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2019-07-02

リカレント教育とは?人生100年時代に重要な生涯学習

「人生100年時代」という言葉をどこかで聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。この言葉は、ロンドン・ビジネス・スクール教授のリンダ・グラットン氏とアンドリュー・スコット氏が、著書「LIFE SHIFT(ライフシフト)100年時代の人生戦略」で提唱した言葉です。

LIFE SHIFTは、過去200年間の統計から今後も人の平均寿命は延びていくと予測し、寿命が100年の時代(=人生100年時代)になることから、これまで寿命を80年として考えてきた人生設計を抜本的に考え直す必要があると訴え、話題になりました。

これを受け、厚生労働省は、人生100年時代を見据えた経済社会システムを創り上げるための政策のグランドデザインを検討する会議として、2018年9月以降「人生100年時代構想会議」を行いました。

人生100年時代構想会議中間報告には、以下の記述があります。

  • ある海外の研究では、2007年に日本で生まれた子供の半数が107歳より長く生きると推計されており、日本は健康寿命が世界一の長寿社会を迎える
  • 100年という長い期間をより充実したものにするためには、幼児教育から小・中・高等学校教育、大学教育、更には社会人の学び直しに至るまで、生涯にわたる学習が重要です。

ここで重要とされている「生涯にわたる学習」において、注目されているのがリカレント教育です。この記事では、リカレント教育について、注目された背景やメリット、海外のリカレント教育事例、日本国内の事例などを解説しています。

リカレント教育とは

リカレント教育は、文部科学省によると以下のように定義されています。

「リカレント教育」とは、「学校教育」を、人々の生涯にわたって、分散させようとする理念であり、その本来の意味は、「職業上必要な知識・技術」を修得するために、フルタイムの就学と、フルタイムの就職を繰り返すことである(日本では、長期雇用の慣行から、本来の意味での「リカレント教育」が行われることはまれ)。

我が国では、一般的に、「リカレント教育」を諸外国より広くとらえ、働きながら学ぶ場合、心の豊かさや生きがいのために学ぶ場合、学校以外の場で学ぶ場合もこれに含めている(この意味では成人の学習活動の全体に近い)。

本来の意味ではリカレント教育は、義務教育の終了後、教育と就労を交互に繰り返す教育システムのことです。リカレントを日本語に直訳すると、「繰り返し、循環」といった意味があります。そのため、リカレント教育は、回帰教育、循環教育、学び直しなどと表現されることがあります。

ただ日本国内では、広く解釈されており、働きながら学ぶ場合や学校以外での学びを広く含む言葉として使われています

リカレント教育が注目される背景

リカレント教育という用語は、スウェーデンの経済学者レーンが最初に提唱しました。1969年5月のヨーロッパ文部大臣会議において、スウェーデンの文部大臣パルメ氏がスピーチの中でこの言葉を使用し、国際的に注目されるようになったと言われています。その後、OECDで注目され、1970年代に教育政策論として各国に普及していきました。

  • 人生100年時代になり寿命が伸びる=働く期間が伸びる
  • テクノロジー/時代の進化により仕事に求められるスキルは大きく変わる

上記や冒頭で述べたような時代背景から、大学を卒業後、一生働き続けるモデルは通用しなくなり、学校を卒業後も、スキルを身につける・アップデートする必要が高まっていくことが予想されています。

そうした観点で大人がスキルを身に着け直す・学び直す教育機会、すなわちリカレント教育が注目されています。

リカレント教育のメリット

個人がリカレント教育を受けるメリット

スキルをアップデート出来る、専門的なスキルを身につけることが出来る

リカレント教育を受けるメリットは、学び直しによるスキルのアップデート、専門的なスキルを身につけることが出来ることがあげられるでしょう。業務や勤務の経験を踏まえた学習をする場合、専門知識・技術の習得のペースはゼロから学習するよりも早いでしょう。

また、未経験分野の学習をするとしても、その領域に今まで築いた経験や知識を掛け合わせることで、より価値の高い学びにすることが出来ます。

年収増加が期待できる

厚生労働省「人生100年時代の人材と働き方」のなかで、「自己啓発が労働者に与える効果として、労働者の生産性が上昇することで、賃金が上昇する効果」が考えられるとされています。

実際に、30歳以上の男女を対象に、学歴・年齢・世帯年収・就業形態などの個々人の属性にわけ、同様の属性を持つ人の中で自己啓発を行った人と行わなかった人をマッチングさせ、1~3年後に両者にどの程度の年収の差が生じているかを調査した結果が以下となっています。

年収に与える効果の推計結果をみると、自己啓発を実施した人と実施しなかった人の年収変化の差額は、1年後には優位な差はみられないが、2年後では約10万円、3年後では約16万円でそれぞれ有意な差が見られている。

自己啓発の効果はすぐには年収には現れないが、ある程度のラグを伴いつつ効果が現れると考えられる。

企業がリカレント教育を推奨するメリット

時代の変化にさらされるのは個人だけではなく企業も同様です。経営環境やビジネスモデルの変化に伴い、従業員に求めるスキル・知識も変化するでしょう。そうした変化に対応する人材を確保するために企業はリカレント教育を推奨する立場といえるでしょう。

結果として、会社の文化や風土、歴史を踏まえた従業員が、スキル・知識をアップデートし続け、長期に渡って企業に貢献してくれる状態を保つことは企業経営にとっても重要です。

海外のリカレント教育

海外諸国ではリカレント教育の重要性をいち早く認識し、国を挙げた取り組みが行われてきました。

特に欧米諸国では、本来のリカレント教育の意味である「フルタイムの就学と、フルタイムの就職を繰り返すこと」に近い取り組みが進んでいます。

ここでは、スウェーデンとフィンランドの事例を紹介します。

スウェーデンのリカレント教育

スウェーデンの成人教育機関・制度は多岐にわたっています。国や自治体が運営している機関が主で、移民向けのスウェーデン語教育や高度職業教育などがあります。

リカレント教育を推進するための法・制度として以下のようなものがあります。

教育休暇法(Studieledighetslagen)

在職者に対して教育訓練のための休暇を保障するため、2年以上の労働者の就学休暇と仕事復帰の権利を保障。

成人教育義務資金法(民衆成人教育への国の支援に関する法律)

  • 労働市場訓練手当:労働市場訓練を受けている者に支給する。
  • 成人学生手当:初頭・中等教育レベルの学習を希望する低学歴の成人に支給する。

高等学校教育の実質的義務教育化

地方公共団体による義務教育課程修了者全員に対する高等学校教育の提供を義務付けおよび20歳6か月までの者にKomvuxでの高等学校教育を受ける権利を付与。

政府議案「成人の学習と成人教育の発展」を国会承認

全ての成人は、人格の成長、民主主義と平等の実現、経済成長、雇用、正当な再配分を促進するという目的で、知識を広げ能力を発展させる可能性を与えられるべきである」ことが示される。

フィンランドのリカレント教育

フィンランドの成人教育は、教養成人教育、普通成人教育、成人職業教育・訓練の3つに大きく分かれています。

教養成人教育

学習者の興味や社会教育に基づく多様な教育と訓練を提供しています。成人国民学校や成人教育センターなどで提供されています。

普通成人教育

成人のための普通高校の教育を提供しています。いつでも入学申請が可能で、個々人の学習計画に基づいて教育を行います。

成人職業教育・訓練

就業中の成人にも就業中でない成人にも提供されます。

日本政府のリカレント教育に関する政策

日本政府は、主に文部科学省が、リカレント教育へのニーズの高まりを受けて、以下の施策を推進しています。

社会人特別選抜

多くの大学で、社会人を対象とする特別選抜制度が実施されています。

1994年度は、207大学(うち国立大学は28大学)において実施されており、これによる入学者は4,199人(うち国立大学は534人)でした。

2019年現在では、およそ3,000以上の大学が社会人特別選抜を実施しています。

編入学

短期大学や高等専門学校の卒業生で、4年制大学への編入学を希望する人が増加傾向にあることを受けて、編入学のための枠を設定しやすいものに大学設置基準の改正が行われました。

夜間部・昼夜開講制

学習者の時間的制約に対応するため、多くの大学で夜間部の設置や昼夜開講制の実施が行われています。

科目等履修生

社会人等に対しパートタイムの学習機会を拡充し、その学習に適切な評価を与えるため、科目等履修生制度が設けられました。

リカレント教育推進事業

文部科学省が、産業構造・就業構造の変化や技術革新に対応する組織的な学習機会を提供するため、リカレント教育推進事業を実施しています。

高等教育機関・地方公共団体・産業界等の関係者で構成されている、地域リカレント教育推進協議会が実施主体です。

大きくわけて以下の3つの活動を行っています。

  • 社会人・職業人の学習ニーズなど情報の収集・提供
  • 学習プログラムの研究・開発
  • 学習コースの開設

大学の公開講座

大学公開講座は、大学における教育・研究の成果を直接社会に開放し、地域住民等に高度な学習機会を提供するものです。

講座内容は、職業人を対象とした専門的・技術的なもの、現代の社会問題に関するもの、語学、スポーツなど、多様にあります。

大学入学資格検定制度

大学入学資格検定制度は、高等学校教育が受けられなかった人などに対して、能力に応じて広く大学教育の機会を提供するための制度です。

資格検定を受け一定の科目に合格した場合に大学入学資格が与えられます。

教育訓練給付金

教育訓練給付金は厚生労働省の管轄です。

教育訓練給付金とは、働く方の主体的な能力開発の取り組み又は中長期的なキャリア形成を支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的とし、教育訓練受講に支払った費用の一部が支給される制度です。

スキルアップのために受講した講座受講料の20%~最大70%(最大224万円)が補助されます。

厚生労働大臣が指定した約14,000種類の講座、例えば、簿記、税理士、英語検定、大学院修士課程などが対象です。

日本におけるリカレント教育の事例

教育機関におけるリカレント教育の事例(社会人対象の大学院や大学)

変化の激しい時代背景やビジネス環境の変化の激しさから、社会人でも大学院や大学で学びなおそうという方は増えています。

MBAやMOT、コンピューターサイエンスや、統計学、AI、心理学などなど各種専門の大学院などが多く作られています。

日中にフルタイムでカリキュラムを提供するプログラムも多いですが、仕事をしながらでも通うことが出来るようにと、多くの教育機関が夜間や土日を中心にしたプログラムを提供しています。

民間企業の事例(オンラインや各種スクール)

また大学や大学院といった教育機関だけでなく、民間企業も社会人に向けた学びのサービスを多く提供しています。

以前からあったような資格取得のための講座や語学関連のスクールはもちろん、近年ではプログラミングやデザイン、Webマーケティング、AIといった領域での教育サービスも増えています。提供方法も通学を前提としたスクールだけではなく、オンラインで受講出来るものやアプリで学習出来るものなど、様々なサービスが提供されています。

日本におけるリカレント教育の課題

厚生労働省の「人生100年時代の人材と働き方」の「リカレント教育の課題」を参考に、リカレント教育の課題を説明します。

日本におけるリカレント教育の課題は、諸外国と比較して、日本は質の良いリカレント教育を提供している教育機関が少ないことがWorld Economic Forumによる経営者からの評価でわかっており、リカレント教育を受けるための学校・専門的訓練の質や受けやすさを整える必要があります。

この課題に対して、日本政府は、大学教育の質の向上を図るために、各大学の役割や特色・強みの明確を一層進めることが必要であるとしています。

例えば、実務経験のある教員を増やすこと、実務経験のある教員が教授会の運営に参画すること、社会人受け入れに対する柔軟なシステムを作ること、などを挙げています。

こういった取り組みにより、今後リカレント教育はますます浸透していくと考えられます。

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