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2019-07-31 2021-06-30

教員に残業代が出ない理由を理解するために知っておきたい2つの事実

生徒のためと思って、毎日遅くまで働いているけど、なぜ教員には残業代が支給されていないんだろう?と疑問に思うことはありませんか。

周囲の方に聞いても「そういうもの」「決まりだから」といった回答で釈然としないこともあるかもしれません。

この記事では、教師に残業代が支給されない理由、また、残業を少なくする方法を紹介しています。

教師の残業代に関する規定を理解し、その上で今後の働き方を改善するきっかけになる内容です。

※私立学校の教員に関しては、各学校の規定によるので、この記事で対象としているのはあくまで公立学校の教員です。

公立教師の残業代が出ないのは「給特法」に定められているから

公立学校の教師は、残業をしても残業代が支払われません。

働き方改革の文脈や教師の労働時間・負担の大きさに関連して注目されてます。

残業代が支払われない理由は、給特法(公立の義務教育諸学校等の教員職員の給与等に関する特別措置法:以下給特法)にて定められているためです。

給特法について知るべき2つの事実

①:教師は残業代の規定が適用されない

給特法では、教員の勤務は勤務態様の特殊性があることから、一般行政職と同じような超過勤務手当および休日給の制度はなじまず、適用されないと規定されています。

つまり、教師には「残業代」という概念が存在しません

時間外勤務手当を支給しないことを前提として、給特法は、自治体は原則として公立学校の教員に時間外勤務を命じることを禁止しています。

命じる場合は、超勤4項目として以下の業務に限られており、臨時又は緊急のやむを得ない必要があるときに限るものとすることとされています。

  • 校外実習その他生徒の実習に関する業務
  • 修学旅行その他学校の行事に関する業務
  • 職員会議(設置者の定めるところにより学校に置かれるものをいう。)に関する業務
  • 非常災害の場合、児童又は生徒の指導に関し緊急の措置を必要とする場合その他やむを得ない場合に必要な業務

上記にあてはまらない業務は、教員が自発的に行ったものとされ、勤務時間とはみなされません。

しかし、実際の学校現場ではこうした業務が多く発生しており、長時間勤務が指摘されています。

②:残業代の代わりに、教職調整額と呼ばれる月給の4%が全員に支給される

給特法では、時間外勤務手当を支給しない代わりに、教職調整額を支給すると定められています。

教職調整額は、全教員一律に給料月額の4%が支給され、期末・勤勉手当や退職手当等の算定の基礎になります。

制度的には、公立学校の教員には残業代が支給されないものの、教職調整額によって公平性は保たれているとされているようです。

教職調整額の支給額は、昭和41年(1966年)に文部科学省が行った教員の勤務状況調査の結果をもとに、俸給月額の4%と定められました。

昭和41年の教員の超過勤務時間(1週間平均)

  • 小学校:1時間20分
  • 中学校:2時間30分
  • 平均:1時間48分

上記の平均超過勤務時間を下に教職調整額は4%と定められています。

しかし、平成18年(2006年)に行われた勤務実態調査によると、1ヶ月の平均残業時間は、約35時間で、法律制定当時の4倍以上になっており、実態との乖離が指摘されています

(参照)「学校・教職員の在り方及び教職調整額の見直し等に関する作業部会(第7回)」、「教職調整額の経緯等について」

教職調整額の見直しは検討中、具体的な改善時期は未定

上記の調査にもあるように、現在の規定が、勤務実態に適していないことから、文科省は教職調整額の見直しを検討しています。ただ具体的な見直しに関しては決まっていません。

生徒指導業務以外の業務の時間数が増していること、各教員ごとの勤務時間の差が大きくなっていることも問題視されています。

調整額という形式から以下のような形式への移行が検討されています。

(案1)支給率にメリハリをつける

職務負荷に応じて、調整額の支給率を変化させる案が検討されています。

それぞれの教員にかかる負荷を考慮して新たな手当を支給する仕組みです。

この案は、負荷を考慮する客観的な評価基準や、勤務実態調査の結果を踏まえた支給率の見直しが課題とされています。

(案2)時間外勤務手当を支給する

教職調整額ではなく、他の公務員と同様に、残業時間に応じて、時間外勤務手当を支給する案です。

一般公務員同様、必要に応じて時間外勤務を命じることができるようになります。

この案を導入する場合、教員の自発性・創造性を尊重するこれまでの考え方との整合性、教員の職務が時間外勤務命令になじむか、時間外勤務手当用の予算の確保などが課題としてあがっています。

(参照)「教職調整額の見直しについて」

残業を減らすために大事な3つの考え方

公立学校の教員が残業代をもらうことは現状出来ません。

しかし、その現状に不満を持っていても何も変わりません。

個人や職場単位で出来ることは不必要な「残業を減らす」ことです。

そのために出来る大事な3つの考え方を紹介します。

時短することが生徒のためになると考える

時短し、生み出された時間は、教員自身のためにつかうことが出来、結果生徒のためにもなると考えましょう。

「長時間働いていないと手を抜いているように感じてしまう・・」「効率化することに対し罪悪感がある・・」という教員の方にお会いすることがあります。

学校現場によっては、早く帰ってしまう教員に対し「努力が足りない」「勤務態度が悪い」というような空気があることもあるようです。

しかし、こうした考え方は改めるべきです。時短によって生み出した時間は、例えば、

  • スキル向上
  • 趣味
  • 家族や恋人など

上記のようなものに活用出来ます。

こうした時間が、精神的にも余裕を生み、生徒と接する際にもプラスに働くでしょう。
学校内で全ての時間を費やすよりも、学校外でも様々なことを吸収し、それを授業や指導に活かすほうが子供のためになるという考え方をすることが大事です。

時短によって生まれた時間は、生徒のためにもなると考えることが重要です。。

時間をかけるべきこと、効率化することを整理する

全ての業務に時間をかけるのではなく、時間をかけるべきことのために、それ以外の時間を極力短くするという発想をしましょう。

「担当している生徒のため」という想いが強く、長時間をかけることが教育の質につながると考えている方もいらっしゃいます。

もちろん、生徒との対話や教材準備や授業研究など、教師として多くの時間をさくべき業務もあるでしょう。

ただ、こうした方のお話を伺うと、本当にやるべきことなのかという業務に時間がかかっていることも多くあります。

全てを手書きで行ったり、丸付けを全て自分で行ったりと、仕事をした気になってしまうような作業に時間がかかっていないでしょうか。

こうした効率化したほうが良いことは徹底して効率化し、時間をかけるべきことに注力することが、生徒のためにも教員の方のためにもつながります。

ICTツールの活用を行い、効率化する

ICTツールを活用し、削減できる仕事を効率化することも重要です。

学校現場には、手書きの仕事や紙の配布を前提とした資料が多く存在します。

すべてをいきなり変えることは難しいかもしれませんが、

  • ワープロソフト(ワード等)
  • 表計算ソフト(エクセル等)
  • 端末の利用(タブレット等)
  • 書類のデータ化(PDF化など)
  • 連絡にメール、SNSを活用

上記を活用することで、大幅に時間を削減することが出来るかもしれません。

例えば、紙で配布している「お便り」をPDF化し、メールで配信すれば、印刷や配布にかかる時間も短縮出来ます。

PCやICTツールを利用するのは苦手という方でも上記のような利用法であれば難しいことはなく、誰でも慣れれば利用出来ます。

また保護者は多くの場合ようなツールを利用しているため、拒否反応を起こされることも多くはないのではないでしょうか。

他の教師の取り組みや書籍も参考に出来る

また、他の教員の方の取り組みを参考にするのもよいでしょう。

一つの取り組みで劇的に改善されたり、全ての学校現場で適用出来るものは多くありません。

細かな改善を積み重ねることが必要です。様々な取り組みを積み重ねるためには、積極的に他の方の取り組みを吸収するとよいでしょう。

具体的に改善していきたいという方には、

  • 教師の働き方を変える5つの原則+40のアイデア
  • データから考える教師の働き方入門
  • 学校現場で今すぐ出来る「働き方改革」目からウロコのICT活用術

など参考になる多くの書籍が出版されています。

もやもやする方へ教育業界専門転職エージェントからの提案

残業代が支給されない理由はわかったけど、なんだかなぁという方もいらっしゃるのではないでしょうか。

筆者も現状の制度が公平なものとは思っていません。

弊社は多くの教師の方のキャリア支援をしている教育業界専門の転職エージェントです。その立場から、もやもやする教員の方にアドバイス出来ればと思います。

制度・法律の変化には時間がかかる

上記で触れたように現状の制度(給特法・教職調整額等)は見直しが行われています。

ただし、課題にも触れたように歴史的な整合性や予算などの観点で、すぐに変化が起こるものではありません。

制度が変わることを前提に自身の働き方を考えるのは、不確実性があまりに高いです。

まずは、現在の自身の生産性を高める

制度や法律が変わらなくても、自分自身の働き方・生産性を高めることは可能です。

自分自身の生産性を高めることは、残業を抜きにしても、生徒と向き合う時間を少しでも多く捻出する意味でも有意義です。

また、ICTツールの活用や、個人や職場全体の生産性を高める活動をしていた場合、職務の経験としても価値のあるものとなり、転職活動においてもアピール出来る材料の一つとなります。

以下の記事は、教員の方の転職活動が難しい理由をまとめたものですが、上記のような取り組みが、転職が難しい理由を打ち消すことにもつながります。

教師・教員・先生の転職が難しい理由は?転職するにはどうすればよい?

それでも限界を感じる場合、転職も考える

それでも、現状の制度のもと働くのは嫌だ、限界だと感じる場合、転職を検討すればよいでしょう。

教員を続けたいのであれば、私立の学校へ転職することも出来ますし、民間企業でも教育業界やその他の業界でも転職出来る職場は多くあります。

▶教師・教員・先生をやめたい・・よくある理由と代表的な転職先、対処法を解説

例外)精神的・肉体的に限界だと感じる場合は早期に休職や転職を検討する

上記は精神や肉体的に過剰に負荷がかかっていない場合を前提としています。

心身に支障をきたすような環境の場合、無理をせず休職や転職を検討しましょう。

健康を害するような働き方は結果的にだれのためにもなりません。

最後に

この記事では、公立学校の教師に残業代が支払われない理由とその歴史的な背景をまとめました。

また、教員に出来る残業を減らすための大事な考え方をまとめています。

上述したように、制度や法律が変わるのには長く時間がかかります。

すぐに出来ることは、残業をしないですむような取り組みを個人や職場で行うことです。

出来ることに取り組んだ上で、それでもどうしても教員の制度に納得いかないようであれば、私立学校や民間企業への転職を考えてもよいのではないでしょうか。

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