数によって決定します。
1~4年生をそれぞれfreshman・sophomore・junior・seniorと呼びます。
アメリカの大学の特徴は、学生個人の意思によって柔軟に学習ができることです。
具体的には、以下のようなことなどができます。
- ある大学で取得した単位を持って、別の大学に編入する
- 休学して残りの単位を復学後に取得する
- 途中で専攻分野を変更する
- 夏の間に単位を取得し4年在籍せずに卒業する
日本の大学生とは異なり、アメリカでは大学生を一人の大人として扱い、自己責任の下に選択の自由が与えられています。
リベラルアーツ・カレッジとは
アメリカには、リベラルアーツ・カレッジと呼ばれる大学がアメリカ全土で約600校あります。
多様な教養のある知識人や社会のリーダーを育成することを目的とした大学で、ハーバード大学などがこれに当たります。
入学時に専攻分野を決めておく必要がなく、理系・文系・芸術系などを問わず、多様な科目を学ぶことができます。
異文化交流が盛んな大学が多く、多様な国の学生が集まっており多くの日本人学生も留学しています。
▶リベラルアーツ教育とは?意味や由来・歴史、目的や役割は?どのような実例がある?
まとめ
- アメリカの教育制度は連邦政府ではなく各学校区によって決定
- EdTechの活用や学習形態の変化によって教師に求められる役割は変容しつつある
アメリカでは教育内容が統一されていないことなどから、国際的な学力調査では先進国と比べて順位が低くなっています。
今後もアメリカでは選択の自由の下、多様な人材の育成を目的とした教育が提供されると考えられます。
▶中国の教育の特徴は?PISA2018で世界第1位の制度、日本との違いを解説
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