• /
  • コラム/
  • ラーニングアナリティクスとは?ビッグデータが教育を変える

2020-09-10

ラーニングアナリティクスとは?ビッグデータが教育を変える

情報化が進むなかで、教育領域においてもデータ分析に基づく「アナリティクス」を利用する動きが活性化しています。

いわゆる“学習ビッグデータ”“教育ビッグデータ”を収集、分析して教育現場で活用しようという取り組みで、「ラーニングアナリティクス(Learning Analytics)」と呼ばれています。

ラーニングアナリティクスの定義やフレームワーク、日本での事例を紹介するとともに、未来の教育像を想像してみましょう。

ラーニングアナリティクス(LA)とは

Learning Analyticsを日本語に直訳すると「学習分析」。英語では「LA」と略され、世界で活発に研究が行われている領域です。

従来、教育に関する変化や成果を測ろうとすると、一律で実施する試験やアンケート、実験者による観察が中心でした。

定量的なデータがある程度得られるものの個別事象によるところも多く、研究余地が残されている状態だったといえます。

しかし2000年代に入って社会が急速にデジタル化し、ビッグデータの活用が進むなかで、他領域における科学分析を教育分野に活用できる下地が整ってきました。

そこでラーニングアナリティクスへ腰を据えて取り組む機関が出てきたのです。

ラーニングアナリティクスに明確な定義はなく、さまざまな意味づけがなされていますが(出典1)、教育関連のビッグデータを分析し、どのようにフィードバックすれば教育現場が改善されるかを、科学的に解き明かそうとするものだと考えられます。

ラーニングアナリティクスが注目される理由

ビッグデータイメージ

ラーニングアナリティクス(LA)という語が用いられるようになったのは、「2010年に第1回のLearning Analytics and Knowledge(LAK)国際会議が告知されたあたり」だといいます(出典2)。

背景には急速なIT化と、根拠(エビデンス)に基づく教育改善を求める機運の高まりがあげられます。

学習シーンでも広くPCが使われるようになると大量のログが蓄積され、学習履歴や行動、プロセスなど、あらゆるデータを取得できるようになりました。その結果新たなアプローチが実現。

九州大学が2016年、「ラーニングアナリティクスセンター」を設立したのをきっかけに、多くの高等教育機関や研究機関が着目し、「eポートフォリオ」という学習データを有効活用して学生の学びを可視化しようと取り組んでいます。

さらに、ICTを活用した学習法はシステム化され、eラーニングやLMS(学習管理システム)、大規模オンライン講座「MOOC」が日本でも活用されています。

LA先進校、九州大学の取り組み

ラーニングアナリティクスを活用した具体的な取り組みについて、先進校である九州大学の事例を紹介します。

ラーニングアナリティクスセンター設立の背景

2016年2月、九州大学で設立されたラーニングアナリティクスセンターは、「教育・学習に関するデータの管理・分析を行い、教育・学習の改善に資する情報を提供することを目的」としていました(出典3)。

学校教育の現場でも2010年頃から電子教材の導入が進み、電子教科書のページを拡大しながら提示する、生徒の回答を電子黒板に列挙するといった、インタラクティブな授業が行われていました。

紙の教科書とノートだけでは得られないデータが生まれている状態です。

ところが、学習者の活動を記録、分析しフィードバックすることはあまり考慮されていなかったといいます。

そこで九州大学ラーニングアナリティクスセンターでは、学生の行動ログと成績を統合し、学び方・教え方を分析。学習支援や教育改善に生かそうと考えたのです。

ラーニングアナリティクスで実現したこと

ラーニングアナリティクスセンター設立に先駆け、九州大学では2012年頃から率先してデジタル化を進めていました。

独自のeラーニングシステム、eポートフォリオを構築しており、2016年9月末時点で3,000万件以上の学習ログを保持していたといいます。

これらの分析を通して次のような支援を行いました。教える人向けの教育支援、学ぶ人向けの学習支援、双方の観点を含んでいます。

<授業前>

  • 学生が理解しにくいところを提示して説明追加
  • 学習活動の活発度を可視化して評価

<授業中>

  • 授業中の学生の行動をリアルタイムに分析
  • 利用履歴に基づくドロップアウト等の傾向の提示

<授業後>

  • 学生の学習履歴から、教材の改善点を提示
  • 利用履歴から成績を予測し、今後の学びを改善

例えば、「予習したほうが成績があがる」と認識している方は多いと思います。しかしあくまで感覚的な捉え方が中心でした。

九州大学が、予習と成績の関係についてラーニングアナリティクスのアプローチで分析したところ、「予習したグループは平均と比べて成績がよい」という結果が得られたといいます。

授業前、授業後、期末テスト、総合評価、すべてを通して平均よりスコアが高かったのです。

さらに、学生の行動から成績アップにつながった行動を分析。スライドを自動要約し、マイクロラーニングコンテンツとして予復習に活用できるようにする、といった取り組みを行いました。

▶マイクロラーニングとはどんな学習方法?メリット・最適な場面

ラーニングアナリティクスとこれからの教育

挙手する子ども

ビッグデータ解析の技術は年々進歩しており、ラーニングアナリティクス領域も急成長すると考えられます。

ラーニングアナリティクスが普及すると、どういう未来像が見えるでしょうか。

個人に最適化した教育が実現

一つは、より個人の実態に即した学習支援が実現するという点です。

ラーニングアナリティクスを活用すれば、蓄積された大量のログから類似するパターンを見つけ出し、効果があった取り組み、なかった取り組みを判別し、効果が期待される教授方法を提案可能。

学習者も自身のスタイルに合った方法で学べるため、より効率的にプログラムを進められると期待できます。

教えるスキルが標準化され学力向上?

もう一つは「可視化」。ビッグデータ活用の文脈では、グラフや表を活用した数値の“見える化”が実現する、という観点が欠かせません。

教育現場に当てはめると、教え方と成績を具体的に紐づけたり、予復習の仕方と成績を紐づけたりといった分析ができるようになります。

いわゆる“先生の力量”によるところのスキルが標準化され、横展開がしやすくなるのです。

これは相対的な学力向上にもつながると期待できます。

人にしかできないことが重視される時代に

ラーニングアナリティクスは、教育に関するビッグデータを分析し、現場の改善に生かそうとする取り組みです。

俗人化していた“先生のスキル”を可視化し、教育者の相対的なスキル向上が期待できます。

また学習者にとっても、自身にあった方法で効率的に学びを深められるメリットがあります。

社会が急速にICT化するなかで、あらゆる学習の場が変革を求められています。学校とて例外ではありません。

ラーニングアナリティクスの実践的な取り組みはまだ序盤といえる状況ですが、デジタル・ネイティブ世代も増え、指導者、学習者、双方の立場から、より踏み込んだ取り組みが求められています。

データ活用により余計な労力が削減されると、重要性が増すのが人間らしさです。これからの社会では、「人にしかできないことは何か」を各々が考え、“生き抜く力”を育む観点が必要です。

単なる学力育成に留まらず、生涯を通じて生き抜く力を身に着けられる支援が求められています。

▶非認知能力とは?世界が注目、生涯の学びを支えるちから
▶教育業界での転職を成功させるには?会社選びから面接対策まで完全ガイド
▶教員免許を活かせる仕事に転職!どんな求人がある?

出典

1)緒方広明.(2018).ラーニングアナリティクスの研究動向─エビデンスに基づく教育の実現に向けて.京都大学.情報処理Vol.59,No.9,2018.9,795-799.
2)武田俊之.(2015).ラーニング・アナリティクスとは何か.関西学院大学.コンピュータ&エデュケーション,VOL.38,12-17.
3)ラーニングアナリティクスセンターの取り組みについて,2017/3/6

関連キーワード

エージェントに 無料転職相談する
中途採用支援の依頼をする
教育業界の非公開求人が多数 転職エージェントに相談する