2019-12-05 2019-12-25
中国の教育の特徴は?PISA2018で世界第1位の制度、日本との違いを解説
中国は、世界規模で教育水準を測定する調査「PISA」において、2009年と2012年、そして最新の2018年調査において1位を獲得しました。
この高い教育成果をきっかけに、中国の教育制度への関心が高っています。
この記事では、中国の教育の特徴や日本との違い、中国の教育市場で注目されているユニコーン企業などについて説明します。
日本と似てる?中国の教育の特徴
中国の教育制度では、基本的には日本と同様の6-3-3-4年制が採用されています。
1986年に定められた義務教育法において、中国の義務教育課程は6歳からの9年間です。
初等教育は6年制の小学校、前期中等教育は3年制の初級中学校が担っています。
これらの9年間を合わせた義務教育のあと、
- 後期中等教育を実施する3年制の高級中学校
- 職業技術教育を実施する中等専門学校・技術労働者学校・職業中学
に進路が分岐します。
教育部が教育制度を統括
中国全体の教育制度は、教育部と呼ばれる中央政府機関が統括しています。
中国国内の経済的地域差が大きいことから、修学年限などは地方に裁量を委ねています。
特に農村部では、予算不足などの理由から小学校を5年制として、これに続く中学校を4年制とする5-4年制を採っている地域もあるようです。
激しい受験戦争
日本よりもさらに激しい受験戦争の文化があることも、中国教育の特徴のひとつです。
特に普通高等学校招生全国統一考試(いわゆる大学入試センター試験のようなもの)が実施される6月は、その激しさ故に、「黒色六月(暗黒の6月)」と呼ばれています。
1980年の一人っ子政策以後、家庭における教育投資の集中化が進んだことが1つの原因として考えられています。
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中国と日本の教育の違い
外務省の「諸外国・地域の学校情報:中国」を参考に、中国と日本の教育制度を比較したものが以下の表です。
中国 | 日本 | |
義務教育期間 | 6歳~15歳(小学1年生~初級中学3年生) | 満6歳~満15歳 |
学校年度 | 9月1日~7月中旬 | 4月~3月 |
学期制 | 2学期制(1学期:9月1日~1月中旬、2学期:2月中旬~7月中旬) | 3学期制 |
教育概要・特色 | 9年制義務教育は、農村部から段階的に無償化が進められている。今後は各地域での普及と定着が重点とされている。 | 義務教育は、原則無償で提供されており、地域格差などは生じていない。 |
中国の学校制度は6-3-3-4制(一部地域で5・4・3・4制)です。
中国にも日本と同様に、義務ではない就学前教育を行う教育機関として幼稚園があります。
中国では共働きが一般的なため、保育時間が長く寄宿制(土・日曜日のみ帰宅)を実施している機関もあります。
中国の義務教育以後の学校は、
- 普通高級中学
- 中等専門学校
- 技術労働者学校
- 職業中学
の4種類があります。
2016年時点では、学生全体の約6割が普通高級中学に在学しています。
中国の高級中学など後期中等教育段階への進学率は、2015年時点で初級中学卒業生の約87%でした。
日本の高等学校進学率は97%なので、比較すると中国は日本の進学率を少し下回っています。
高等教育機関への進学率は2016年で42.7%で、2020年までに40%に高めるという国家目標を前倒しで達成しています。
中国での義務教育は、農村部から段階的に無償化が進められていますが、都市部の現在の課題は受験競争の激化とそれに伴う学習負担の増加や教育費の増加、知育偏重の傾向などがあります。
特に生活水準の著しい向上と子供への大きな期待が相まって、児童生徒の受験競争は日本以上であると言われています。
中国における英語教育は小学校3年生から、都市部ではそれより早くから行われています。
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中国の教育の歴史
中国では、1980年代後半から経済発展を推進する人材育成を目的として、教育改革が行われました。
当時の中国は、小学校教育さえ未実施地域が散見される状況でした。
この状況を打開すべく、義務教育の国家レベルでの普及をプロジェクトの1つとして掲げ、2009年には全人口の99%が住む地域で実施されました。
義務教育の普及後、教育の質向上に重点が置かれるようになり、政府は教育水準向上を図る基本方針「資質教育(中国語で「素質教育」)」を掲げました。
資質教育は、受験偏重な教育制度を見直すことが目的です。子どもの創造性や主体性、実践能力などの養成を重視するものです。
資質教育への転換は、受験戦争を緩和する政策の1つとして今後も重視されていくと考えられています。
中国の教育の成果
PISA調査で全分野世界第1位!
PISAでは、読解力・数学的リテラシー・科学的リテラシーの3つの項目で調査が行われます。
国立教育政策研究所のまとめた「OECD生徒の学習到達度調査(PISA)」によると、中国の2009年以降の調査結果は以下の通りです。
年 | 対象地域 | 読解力 | 数学的リテラシー | 科学的リテラシー |
2009年 | 上海 | 1位 | 1位 | 1位 |
2012年 | 上海 | 1位 | 1位 | 1位 |
2015年 | 北京・上海・江蘇・広東 | 27位 | 6位 | 10位 |
2018年 | 北京・上海・江蘇・広東 | 1位 | 1位 | 1位 |
2009・2012年・2018年の調査で上海は全ての項目で1位を獲得したことから、中国の教育制度が注目を集めました。
2015年の調査では、上海のほか3地域(北京・江蘇・広東)が調査対象に加わったことから、調査の順位は下がったと考えられます。
直近の2018年の調査結果では、再び全ての項目で1位を獲得しています。
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中国でも普及が進むEdTech、教育系のユニコーン5社
教育に多大な金額をかけている中国には、ITを活用した教育サービスを提供する企業が多く存在します。
多数の人口と高い教育熱、広い国土などを背景にテクノロジーを活用した教育サービスを提供する企業の中には、評価額1,000億円(10億ドル)を超える未上場の企業、いわゆるユニコーン企業も現れています。
ここでは、その中国の教育領域のユニコーン企業を5社紹介します。
VIPKID
- https://www.vipkid.com.cn/
VIPKIDは2013年に創業した、オンライン教育プラットフォームを提供する企業です。
VIPKIDは、5~12歳までを対象としたマンツーマン英語教育を提供しています。
2019年現在50万人以上の学生が利用しており、65,000人以上の北米のネイティブ英語教師が授業を行っています。
生徒は学校からの帰宅後、パソコンもしくはタブレット端末でログインし、5分間の予習用ビデオを視聴してから1回25分の授業を受けます。
授業後、教師は保護者に授業内容や生徒の習熟度合いなどといった情報を送り、保護者と情報共有を行うことができます。
iTutorGroup
- http://www.itutorgroup.com/
iTutorGroupは1998年に創設し、多様な分野のオンラインコースをグローバルに展開する企業です。
対象をジュニア~成人としており、英語・中国語・数学・コーディングなど様々なコースを提供しています。
2019年1月時点で、3万人以上の講師が在籍しており、年間で3,000万回以上のレッスンが行われています。これまでのレッスン提供数は1億8千万回を超え、135の国・地域で展開されています。
日本でもiTutorGroupの日本法人「VIPABC株式会社」が設置され、2016年からオンライン英会話サービスを展開しています。
Beijing Zhenguanyu Technology(北京貞観雨科技)
Beijing Zhenguanyu Technologyは、2012年に設立された、幼稚園年長~高校卒業までの学習をサポートする様々なオンラインサービスを提供しています。
現在主力事業となっているのは、マンツーマンのチュータリングサービス「Yuanfudao(猿輔導)」です。
「Yuanfudao(猿輔導)」は、
- 総合クラス
- 科目別クラス
- マンツーマンオンライン指導
- 小学生英語
- 国際数学オリンピック対策
- 中高の全科目
等、多様な機能で生徒のニーズに応えています。
1人1人の学習状況を把握して生徒の学習データを分析し、適切な課題をAIが提示し効率よく学習ができるシステムを構築しています。
2016年時点でオンラインコースは1万6,741コース、受講者は計2,148万人を超えています。
Zuoyebang(作業帮)
作業帮は、2014年に中国のインターネット検索サービス「百度(バイドゥ)」によって設立された、小中高生向けのオンライン学習サイトを運営する企業です。
宿題管理サービスと宿題の解答検索サービスを提供しています。
問題を写真に撮って投稿すると解答が得られる機能や、宿題の評価を受けることができる機能などがあり、この2つのサービスは中国全土の約38万の小中学校で利用されています。
このユーザーとデータを活用し、オンライン講義サービスなども展開しています。
17ZUOYE(一起作業)
- https://ucenter.17zuoye.com/
一起作業は2013年に設立され、教師・生徒・保護者の3者を結ぶ対話型の教育プラットフォームを提供しています。
パソコン・スマホ等で、英語や中国語の文章朗読や算数のクイズへの解答などを行うと自分のキャラクターが成長することで学習を促進します。
生徒は、学習状況の確認やフィードバックなどを受けることができます。
教師は、生徒の学習状況の確認のほか、クラスへのテスト・宿題の配布、保護者への学習記録の作成・送付などを行うことができます。
保護者は生徒と教師の双方と、学習進捗を見ながら円滑なコミュニケーションをとることができます。
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まとめ
- 中国の教育制度は基本日本と同様の6-3-3-4年制
- 全国統一的な教育制度ではあるが、都市部と農村部の教育格差が根強い
- 教育への投資意識が高く、受験戦争は日本よりも激しい
- テクノロジーを活用した教育サービスを提供するユニコーン企業も現れている
保護者や企業の教育への投資意識が強いことが、中国の教育が高い水準にある1つの要因であるといえるでしょう。
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