2019-08-01 2019-12-03
いま教員をやめたら退職金がいくらかわかるたった1つの方法
教員のあなたは、今仕事をやめたらいくら退職金をもらえるか知っていますか。
公立学校教員の退職金支給要件は複雑でわかりにくい印象をお持ちの方や、「退職金をもらえるかわからない」という方も多いでしょう。
退職金の有無や金額は、退職理由・勤続年数などにより、細かく決められます。
この記事では、公立学校教員の退職金に影響する4つの要素と退職金を計算する方法、さらに退職時にもらえる退職金以外の手当について説明します。
これを読めば、今退職したらおおよそいくらの退職金を受け取ることができるのかわかります。
目次
退職金がもらえるかは公立か私立で異なる
公立学校教員は退職金が出る
公立学校に勤めている教員は、基本的に退職金(退職手当)を受け取ることができます。
実際に総務省の「平成29年地方公務員給与の実態調査結果」によると、平成28年4月1日~平成29年3月31日までに退職した教育公務員約10万5,000人のうち、約93%(約9万8,000人)の方に、平均約786万円の退職手当が支給されています。
ただし、以下に該当する場合、退職金は支給されません。
- 勤続期間6か月未満で退職した場合
- 懲戒免職・失職した場合
退職金の金額は自治体や退職理由によって変動します。金額は「公立学校教員の退職金に影響する4つの要素」以降で詳しく説明します。
私立学校教員は学校ごとに異なる
私立学校の場合、各学校ごとに就業規則が定められているため、退職金の支給有無や支給額は学校ごとに異なります。
退職金が出る場合、「勤務年数×給与月額」程度の金額を受け取れることが多いようです。
退職金の支給条件や金額は雇用契約書等に記載されていますので、確認してみてください。
公立学校教員の退職金に関わる4つの要素
退職金の金額は、自治体や退職理由によって変動すると説明しました。金額に影響する要素は、
- 勤続年数
- 退職理由
- 退職時の月給
- 調整額
の4つがあります。以下でそれらについて説明します。
①勤続年数
勤続年数は、退職金の支給率の割合を決定する要素のひとつです。
1年ごとに細かく支給率が規定されており、勤続年数が増えるほど支給率は上がります。
②退職理由
退職理由により、退職金の支給率が異なります。
退職理由は、自己都合・勧奨・定年退職・その他の4つに大きく分類されます。
自己都合退職の支給率は他の退職理由と比べると低く設定されています。
- 定年:一定の年齢まで働いた後に退職することで、一般的には60歳(雇用延長後の退職者も含む)まで働くこと
- 勧奨:任命権者より人事管理上の目的で退職を勧められ、それに応じて退職すること
- 自己都合:自分自身の事情により退職すること
- その他(懲戒免職、傷病など)
③退職時の月給
退職時の月給は、退職金を算定する際の基になります。
退職時の月給に支給割合をかけて、退職金を算出します。月給は、各自治体の地方公務員の給与制度に基づいて決められています。
④調整額
調整額とは、民間企業で導入が進んでいる「ポイント制退職金制度」と似た制度です。
在職期間中の貢献度を退職金に的確に反映させることを目的として導入されました。
▶教員免許を活かせる仕事にはどんな求人がある?成功の秘訣を解説
公立学校教員の年齢・パターン別平均退職金
では、実際に公立学校教員を退職した場合、どのくらいの金額を受け取ることができるのでしょうか。
以下の表は、公立学校教員の退職時の年齢別に、平均退職金と自己都合退職の場合の平均退職金をまとめたものです。
年齢 [歳] |
平均退職金 [円] |
平均退職金(自己都合退職) [円] |
20-24 | 13万6,000 | 13万6,000 |
25-29 | 17万4,000 | 17万4,000 |
30-34 | 26万4,000 | 26万4,000 |
35-39 | 49万8,000 | 48万0,000 |
40-44 | 72万3,000 | 64万7,000 |
45-49 | 143万1,000 | 77万8,000 |
50-54 | 418万8,000 | 94万6,000 |
55-59 | 1,345万3,000 | 186万7,000 |
60-64 | 2,114万8,000 | 46万0,000 |
この表から、自己都合による退職の場合、平均退職金と比較して金額は少なくなることがわかります。
また、退職金は年齢が上がる程金額が増える傾向が見られます。
※この表は、総務省「平成29年地方公務員給与の実態」より「自己都合の退職等(条例第3条)」「11年以上25年未満勤続後の定年退職等(条例第4条)」「25年以上勤続後の定年退職等(条例第5条)」のうち、以下を抜粋して表にしました。
- 平均退職金=退職手当を支給された全ての教員の平均額
- 平均退職金(自己都合退職)=「自己都合の退職等(条例第3条)」に該当する平均額
※金額は1,000円単位で四捨五入しています。
パターン1:20代の自己都合退職の場合は約17万円
20代で自己都合で退職した場合、平均退職金は16万7,896円です。
大学卒業後すぐに教員として働き始めたとして、29歳まで働くと勤続年数は7年です。
調整額は勤続年数10年以下の場合半額になる・勤続年数4年以下の場合支払われない等の規定があるため、勤続年数の短い20代の平均退職金は少なくなる傾向にあります。
パターン2:30代の自己都合退職の場合は約47万円
30代で自己都合で退職した場合、平均退職金は46万5,782円です。
30代だと勤続年数10年以上になっている方が多く、その場合「退職金に影響する4つのこと」で説明した退職手当の基本的な内容は受け取れる可能性が高くなります。
パターン3:定年退職の場合は約2,360万円
勤続年数25年以上の定年退職による退職の場合、平均退職金は2,356万2,000円です。
平成29年度の場合、全退職者のうち約2割が60歳で定年退職された方で、これは最も多い割合となっています。
支給される金額もこの年齢が最大で、25年以上勤続後59歳で退職した場合と約30万円(退職時年齢59歳の平均退職金:2,325万6,057円)の差があります。
年齢別の平均退職金と、3パターンの平均退職金を紹介しました。
次項で、正確な退職金の金額を求めることができる計算方法を紹介します。
▶教師に残業代が出ない理由を理解するために知っておきたい2つの事実
公立学校教員の退職金が正確にわかる計算式
退職手当額=基本額+調整額
この計算式に当てはめることで、退職金を求めることができます。以下で、基本額と調整額の求め方を説明します。
基本額の求め方
基本額=退職日給料月額 × 退職理由別・勤続年数別支給率
退職日の月給に支給率をかけることで、基本額を求めることができます。
支給率は、勤続年数と退職理由により変わります。以下の表で、勤続年数5年~45年、自己都合と定年退職の支給率をまとめました。
勤続年数 [年] |
自己都合の退職 [%] |
定年退職 [%] |
5 | 2.511 | – |
10 | 5.022 | – |
15 | 10.3788 | – |
20 | 19.6695 | – |
25 | 28.0395 | 33.27075 |
30 | 34.7355 | 40.80375 |
35 | 39.7575 | 47.709 |
40 | 44.7795 | 47.709 |
45 | 47.709 | 47.709 |
※この表は、内閣官房「国家公務員退職手当支給率早見表(平成30年1月1日以降の退職)」より一部を抜粋し作成。
※支給率は1年ごとの勤続年数、退職理由により異なります。また、公務中の死亡による退職などの場合はこの支給率に当てはまらない場合があります。詳細は上記リンクの早見表をご確認ください。
調整額の求め方
調整額=調整月額のうちその額が多いものから60月分の額を合計した額
調整額は、在職期間中を各月に分け、その期間に属していた区分(1~11)に応じて、その金額の多いものから60月分の調整月額を合計した金額です。
区分は役職や勤続年数に応じて異なります。
自分がどの区分なのかは、勤務先地域の教育委員会に問い合わせるか、人事記録カードと月々の給与明細を元に確認することができます。
区分 | 対応する職員 | 調整月額 [円] |
1 | 指定職(6号俸以上) | 7万9,200 |
2 | 指定職(5号俸以上) | 6万2,500 |
3 | 行10級 | 5万4,150 |
4 | 行9級 | 5万 |
5 | 行8級 | 4万5,850 |
6 | 行7級 | 4万1,700 |
7 | 行6級 | 3万3,350 |
8 | 行5級 | 2万5,000 |
9 | 行4級 | 2万850 |
10 | 行3級 | 1万6,700 |
11 | その他の職員 | 0 |
※勤続年数4年以下の自己都合退職以外の退職者と、勤続年数10~24年以下の自己都合退職者は調整額が半額になります。
※総務省「退職手当の調整額について」より、調整額は退職理由が以下に当てはまる場合は支給されません。
- 退職手当の基本額が零である者(自己都合等の理由により勤続期間6月未満で退職 した者)
- 自己都合退職者で、その勤続期間が9年未満の者
- その者の非違により退職した者で、退職した日から3月前までに、その非違行為を原 因として懲戒処分(停職、減給、戒告)を受けた者
東京都立学校教員、30歳(勤続年数8年)が自己都合で退職した場合の計算例
この場合の退職手当額は、約113万円です。
計算式は、基本額【(270,500+10,820)×4.017600=1,130,231.232】+調整額【勤続9年以下の自己都合退職のため、なし】=退職手当額【1,130,231】となります。
※2級43号、月額給与270,500円、教育調整額(4%)10,820円、勤続年数8年、支給率4.017600と仮定。各都道府県により、数値は異なります。
公立学校教員の退職金に関するよくある質問
定年まで働いた時の退職金の相場はいくら?
全地方公共団体の平均額なので地域によって差がありますが、25年以上勤続後の定年退職で約2,346万円、11年以上25年未満勤続後の定年退職で約1,350万円です。
退職金を多くもらいたいなら、長く働いたほうがいい?
「公立学校教員の平均退職金」の表を見るとわかるように、定年退職(60歳)まで働いたほうが退職手当の金額は多くなります。
しかし、自己都合退職だと、長く働いても金額が大幅に増えることはありません。
定年まで働くことなく、どこかで自己都合の退職を考えているなら、退職金を理由に長く勤務する必要はないでしょう。
休職後でも退職金はでる?
休職後でも退職金は支給されます。
休職理由や自治体により差し引かれる金額は異なりますが、休職期間分の調整額を引いて金額が計算されます。
▶教師・教員・先生の転職が難しい理由は?転職するにはどうすればよい?
退職時に教員がもらえる退職金以外の3つの手当
- 学校生協
- 教職員共済
- 公立学校共済組合
に加盟している場合、退職金以外にもお金を受け取れる場合があります。
学校生協の出資金
学校生協とは、全国の小中高等学校の教職員が組合員の、教員の教育活動のサポートを行っている団体です。
学校生協に加入している場合、退職時に出資金が返還されます。
支給金額
出資金として預けた金額が返還されます。
各地域の学校生協により異なりますが出資金額は1口1,000円~とされている場合が多く、返還される金額は1,000~5,000円程度が一般的です。
支給対象者
学校生協加入者
加入しているかどうかわからない場合は、都道府県の学校生協に問い合わせることで確認できます。
申請方法
組合員証、生協脱退申請書を同封し、郵送します。ただし、自分の所属する生協組合によって、申請書類が異なる場合もあるので注意しましょう。
教職員共済の退職見舞金
教職員共済とは、教職員を組合員とする、厚生労働省の認可を受けている生活協同組合です。
教職員共済に加入している場合、退職時に退職見舞金を受け取ることができます。支給要件は契約期間が1年以上であることです。
支給金額
支給金額は契約期間と掛金振込月数により異なります。
例えば、契約期間5年以上(掛金振込月数60か月)の場合、退職見舞金は24,000円です。
契約期間 [年] |
退職見舞金 (共済金額) |
1-2 | 掛金振込月数×80円 |
2-3 | 掛金振込月数×160円 |
3-4 | 掛金振込月数×240円 |
4-5 | 掛金振込月数×320円 |
5以上 | 掛金振込月数×400円 |
※この表は「教職員共済」ウェブサイトを参考に作成。
支給対象者
教職員共済の組合員
自分が組合員かどうかは、毎年10月中旬に「加入状況」が郵送されるためその際に確認するか、自分の勤務先が所属する事務所に問い合わせると確認できます。
申請方法
事業所に退職した旨を伝えると、申請書類を請求できます。請求後、申請書類を送付すると、退職見舞金が振り込まれます。
公立学校共済組合の年金
公立学校共済組合の年金は、定年退職でない限りすぐに受け取れるものではありません。
しかし60歳未満で退職した1月以上の組合員期間がある人は、国民年金へ加入するための手続きを行う必要があります。
※他の公務員共済組合に転出、もしくは公立学校共済組合の他の支部へ異動する方は、退職後1日も空かない場合は「組合員転出・異動届書」のみを提出、退職後日が空く場合は「組合員転出・異動届書」と「退職届書」を提出します。
※ここでは公立学校共済組合 東京都支部の年金関係手続を紹介します。
支給金額
支給金額は諸条件により異なります。
厚生労働省の「平成29年度厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、平均月額年金支給額は国民年金5万5,000円、厚生年金14万7,000円でした。
支給対象者
基本的に全員が対象です。
申請方法
自分が所属していた公立学校共済組合の支部に退職届書を提出します。退職届書には、所属所長の証明と公印が必要です。
退職届書は公立学校共済組合のホームページからダウンロードできます。
▶教育コンサルタントに転職したい人がはじめに見ておくべき基礎知識
まとめ
この記事で説明した教員の退職金について、3つのポイントをまとめました。
- 私立学校教員の退職金は各学校ごとに設定されているため、雇用条件を確認
- 公立学校教員の退職金額は、勤続年数・退職理由・退職時の月給・調整額が影響する
- 退職金以外に学生生協の出資金、教職員共済の退職見舞金、公立学校共済組合の年金がもらえる場合がある
退職金以外にも、各種団体に加盟している場合に諸手当がもらえる場合がありますので、退職時には忘れずに申請を行うようにしましょう。
- 転職をお考えの方教育業界の非公開求人を多く保有しています
教育業界専門の
エージェントに相談する
関連キーワード
注目記事
- 教育業界での転職を成功させるには?会社選びから面接対策まで完全ガイド
- EdTech(エドテック)とは何か?読み方は?注目される背景やeラーニングとの違いを解説
- 教師・教員・先生の転職が難しい理由は?転職するためのコツ
- 教育業界の年収の高い仕事について解説
- 教員から転職するには?中途採用の転職先に多い7パターンを紹介
- 教育業界で土日休み・日中勤務の仕事に転職!具体的な職種を紹介します
- 【転職体験談】異業界から教育業界の法人営業に転職、年収370万→450万円に(27歳女性)
- SST(ソーシャルスキルトレーニング)とは?受けられる場所・方法・内容
- ソーシャルスキルとは?種類と定義 対人課題を解決するヒント
- 教員免許なしで学校で働く5つの方法
- GRITとは非認知能力の1つの「やり抜く」力
職種で探す
業種で探す
フリーワード検索
