2019-09-19 2024-09-17
eポートフォリオとは?大学入試や就活にも活用される、学習記録などをデジタル化して残すシステム
2022年の大学入試から、一般選抜でも筆記試験だけでなく高校での学びの過程を評価指標に入れる動きがあります。
そこで利用されるのが生徒の高校での学びをデータ化した「eポートフォリオ」です。
多くの学校で普及が進むeポートフォリオがどのようなシステムなのか、大学入試ではどのように使われるのかを解説します。
この記事の監修者
Education Career 編集部
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目次
eポートフォリオは高校の活動記録をデジタル化して残すシステム

eポートフォリオとは、ポートフォリオとして集められる記録を電子化したものです。
「ポートフォリオ(portfolio)」とはもともと「書類を挟むファイル」のことを意味します。
日本だと、クリエイター業界で使われる「自分の実績をアピールするための作品集」という意味合いが最も馴染みがあるかもしれません。
教育業界における「ポートフォリオ」は、児童生徒の学習の成果、そしてそこに至るまでの過程に関する記録を集めたファイルのことを指します。
学習の達成にいたるプロセスも集めることで、児童・生徒の学習を様々な観点からよりよく理解できる点、そして勉強の成果だけでなく文化祭などの学校行事や課外活動の様子も記録しているという点が特徴です。
1回のテストだけでは測りきれないその人の本来の能力を評価することができるとして、現在注目を集めています。
ポートフォリオは教師が生徒の評価をする際に役立つだけでなく、児童・生徒自身が自分の学習を振り返る時にも効果的だとされています。
それは、自分の学びのプロセスを可視化することで自分自身を客観的に見つめ直し、次の学習へ応用することができるためです。
大学入試で必要な調査書・活動報告書の作成に役立つ
eポートフォリオでは、授業のノートやプリント、教師や同僚のコメントやフィードバックをはじめ、学校の行事や部活動での学び、自分自身で取得した資格・検定など様々な学習や活動の内容を記録することができます。
この情報は大学入試で必要な調査票や活動報告書の作成に役立ちます。
高大接続改革の一環として、志望大学に出願する際に生徒の学びのデータであるeポートフォリオを提出し、入学者選抜時の参考にする大学が増えています。
eポートフォリオは生涯学習でも利用される
eポートフォリオは学校教育の場面だけでなく、生涯学習でも利用されています。
自治体や大学、関連する機関と連携し、ひとりひとりが大学や職業を通して身に着けた知識やスキルをポートフォリオの形で記録するシステムの構築は海外で先進的に整備されてきました。
海外での活用事例に影響され、日本でもICTを生涯学習支援事業に活用する動きが近年活発化しています。
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eポートフォリオの高大における用途

このように、eポートフォリオは近年注目を集めています。ここでは高校、大学、大学入試において、eポートフォリオはどのように使われるのかをご紹介します。
高校
生徒の用途
自分の活動成果や学びを記録します。
記録した「学びのデータ」はいつでも閲覧することができるため、自分がどのような種類の学びに取り組んできたかを振り返り、今後どのような学びにつなげていくかを考えるきっかけにもなります。
学校行事や部活動などでの学び、自分で取得した資格・検定なども記録することができます。
生徒の課題として、ポートフォリオの作成が負担になる恐れが指摘されています。
学習の内容をこまめに記録し続けることは、特に記録作業が苦手な生徒にとっては重荷になるでしょう。
また、ポートフォリオの本質を理解せずに自らの主体的な学びの振り返りに生かすことができなければ、望む学習効果が得られない可能性があります。
教員の用途
教員は生徒一人一人の入力内容を閲覧します。
デジタル化されていることで、生徒の学びに即座にフィードバックをすることが可能です。
面談時などに生徒と一緒に内容を確認し振り返ることで、より適切な指導・サポートをすることができます。
なお、生徒の学びの過程を見ることで教員の指導方法の改善や指導力の向上につなげることもできるとされています。
課題として、既に多忙な教師にとってeポートフォリオによって生徒一人一人の学習内容や進捗を細かくチェックしたり、コメントを書いたりすることは大きな負担になることが指摘されています。
大学入試
生徒の用途
学校の授業や行事、部活動での学びや自身で取得した資格・検定、学校以外の活動成果や学びを記録し、積み上げていき、このデータを大学入試時に利用することができます。
一発試験では測りきれない生徒の能力をより多面的・多角的に評価できると言われています。
勉強面以外の部活や課外活動、ボランティア活動といった様々な活動も大学入試の評価対象になることは、学生にとってプレッシャーになるのではないかといった指摘も出ています。
例えば部活動において全国大会に出場したとして、エースとして出場したのか控え選手として出場したのかという違いをどのように評価するのかといった点も課題として指摘されています。
教員の用途
生徒一人一人の今までの学びの過程を見ることができるため、生徒の人物像や大学での学びの意欲・適正を判断することができます。
筆記試験でボーダーラインになった生徒に対する合否判定の参考資料になることが考えられます。
ペーパーテストでは測れない優れた能力を持つ生徒を評価することができます。
課題としては、今までの大学入試はテストの点数といった明確な数値で評価していましたが、ポートフォリオではわかりやすい指標はありません。
そのため、教員側は与えられた情報の評価方法に迷うことが考えられます。
大学
生徒の用途
日々の学びが蓄積されたeポートフォリオは、就職活動用のエントリーシートを作成する際には非常に有益な情報源になります。
特に大学では講義だけでなく課外活動で得た学びも就職活動をする際、そしてその後の人生においても重要な要素を占めます。
学生が自らの学びの成果や達成状況を整理・点検することで、これまでに獲得した知識やスキルを客観的に把握し、新たな学びにつなげたり、現在直面している課題の解決につなげることができます。
教員の用途
eポートフォリオは教員が自身の授業改善に役立てることもできます。
大学教員は自身の研究活動に比べると教育活動の業績評価が不十分であるため、授業改善などにあまり積極的に取り組まない傾向があるとされていました。
しかし、大学進学率が上昇し、多くの学生が大学に入学している今日、大学教育のあり方が問い直されています。
今後は大学課程での教育活動を適切に評価する必要があるとして、教員が講義情報を記録し、活用する仕組みの構築が模索されており、その一環としてeポートフォリオの利用が検討されているのです。
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eポートフォリオの例
ここでは、現在開発・整備が進み、いくつかの学校で実際に利用されているeポートフォリオを紹介します。
Classiポートフォリオ

https://classi.jp/portfolio/
Classiポートフォリオとは、ベネッセホールディングスとソフトバンクの合弁会社である「Classi」が提供する、学校での学びをICTを活用して支援するサービスの1つです。
生徒が日々の学校生活の中で得た学びや気づきを、スマートフォンやタブレットなどで記録しながら、生徒の「主体的に学ぶ力」を育成することを目指しています。
「JAPAN e-Portfolio」とも連携しており、蓄積したデータを大学出願時に利用することができます。
導入されている学校の例
市川中学校・高等学校、福島県立ふたば未来学園高等学校、栃木県立佐野高等学校・同付属中学校など
Benesse マナビジョン

https://manabi.benesse.ne.jp/
Benesseマナビジョンとは職業・学問・大学・専門学校への進学を考える際に役立つ情報や先輩の口コミ情報・体験記などが掲載されているサイトです。
2018年に、サイト内で高校生が日々の学習を記録できるポートフォリオ機能が追加されました。
ベネッセが提供しているサービスのため、今まで受験したベネッセのテストの振り返りを自分の成績を参照することができます。
Manaba

https://manaba.jp/
Manabaとは朝日ネットが提供しているクラウド型教育支援サービスです。主に大学での活用を想定されており、学生だけでなく教職員の教育活動の支援も行っています。
Manabaには、主に以下の2つの機能があります。
- 学習管理システム(LMS):教員が課題管理や情報発信できるシステム
- ポートフォリオ機能:学生がレポートや小テスト、成績や教員からのコメントを参照し振り返ることができる機能
導入されている学校の例
2019年4月時点で、全学で導入している大学等の数は90校に上っています。例えば、東洋大学、中央大学、日本女子大学などで導入されています。
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文科省の大学入学者選抜改革推進委託事業

文部科学省では高大接続改革を実現するために、高等学校教育と大学教育をつなぐ大学入学者選抜において、学力の3要素(知識・技能、思考力・判断力・表現力等、主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)を多面的・多角的に評価することが必要であるとしています。
そこで、2016年度から「大学入学者選抜改革推進委託事業」として、今まで評価が難しかった「主体性」や「思考力」を適切に評価するための調査研究を行っています。
2019年度予算は1.4億円
この事業では、大学と協働して入学者選抜に関する調査研究を実施し、その成果を発信・普及しています。
調査研究の内容としては、個別の大学の入学者選抜における課題点の洗い出し、「思考力」を適切に評価する教科・科目横断型、総合型の評価手法の研究開発、「主体性」を適切に評価する面接などの評価手法に関する研究開発、といったものが挙げられます。
2016年~2018年が第1期、2019年~2021年が第2期とされています。
第1期では人文社会分野、理数分野、情報分野、主体性等分野の4つの分野において成果報告がなされ、特に個別大学において「主体性」を把握し評価できる評価方法や作問の開発、改善が喫緊の課題であることが示されました。
第2期では第1期の成果を踏まえ、それを実際の入学者選抜に実践するための課題の調査や方針の策定を目指しています。
そして第1期で重視された「主体性」を適切に評価するには、高等学校が作成する調査書を積極的に活用する必要があり、そのためには調査書の電子化を早急に進めなければならないとしています。
2019年度は1.4億円の予算が本事業に投入され、ICTを活用し主体性の評価をより実質的、効果的、効率的に実施できるよう、調査研究を行っています。
主体性、新たな評価手法の蓄積・普及を目指す
第2期に入った大学入学者選抜改革推進委託事業は、「主体性」をより適切に評価するために、現在大学入試を受ける際に高校から送る「調査書」のあり方を見直し、一般選抜も含めてこの調査書をより効果的に活用していく方針を打ち出しています。
これによって、大学入学前に受験者が取り組んできた学習や活動の履歴、大学への学びの意欲をより適切に評価できるとしています。
一方で、現状では高校から送られる調査書は大学の一般選抜ではほとんど合否判定に利用されていません。
その中で、毎年大量の受験者を抱え限られた時間で評価しなければならない一般選抜で、紙媒体の調査書を入学者選抜に活用することはかなり難しいとされています。
高校・大学関係団体からは調査書の電子化に向けた要望が寄せられています。すなわち、ここまで説明してきたeポートフォリオです。
このような背景を踏まえ、本事業では電子化された調査書(文科省が開発しているのはJAPAN e Portfolio)で主体性を適切に評価するための取り組みに加え、電子調査書に必要なセキュリティ環境の整備も同時に進められています。
eポートフォリオの現在の普及状況
調査書の電子化の導入方針として、2019年~2020年は検証期間と設定し、この事業に同意した任意の大学・高等学校で電子調査書の入試への活用を行います。
そして、成果と課題を踏まえた電子調査書システムの改修を行い、2022年度に実施されるすべての大学のすべての入試区分において、原則として電子調査書を用いることを目指すとしています。
2019年度の入試に、JAPAN e-Portfolioを利用して電子化された高校の調査書を活用する大学は9月13日時点で23校です(随時利用申し込みを受け付けているため変動する可能性があります)。
しかし、活用方法としては評価に利用するだけでなく、参考参照利用、情報収集利用など必ずしも評価に利用しない大学もあります。
どのような活用方法を取るかは各大学の募集要項等を確認する必要があります。
高校の間ではeポートフォリオの普及は一定程度進んでいると見ることもできます。
特に2022年の大学入試において電子調査書の提出が必要になるとして、民間企業が開発しているeポートフォリオサービス等も活用しながら多くの学校が何らかの対応を進めています。
まとめ

この記事では現在注目を集めているeポートフォリオについて説明してきました。
知識・技能だけでなく、思考力や主体性を重視する教育の流れの中で、より多様な方法で生徒の能力を評価しようとする動きがeポートフォリオの普及を推進しているといえるでしょう。
従来の一発試験の結果だけで判断するのではなく、生徒の学びの「過程」を含めて総合的に判断しようという考え方に日本の教育が変化していると考えられます。
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