2019-10-09 2021-03-16
生涯学習とは:人々が生涯に行うあらゆる学習のこと
生涯学習とは、人々が生涯に行うあらゆる学習のことです。
文部科学省が昨今推進している施策に、生涯学習振興策があります。
生活学習振興策では、地方自治体や大学・短大に働きかけ、人々が学びやすい環境づくりを行っています。
この記事は、生涯学習の概要や学習分野、生涯学習社会の意味などについて説明しています。
目次
生涯学習とは人々が生涯に行うあらゆる学習のこと
文部科学省「生涯学習の実現」によると、生涯学習とは「人々が生涯に行うあらゆる学習のこと」です。
教育と名のつく分野のほか、スポーツやボランティア、趣味の範囲までが生涯学習に含まれます。
生涯学習の定義は未だあいまいで、生涯学習社会を目指す理念そのもののことを生涯学習ということもあります。
生涯学習の分野はさまざま
生涯学習の分野はさまざまです。ここでは、
- 学校教育
- 家庭教育
- 社会教育
- その他の活動
に分類し、紹介します。
学校教育
大学が実施する、通信教育や公開講座などが該当します。
公開講座は多くの大学で開講され、大学における教育・研究の成果を直接、地域住民などに学習機会として提供されています。
家庭教育
すべての小学校区で家庭教育に関する学習機会の確保や、家庭教育支援チームによる相談対応などの家庭教育支援を実施しています。
文部科学省は身近な地域で保護者が家庭教育に関する学習や相談できる体制が整備されるよう、自治体を支援しています。
社会教育
社会教育の分野では、人権・環境教育の推進、男女共同参画社会を推進する学習機会の提供などが行われています。
その他の活動
- 文化活動:音楽や美術、陶芸など
- スポーツ活動:体育館での屋内スポーツやスイミングなどの教室など
- レクリエーション活動:調理教室や映写会など
- ボランティア活動:自分の好きなことやできることを、講師となって子どもに教える活動など
- 企業内教育:外国語やリーダシップ論の講座など
- 趣味:それぞれの趣味のグループやサークルなどの集会の開催など
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学歴より学習歴を重視する「生涯学習社会」
生涯学習社会とは「人々が、生涯のいつでも、自由に学習機会を選択し学ぶことができ、その成果が適切に評価される社会」のことです。
日本では、学歴を社会が過大評価してしまう、学歴偏重の社会的風潮が残っていると言われています。
そして、中央教育審議会は学歴偏重によって生じる過度な受験競争を”社会のひずみ”と表現しています。
こういった背景から、今後学歴偏重の風潮を改善し、人々の生涯を通ずる自己研鑽を正統に評価する「生涯学習社会」の方向を目指すようになりました。
生涯学習の基盤を整備し、学歴だけでなく様々な「学習の成果」が適切に評価される社会を築いていくことは、これまで進められてきている教育改革の課題の1つである学歴社会の弊害の是正にもつながると見込まれています。
「生涯学習センター」とは
生涯学習センターとは、多様な学習機会を提供する総合学習施設のことです。市区町村や大学などが運営しています。
生涯学習センターには講堂や図書館、プールなどのスポーツ施設が併設されています。
生涯学習センター以外の生涯学習の学びの場
生涯学習センター以外にも生涯学習を行うことができる場所は、以下があげられます。
- 学校(小学校・中学校・高校)
- 大学・短期大学
- 公民館
- コミュニティセンター
- 図書館
- カルチャーセンター
- 文化会館
- 美術館
- 博物館 など
社会教育施設を拠点に、地域活動の支援等を地域コミュニティの形成につなげていく取り組みが進むよう様々な支援を行っています。
生涯学習の成果
文部科学省の「平成26年度文部科学白書」では生涯学習の以下の効果が述べられています。
- 生涯学習をしたことがある者のうち
- 仕事や就職の上で生かしている者:31.3%(平成24年度)
- 地域や社会での活動に生かしている者:21.8%(平成24年度)
- 大学・専門学校等における社会人受講者数:平成25年度6月時点:12万人
- 大学及び短大における公開講座数
- 平成24年度:36,135講座
- 平成25年度:39,816講座
- 体育館、図書館等の施設を開放している大学及び短大の割合
- 平成24年度:85.7% 平成25年度:86.9%(4年制大学)
- 平成24年度:74.9% 平成25年度:76.6%(短期大学)
生涯学習で得た知識を、仕事や就職で生かしている方が約3割、地域や社会の活動に生かしている方が2割ほどいます。
つまり生涯学習で得た知識を経済活動や地域社会への貢献に生かす意欲のある方が、半分近くいることがわかります。
また、大学・短大は、公開講座の提供と施設の開放を行い、生涯学習の実現に貢献しているようです。
生涯学習の歴史
1965年にユネスコの成人教育課長P.ラングラン氏が、生涯学習・生涯教育の概念を提唱し、1972年に教育開発国際委員会が提出したフォール報告書によって生涯教育が世界的に普及しました。
日本では1971年に提出された中央教育審議会の答申で注目され、1990年に生涯学習振興法が制定され振興策が取られました。
生涯学習の基盤の整備は、
- 学習者自身の技能の向上と人材育成
- 地域社会の活性化
- 高齢者の社会参加・青少年の健全育成
などにつながるとして、現在も生涯学習振興策が重要視されています。
生涯学習に関連するその他の教育
概念が曖昧であることもあり、生涯学習は他の教育とよく混同されます。ここでは、
- リカレント教育:職業上必要な知識・技術習得のためにフルタイムの就学と就学を繰り返すこと
- 成人教育:全ての成人が社会及び労働の世界へ参加することを確保することを目的とする学習のこと
- 生涯教育:生涯学習を教育者を基点にして述べた考え方
について、意味や生涯学習と異なる点を解説します。
リカレント教育
文部科学省の「文教施策の動向と展開」によると、リカレント教育は「学校教育を、人々の生涯にわたって、分散させようとする理念」であり、その本来の意味は、「職業上必要な知識・技術」を修得するために「フルタイムの就学とフルタイムの就職を繰り返すことである」と定義されています。
日本の場合、海外よりもリカレント教育を広い意味で捉えており、
- 働きながら学ぶ
- 心の豊かさや生きがいのために学ぶ
- 学校以外の場で学ぶ
といったケースを含んで使われるのが一般的です。
日本の広義のリカレント教育と生涯教育を比較すると、リカレント教育は義務教育を終えてから大人がビジネススキルを身に付けるための教育に近いものと考えられます。
▶リカレント教育とは?人生100年時代に重要な「働きながら学ぶ」教育
成人教育
「第38回ユネスコ総会採択」の中で成人教育は「生涯学習の中核的な構成要素であり、全ての成人が社会及び労働の世界へ参加することを確保することを目的とするあらゆる形態の教育および学習のこと」とされています。
生涯学習と異なる点としては、生涯学習は年齢による制限はありませんが、成人教育は成人が受ける教育である点が挙げられます。
また、学習内容において、生涯学習では多様な分野が想定されていますが、成人教育では職能開発や学校教育の欠如を補助するといった内容が想定されているという点も異なります。
生涯教育
中央教育審議会の「生涯学習分科会 制度問題小委員会」によると、生涯教育は「国民の一人一人が充実した人生を送ることを目指して生涯にわたって行う学習を助けるために、教育制度全体がその上に打ち立てられるべき基本的な理念」です。
生涯教育と生涯学習の違いは、
- 「生涯教育は教育者を基点にして述べられた考え方」
- 「生涯学習は個々の学習者を基点にして述べられた考え方」
とされています。
▶キャリア教育とは?自分の進路を自分で決めていく力を養うための教育のこと
まとめ
- 「生涯学習」とは人々が生涯に行うあらゆる学習のこと
- 生涯学習の内容は学校教育や家庭教育、スポーツ、ボランティアなど様々
- 「生涯学習社会」とは学歴だけでなく様々な「学習の成果」が適切に評価される社会のこと
文部科学省の施策などにより、生涯を通して学ぶことのできる環境の整備、多様な学習機会の提供、学習した成果が適切に評価されるための仕組みづくりなどが今後進んでいくことが予想されます。
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