2020-03-31 2023-12-12
教育業界の課題は?現状、将来性や今後の動向を徹底分析
大学入試改革や教員の働き方改革など何かとニュースの話題に上ることが多い教育業界。
最近ではeラーニングといった教育のICT化が進み、民間企業の進出も盛んです。
この記事では日本の教育業界について、現状や今後の課題、将来性について解説します。
この記事の監修者
Education Career 編集部
教育業界専門の転職エージェント「Education Career」の編集部です。年間で数百名の教育業界出身者の転職やキャリアの支援を行う転職エージェントとして、教育業界での転職活動やキャリアに役立つ記事を更新しています。
教育業界の最大の課題は少子化
ご存知の方も多いと思いますが、教育業界の最大の課題は少子化問題と言えるでしょう。
教育を受ける子どもの数が少なくなることで、教育産業全体が縮小が懸念されています。
小学生の数は1958年の約半分に減少
小学生の児童数は、毎年過去最少を更新しています。
2019年の小学校の児童数は約637万人で、これは最も多かった1958年の約1,349万人と比べるとおよそ半分です。
出生率の低下から小学校の児童数は1981年以降減少し続けており、2019年現在まで毎年約1.5%ほど減少しています。
生徒・児童数の推移の詳細は以下の記事を参照ください。
教育業界の現状

続いて、教育業界の市場規模の推移や成長している産業分野、教育政策の現状についてみていきます。
市場規模は約2兆6,800億円で近年微増傾向
矢野経済研究所の「教育産業白書2019年版」によると、2018年度の教育産業の市場規模は2兆6,794億円です。
市場規模の推移をみると、2015年以降は微増です。
子どもの数の減少に反し、教育業界の市場規模は維持もしくは拡大傾向であることがわかります。
この調査では教育産業市場を大きく15の分野に分けて調査をしていますが、その中で2018年度は9つもの分野で市場規模が拡大しています。
eラーニング・通信教育・幼児英語教材市場が特に成長
2018年度に市場規模が拡大した分野の中で、
- eラーニング
- 通信教育(幼児、学生)
- 幼児向け英語教材
3つの市場は前年度比5%以上増加と特に成長している分野です。
eラーニング市場
eラーニングとは、コンピューターやインターネットなどの情報通信技術を利用して提供される学習サービスを指します。
いつでもどこでも受講でき、効率的な学習が可能な点が特徴です。
最近では学生だけでなく会社での研修にeラーニングを導入する企業も増えています。
近年は情報技術の進歩やデバイスの普及などから、以前よりもコストを抑えた導入や開発が可能になっていることも市場の成長につながっていると考えられます。
通信教育市場
幼児・学生向けの通信教育市場です。
2014年頃の顧客情報漏洩事故などによって一時期会員数が減少傾向にありましたが、2018年以降会員数は増加に転じていることが好調な要因として考えられます。
一方で社会人向けの通信教育市場規模は減少しました。
その要因として、好景気によって就職環境が良い状態が続き、資格の取得によって転職や職場環境の改善を求める動きが弱まっていることが考えられます。
幼児向け英語教材市場
幼児向け英語教材も前年度よりも6.3%市場規模が拡大しています。
近年幼児教育への注目が高まっており、英語に限らず幼児教育産業全体の堅調が続いているようです。
学校外学習費の増加
文部科学省の「子供の学習費調査」によると、平成30年度の学校外活動費は前回調査の平成28年度調査と比べて増加しています。
特に私立の学校に通う子どもの学校外活動費の増加が顕著で、幼稚園、小学校、中学校、高等学校のどの段階でも学校外活動費が増加しています。
幼稚園や小学校に通う子どもの学校外学習費は前回調査より3万円程度増加しています。
公立の学校に通う子どもの場合も、中学・高校段階では学校外活動費が増加しています。
学校外活動費には、家庭内学習のための補助教材の費用や、学習塾に通う費用、習い事のための費用などが含まれます。
全体的な傾向として、スポーツや芸術活動といった習い事よりも学習塾や通信教材への支出を増やす家庭が多くなっているようです。
教育ICTの推進
教育のICT化は国も強く推進しています。
文部科学省は2019年、1人1台の端末環境を整備する「GIGAスクール構想」を打ち立てました。
また、電子黒板や無線LANの配置など教育環境の整備についても「教育のICT化に向けた環境整備5か年計画(2018~2022年度)」等で国として方針を示し、財政措置を講じて積極的に進めています。
このように教育のICT化が進められるのは、学習指導要領の改訂で「情報活用能力」の重要性が明記されたことが大きな要因と言えます。
小学校ではプログラミング教育の必修化も決定されており、インフラの整備が急務となっています。
日本は国際的にみても教育のICT環境の整備・活用が遅れていると指摘されています。
まだまだ教育のICT化が進んでいない学校も多くあり、学校向けICTソリューション市場は拡大していくと予想されています。
▶GIGAスクール構想とは、1人1台端末と通信ネットワークを整備する文科省の方針
学習指導要領の改定
学習指導要領は10年単位で改訂されますが、新しい学習指導要領は小学校では2020年度から、中学校では2021年度から全面実施されます。
教育のICT化の推進においても学習指導要領の改訂が背景に挙げられましたが、学校教育の指針となる指導要領の改訂は教育業界全体に大きなインパクトを与えます。
新しい学習指導要領では、予測困難な時代において子どもたちが主体的に生きていくための「生きる力」を育むことを目標にしています。
この「生きる力」を構成する3つの柱として「知識及び技能の修得」「思考力、判断力、表現力の育成」「学びに向かう力、人間性の涵養」という資質・能力の養成を掲げています。
資質・能力を要請するため、何を、どのように学ぶかという点も今回の指導要領改訂では検討されています。
「何を学ぶか」という点に関しては、プログラミング教育の必修化、小学校の外国語教育の教科化、高校の新科目「公共」の新設などが主な改定として挙げられます。
「どのように学ぶか」という点に関しては、「アクティブ・ラーニング」と言われる主体的・対話的で深い学びの実現が目指されています。
人生100年時代の到来
「人生100年時代」とは、イギリスの経済学者が提唱した言葉です。
2007年生まれの2人に1人が100歳を超えて生きる社会が到来すると予測し、これまでとは違う人生設計が必要になると主張しました。
日本政府も2017年に「人生100年時代構想会議」を発足し、長寿社会においてどのような経済・社会システムが必要になるか議論しています。
2018年には構想会議から「人づくり革命基本構想」が発表されました。
人生を100年という長いスパンで考えた時に、子どもから高齢者まで活躍の場があり、元気に安心して暮らすことができる社会を実現する必要があり、その重要な鍵を握るのが「人材への投資」であるとしました。
主な対策として、
- 幼児教育の無償化
- 高等教育の無償化
- 大学改革
- リカレント教育の拡充
- 高齢者雇用の促進
の5つを掲げています。
このように人材への投資の方針を政府が明確に打ち出したことは、教育・人材業界へ様々な影響を与えると考えられます。
▶リカレント教育とは?人生100年時代に重要な「働きながら学ぶ」教育
教育業界の将来性と今後の動向

教育業界は人生100年時代の到来予測や教育ICTの推進などで市場規模が少しずつ拡大している現状があります。
では今後の教育業界はどのような分野が注目を集めているのでしょうか。
EdTechの可能性
今教育業界で最も注目を集めているのは「EdTech」分野と言えます。
EdTechとは「Education」と「Technology」を掛けた造語で、2000年代中ごろにアメリカで発祥しました。
進化するテクノロジーによってもたらされる教育分野の変化を総称する言葉です。
就学前からリカレントまで全ての教育課程が対象となります。
前述した「eラーニング」はインターネットやデジタルメディアを利用した学習サービスを指す言葉で、1950年代に広まり始めました。
しかしそのころから技術が格段に進歩し、社会情勢も変わってきた現在は、新しい言葉である「Edtech」を使う機会がビジネスを中心に増えてきています。
「技術によって学習や教育環境を良くする」という本質は両方とも変わりません。
時代やタイミングによる呼び方の変化と理解すればよいでしょう。
現在登場しているEdTechサービスの例としては、大学での講座をオンラインで無料受講できる「MOOCs」や児童・生徒向けの勉強アプリ、AIを利用して個人のレベルに合った教材を提供するタブレット教材などが展開されています。
学校が教師や生徒、保護者との連絡のために導入している学校用SNSなどもあります。
このようなEdTechが注目されているのは、学校教育や人材育成における課題を解決する可能性を持っているためです。
例えば、タブレットを使ってクラスの生徒の学習・理解状況を把握することによって、一斉授業についていけず落ちこぼれてしまう生徒を支援したり、逆に理解が進んでいる生徒により発展的な学習を提供することができます。
また、オンラインでの授業の受講が可能になることによって、時間や場所の制約がなくなります。
へき地と言われるところに住んでいる生徒は、東京に住む生徒のように質の高い教育が受けられないといった問題が指摘されていましたが、このようなオンラインサービスの利用によってこのような課題を解決できるのではないかと考えられています。
さらに、海外の大学で行われている講義を日本で受けることができるなど、これまでは考えられなかった教育サービスも実現しています。
企業における人材育成や研修においてもEdTechの活用は進んでいます。
企業内研修にタブレットを使用することによって、研修の教材やマニュアルの改訂に要する時間が短縮したり、研修の効果を測定することが可能になっています。
Edtech市場は世界的に拡大しています。
富士キメラ総研の「エデュケーションマーケット2015」によると、2015年のEdtech世界市場規模は5兆1,924億円でしたが、2020年には11兆2,512億円と約2倍まで拡大すると言われています。
日本国内市場も約1.5倍に市場規模が拡大するといわれており、注目されています。
▶EdTech(エドテック)とは何か?読み方は?注目される背景やeラーニングとの違いを解説
学校教育の変化
新学習指導要領の実施、教育のICT化などを受け、学校教育にも変化が見られています。
英語教育
2011年に小学校5・6年生での「外国語活動」が必修となりました。
2020年から始まる新学習指導要領では、この外国語活動を3・4年生での実施に引き下げ、5・6年生では英語が正式教科になります。
3・4年生での「外国語活動」は年間35時間(週1・2回程度)の授業数が確保されます。
これは「教科」ではなく「活動」なので通知表などには記載されません。教えるのも主に担任の先生です。
英語と触れ合うことで苦手意識を取り除くことがこの活動の目的となっています。
5・6年生での「英語」は年間70時間の授業数が確保される「教科」です。
国語や算数と同じ位置づけとなり、通知表にも記載されます。担任の先生と専任の教員で教えることになっています。
これまで小学校では英語を教えてこなかったため、小学校の先生には英語に対する苦手意識を持っている人も少なくありません。
教員養成・研修の見直しや人材確保の課題点が指摘されています。
アクティブラーニング
アクティブラーニングとは、「主体的・対話的で深い学び」と同じ意味合いを持っています。
教師の話を一方的に聞く受動的な学びではなく、自ら主体的に周りの人と対話しながら課題解決を行ったり、理解を深めていく学びのことを指します。
近年はアクティブラーニングを推進するために学校も様々な取り組みを行っています。例えばタブレット端末の導入などは、生徒同士や生徒と教師の対話を促進するツールとして注目されています。
プログラミング教育
小学校5・6年生でのプログラミング教育導入も、学習指導要領改訂の大きな目玉となっています。
小学校でのプログラミング教育は、プログラミングの技術をそのまま子どもたちに身に着けてもらうことが目的ではありません。
「プログラミング的思考」と呼ばれる、物事を順序だてて考え、試行錯誤しながらものごとを解決していく力、そして今や生活に欠かせなくなっているコンピュータをより効果的に活用する力を養うことが目的とされています。
そのため、授業の具体的な内容は明確には決まっていません。
教師が様々な教科や単元で工夫して取り組むことが求められています。
文部科学省は「小学校プログラミング教育の手引」などで様々な指導例を紹介しています。
そこには、算数の授業でプログラミングを通して正多角形を作図する活動や、総合的な学習の時間で「プログラミングが社会でどう活用されているか」に焦点を宛、企業と連携しながら行う授業案が示されています。
小学校での新学習指導要領の実施は2021年ですが、プログラミング教育の実施にはパソコンやタブレットなどのICT環境の整備が必要になります。
まだICT環境の整備が進んでいない地域もあるため、対策が急務であると言えるでしょう。
▶プログラミング教育とは、2020年から必修化される”プログラミング的思考”を育てる教育
リカレント教育の浸透
リカレント教育とは学校教育を人の生涯にわたって分散させようとする理念を指します。
日本では一度高校や大学を卒業すると、再び学校に戻って学び直しを行う人は非常に少ないです。
しかし、技術革新によって様々なサービスが新しく展開する現代、何十年も前の学生時代の学びでは社会の変化に対応できなくなることも十分に考えられます。
そのため、高校や大学といった学校教育を一度修了して企業に就職しても、再び教育の機会を受けられるように教育課程や社会制度を変化させる動きが各国で盛んになっています。
日本では大学における社会人特別選抜の実施や、編入学・科目履修生の制度、通信教育制度などが既に行われています。
2018年の人づくり革命基本構想ではリカレント教育の拡大に向けて産学連携のリカレント教育プログラムの開発への支援、専門技術を取得するための教育訓練に対する給付制度の充実などが掲げられています。
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まとめ

- 教育業界の最大の課題は少子化問題
- 教育業界の現在の市場規模は微増傾向
- 教育業界の中でも幼児教育・eラーニング市場は成長が顕著
- 教育業界では今後EdTech分野の成長が期待されている
この記事では、教育業界の課題、現状、今後の展望を紹介しました。
教育というと学校教育を思い浮かべる方は多いですが、教育の対象とする範囲は幅広いです。
現状直面している課題の1つに少子化があるのは事実です。
一方で、リカレント教育や生涯学習などが今後ますます進展することも予想できます。
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この記事の監修者
Education Career 編集部
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