2019-06-05 2019-12-13
いまさら聞けない「高大接続改革」とは?
現代の予想できない社会の変化に伴い、これからを生きる若者やその若者を育てる教育機関に求められることは変わってきています。特に、今求められている力は「新たな価値を創造していく力」です。
新たな価値を創造する力は今まで通りの教育では身に着けることは難しいため、文部科学省が「高大接続改革」として取り組みを進めていくことを発表しました。
すでにこの取り組みは実行されていますが、実際に何が変わるのか、これからどう変わっていくのかを理解できているでしょうか。
この記事では、教育業界に関わる方には必ず知っておいて頂きたい「高大接続改革」とは何かを解説します。
高大接続改革の目的、実行プラン、進捗状況、今後のスケジュールに分けて説明していますので、気になる内容がある方は部分的に読んでいただいても構いません。
高大接続改革とは
高大接続改革とは、簡潔に言うと、高校・大学入試・大学の3つが一体となった教育改革のことです。
文部科学省の「高大接続改革」に係る質問と回答(FAQ)によると、「学力の3要素(1.知識・技能、2.思考力・判断力・表現力、3.主体性を持って多様な人々と協働して学ぶ態度)」を育成・評価するための一体的な改革とされています。
高大接続改革は、2012年8月に中央教育審議会で諮問され、2015年1月に実行プランが発表されました。
現代、グローバル化の進展、技術革新、国内における生産年齢人口の急減などの社会状況の変化が起きています。
文部科学省は、これに伴い、予見の困難な時代において新たな価値を創造していく力を育てることが必要で、この力を育むには、上記の「学力の3要素」をバランスよく育成・評価することが重要であると考えました。
学力の3要素を高校教育で育成し、大学教育でさらなる伸長を図るためには、高校と大学をつなぐ大学入学者選抜試験でも多面的・総合的に評価を行う必要があります。
こういった背景から、高校・大学入試・大学が三位一体となって「高大接続改革」に取り組むことになりました。
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高大接続改革の実行プラン
文部科学省が2015年1月に発表した「高大接続改革実行プラン」を参考に、高大接続改革で実際に何が行われるかを紹介します。
各大学の個別選抜の改革
大学入学希望者の「学力の3要素」を踏まえ、能力・意欲・適性等を多面的・総合的に評価する大学入学者選抜をするための改革が行われます。具体的な施策には、以下の5つがあります。
個別選抜改革を推進するための法令改正
- アドミッション・ポリシー(入学者受入の方針)、ディプロマ・ポリシー(学位授与の方針)、カリキュラム・ポリシー(教育課程の編成・実施の方針)の一体的な策定を義務付ける。
- 認証評価の評価項目に入学者選抜を明記する。
大学入学者選抜実施要項の見直し
一般入試、推薦入試、AO入試の区分を廃止した新たなルールの構築
アドミッション・ポリシーの明確化
- アドミッション・ポリシーに関する取り組み事例を収集した事例集の作成と各大学への提供
- アドミッション・ポリシーに盛り込むことが求められる事項に関する、ガイドラインの作成と各大学への提供
認証評価等の推進
- 新たなルールの順守状況の評価、各大学の独自の取組を促す評価の推進
- 大学ポートレートを稼働し、各大学の入学者選抜等に関する情報公開を開始
財政措置
アドミッション・オフィスの整備・強化、アドミッション・ポリシーの明確化、基盤的経費の配分における要件化や加算化、大学改革のための補助金の応募条件における要件化の工夫など、財政措置の在り方の検討
「高等学校基礎学力テスト(仮称)」及び「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」の実施
学力評価のための新テストのあり方について一体的な検討を行うようです。
新テストの実施時期
「高等学校基礎学力テスト(仮称)」は2019年度、「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」は2020年度からの実施を目指す。
新テストの実施内容
- 対象となる教科・科目、テストにおける「教科型」・「合教科・科目型」・「総合型」等の具体的な枠組み、問題の蓄積方法、作問の方法、記述式問題の導入方法、CBT方式の導入方法、成績表示の具体的な在り方などに関する検討を行う。
- 「教科型」「合教科・科目型」「総合型」の作問イメージ(モデル問題)を公表する。
- 新テストの出題内容や範囲、プレテストの実施内容やスケジュール、正式実施までのスケジュールを内容とする、新テストの実施方針を取りまとめ公表する。
- 新テストのプレテストを実施し、成果や課題を把握・分析する。
- 新テストの実施大綱を策定し公表する。
新テストの実施主体
独立行政法人大学入試センターを改組し、新たな組織とする。
高等学校教育の改革
高等学校教育の質の確保・向上を図り、生徒が主体的に学ぶ力を身に着けられる教育への改革を行います。
課題の発見と解決に向けた主体的・協働的な学びの推進と高等学校教員の資質能力の向上
- 生徒の主体的・協働的な学習・指導方法の充実に向けて必要な方策について検討し、その普及を図る。
- 生徒が主体的・協働的に学ぶ授業を展開できる力や、生徒の多様な学習成果や活動を評価する力を、教員が身につけられるよう養成・採用・研修の改善を行う。
多様な学習活動・学習成果の評価
- 調査書の様式の見直し、出願時提出資料の共通様式の策定、指導要録における観点別学習状況の示し方や、テスト結果の示し方、大学での活用方策、関係書類などについての検討
- 検討結果を踏まえた、調査書や指導要録の改訂
学習指導要領の見直し
高等学校学習指導要領において、「どのような力を身につけるか」の観点に立って、そうした力を育むため、学習方法・環境についても明確にする観点から見直しを行う。
大学教育の改革
大学教育では、多面的・総合的な評価等の大学入学者選抜改革と連動し、多様な学生が切磋琢磨して、互いに刺激を与えながら成長できる場を目指した改革を行います。
そのうえで、高等学校教育までに培った力をさらに発展させ、予想困難なこれからの社会に出て、自ら答えのない問題に対して答えを見つける力を身に着けられることを目指します。
大学教育の質的転換
- 大学設置基準等を改正し、SDの義務化をはじめとする学長を補佐する体制の充実を図る。
- 大学教育再生加速プログラムにおけるアクティブラーニングの導入など、教育の質的転換を推進する。
学生の学修成果の把握・評価の推進
学修成果や内部質保証に関する評価の規定を創設する。
大学への編入学等の推進
- 高校専攻科科修了生の大学への編入学について、中央教育審議会における検討結果を踏まえ、必要な制度改正を行う。
- 入学後に幅広い学問分野に触れたうえで、進路決定が可能となる取り組みを推進する。
- 大学入学後の進路変更や学びなおしのための環境整備についての検討を行う。
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高大接続改革の進捗状況
2012年頃から始まった高大接続改革の進捗状況について、2018年10月に文科省が発表した「高大接続改革の進捗状況」を参考に、「高等学校教育改革」「大学教育改革」「大学入学者選抜改革」の3つの項目に分けて説明します。
高等学校教育改革
教育改革の見直し
2016年12月に「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領の改善及び必要な方策について」答申が発表されました。
学習・指導方法の改善と教員の資質能力の向上
「主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)」について学習指導要領と一体で議論が進められています。
2015年12月に「これからの学校教育を担う教員の資質能力の向上について」答申が行われ、2016年11月に「教員公務員特例法等の一部を改正する法律案」(教特法、免許法、教員研修センター法の一括改正)が成立しました。
多面的な評価の推進
2017年7月に「高校生のための学びの基礎診断」の実施方針が策定されました。2017年度に「キャリアパスポート(仮称)」の調査研究事業を実施しています。
大学教育改革
「三つの方針※」に基づく大学教育の質的転換
※「三つの方針」とは、卒業認定・学位授与の方針、教育課程の編成・実施の方針、入学者受入れの方針を指します。
2017年4月に「三つの方針」の一体的な策定・公表が制度化され、「三つの方針」策定・運用に関するガイドラインを国が作成・配布しました。
大学入学者選抜改革
「大学入学共通テスト」の導入
2017年7月に「大学入学共通テスト」の実施方針を以下に決定しました。
- 【国語】【数学】で記述式問題を導入すること
- 【英語】で4技能(読む・聞く・話す・書く)を適切に評価するため、民間等が実施する資格・検定試験を活用すること
個別入学者選抜の改革
2016年度から大学入学者選抜改革推進委託事業として、新たな評価方法の開発・普及を進めています。
2017年度7月に入学者選抜に関する新たなルールの設定、調査書・提出書類の改善などを含む「平成33年度大学入学者選抜実施要項の見直しに係る予告」を決定しました。
今後の高大接続改革のスケジュール
高大接続改革の今後のスケジュールについて、進捗状況同様の3つの項目に分けて説明します。
高等学校教育改革
教育改革の見直し
2019~2021年度に教科書作成・検定・採択・供給を進め、2022~2024年度に年次進行で新学習指導要領が実施されます。
学習指導方法の改善、教員の指導力の向上
2019~2024年度に制度改正に基づく教員の養成・採用・研修が行われます。
多面的な評価の充実
2019~2021年度は多面的な評価を推進する期間とし、2022~2024年度に新学習指導要領を踏まえた対応を行うようです。
- 学習評価の在り方の見直しや指導要録の改善
- 学習成果を多面的に評価するツールとしての民間検定等の活用の推進
- 生徒自身の自発的なキャリア形成を促す方策の推進
「高校生のための学びの基礎診断」の仕組みの構築
2019~2024年度内の各年度で申請受付・審査・認定・情報提供が行われ、各高等学校で選択し計画的に実施されます。
大学教育改革
三つの方針に基づく大学教育の実現
2019~2024年度に、各大学における各方針を踏まえた卒業認定、カリキュラム改革、入学者選抜の改革、SD・FD等の取り組みを、可能なものから速やかに実施していく予定です。
認証評価制度の改革
2019~2024年度にかけ、第3サイクル評価を開始する予定です。
大学入学者選抜改革
「大学入学共通テスト」の導入
2019年度に「実施大綱」の策定・公表され、確認試行調査が実施されます。2020年度に「大学入学共通テスト」が実施される予定です。
以降のスケジュールは、2021年度に新学習指導要領に対応した「実施大綱」の予告、2023年度に新学習指導要領に対応した「実施大綱」の策定・公表が行われ、2024年度に新学習指導要領に対応したテストが実施される予定です。
個別大学における入学者選抜改革
2019年度に各大学の入学者選抜方法等の予告・公表が行われ、2020年度から「2021年度入学者選抜実施要項」が発出、各大学で選抜が実施される予定です。
2021年度以降に新学習指導要領に対応した個別選抜の実施に関する通知、各大学の入学者選抜方法等の予告・公表され、2024年度5月に「2025年度大学入学者選抜実施要項」が発出し、各大学で選抜が実施される予定です。
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