2019-11-12
プログラミング教育とは、2020年から必修化される”プログラミング的思考”を育てる教育
学校教育課程におけるプログラミング教育の必修化が決定されて以降、教員や生徒、保護者からの関心が高まっています。
しかし、プログラミング教育とは具体的には何を学ぶものなのか認識されていない方も多いようです。
この記事では、プログラミング教育の概要や具体的な指導内容、現在の取り組み状況などについて説明します。
目次
プログラミング教育とは、2020年から必修化される”プログラミング的思考”を育てる教育
プログラミング教育とは、2020年度から必修化される”プログラミング的思考”を育てる教育のことです。
文部科学省の定義によれば、プログラミング的思考は、
自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力
と定義されています。
簡潔に、プログラミングを行う際に必要となる論理的思考力と定義できます。
プログラミング的思考という言葉は、以下のプログラミング教育のポイントや必修化の狙いなどの項でも度々出てくる言葉です。プログラミング的思考は、プログラミング教育必修化における重要なキーワードとなっています。
また、プログラミング教育は、情報活用能力を持った人材の育成を目的として中学校・高等学校でも実施されます。
中学校では2021年度、高等学校では2022年度から実施される予定です。
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プログラミング教育のポイント
プログラミング教育必修化におけるポイントとして、以下の3つの要素について説明します。
実践的なプログラミングは学ばない
先述したように、プログラミング教育とはプログラミング的思考を養う教育のことです。
実践的なプログラミング(プログラミング言語を用いたコーディングなど)を学ぶものではありません。
教科ではない
プログラミング教育は必修化されますが、新しく「プログラミング教育」という教科・科目が創設されるわけではありません。
必修化はあくまで既存の教科(算数や理科など)や総合の時間、クラブ活動の中で、プログラミング的思考を養うというものです。
パソコンを使わなくてもできる
プログラミング教育ではコーディングなどを学ぶわけではないため、パソコンを使わずとも実践することができます。
例えば、身近に使われている電化製品のプログラムはどういったものなのかを生徒同士で話し合ってみる授業や、自分たちの住む街の情報化されたところを発見してみる授業などがあります。
プログラミング教育必修化の狙い
プログラミング教育を実施する狙いを、文部科学省は以下の3つに分類しています。
- ”プログラミング的思考”を育むこと
- プログラムの働きやよさに気付くこと
- 各教科での学びをより確実なものにすること
これら3つの狙いによって育まれる資質・能力は、各教科の学びの基盤となる情報活用能力を養成できるとしています。以下で詳しく説明します。
”プログラミング的思考”を育むこと
コンピューターを自分の思い通りに動作させるため、命令の順序立て、分岐、繰り返しなどの組み合わせを考え論理的に考える力を養うことができます。
プログラミング的思考を育むと同時に、複数の情報を結び付けて新たな意味を見出す力や、問題の発見・解決等に向けて情報技術を効果的に活用する力を育みます。
プログラムの働きやよさに気付くこと
身近なものにコンピュータが活用されていることに気付き、コンピュータの働きを社会づくりに役立てる意欲を養うことを目指しています。
各教科での学びをより確実なものにすること
各教科での学習内容を、プログラミング教育を用いることでより確実にすることも狙いとされています。
例えば、算数の図形について学ぶ際、コンピュータに命令を与えて(「〇cm線を引く」や「〇度曲がる」など)正多角形や円などを描画させるなどの授業が想定されます。
これによってプログラミング的思考を学ぶことはもちろんですが、図形の性質についてより深い理解を得られることが期待されています。
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プログラミング教育の分類
文部科学省の「『小学校プログラミング教育の手引』の改訂(第二版)について」によると、教育課程内で実施されるプログラミング教育は、以下の4つに分類されています。
- 学習指導要領内に例示されている単元で実施するもの:算数や理科など
- 学習指導要領内に示される各教科の内容指導のため実施するもの:音楽や家庭科など
- 教育課程内で各教科とは別に実施するもの:プログラミングを実際に体験するなど
- 特定の児童を対象に教育課程内で実施するもの:クラブ活動など
これらは指導例のため、学校ごとにプログラミング的思考を楽しく学ぶための工夫がなされて、プログラミング教育が提供されています。以下で指導例を説明します。
学習指導要領内に例示されている単元で実施するもの:算数や理科など
- 算数(小学5年):プログラミングを通して、正多角形の意味を基に正多角形を描く場面
- 理科(小学6年):身の回りには電気の性質や働きを利用した道具があること等をプログラミングを通して学習する場面
- 総合的な学習の時間:「情報化の進展と生活や社会の変化」を探求課題として学習する場面
- 総合的な学習の時間:「まちの魅力と情報技術」を探求課題として学習する場面
- 総合的な学習の時間:「情報技術を生かした生産や人の手によるものづくり」を探求課題として学習する場面
学習指導要領内に示される各教科の内容指導のため実施するもの:音楽や家庭科など
- 音楽(小学4年):様々なリズム・パターンを組み合わせて音楽をつくることをプログラミングを通して学習する場面
- 社会(小学4年):都道府県の特徴を組み合わせて47都道府県を見つけるプログラムの活用を通して、その名称と位置を学習する場面
- 家庭(小学6年):自動炊飯器に組み込まれているプログラムを考える活動を通して、炊飯について学習する場面
- 総合的な学習の時間:課題について探究して分かったことなどを発表(プレゼンテーション)する学習場面
教育課程内で各教科とは別に実施するもの:プログラミングを実際に体験するなど
- プログラミングの楽しさや面白さ、達成感などを味わえる題材などでプログラミングを体験する
- 各教科等におけるプログラミングに関する学習活動の実施に先立って、プログラミング言語やプログラミング技能の基礎についての学習を実施する
- 各教科等の学習を基に課題を設定し、プログラミングを通して課題の解決に取り組む学習を展開する
- 各教科等の学習を基に、プログラミングを通して表現したいものを表現する学習を展開する
特定の児童を対象に教育課程内で実施するもの:クラブ活動など
パソコンクラブなどを設置し、授業外でもプログラミングの楽しさに触れてみたいという意欲のある生徒を対象として教育を提供するなど
学校教育機関のプログラミング教育の取り組み状況
2018年度に実施された「教育委員会等における小学校プログラミング教育に関する取り組み状況等について」を参考に、プログラミング教育の取り組み状況を説明します。
「先行的に授業を実施している」自治体等の割合は、2017年度の16.1%から2018年度は52.0%と大幅に増加しました。
「特に取り組みをしていない」自治体等の割合は、2017年度の56.8%から2018年度は4.5%と大幅に減少しています。
2017年度から2018年度にかけて、多くの自治体がプログラミング教育の授業を導入したと考えられます。
また、大規模な自治体(指定都市・中核市・市・特別区)と小規模な自治体(町・村・組合)とで授業実施状況を比較すると、大規模な自治体が71.5%、小規模な自治体は31.9%と約40%の差が開きました。
これは、学校内のICT環境の整備状況が地域ごとに異なることが影響していると考えられます。
プログラミング教育市場は約115億円と急成長
プログラミング教育の必修化を受け、プログラミング教育市場が盛り上がりを見せています。
ここでは、プログラミング教育メディアを運営するコエテコと、船井総合研究所が共同で行った「2019年 子ども向けプログラミング教育市場調査」を元に、プログラミング教育市場について説明します。
同調査によれば、2019年の子ども向けプログラミング教育市場規模は114億2,000万円と見込まれています。
前回(2018年度)調査によれば、2018年度の市場規模は90億7,100万円とされており、2019年度は約25.9%増加する見込みです。
2030年には市場規模1,000億円を超える可能性が示唆されています。
プログラミング教育の必修化に伴い、プログラミング教育の重要性が世間的に認知され、プログラミング教室(学習塾)などの展開が進むにつれて市場規模はますます拡大していくことが見込まれます。
まとめ
- プログラミング教育は”プログラミング的思考”を育てる教育のこと
- プログラミング教育をすでに授業に取り入れている自治体はおよそ5割
- 2019年のプログラミング教育市場は約115億円と推定され、2030年には1,000億円を超えると見込まれている
将来的なIT人材の育成事業として、プログラミング教育は期待されています。
2020年度以降プログラミング教育が正式に導入され、プログラミング教育への関心は更に高まると考えられます。
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