2019-07-18 2024-09-06
キャリア教育とは?自分の進路を自分で決めていく力を養うための教育のこと
時代の変化とともに、社会の中で求められる力は変化し、教育機関における指導内容も変わってきています。
こういった中で文科省が推奨しているのが、自分らしい生き方を実現するための力の育成を目指す「キャリア教育」です。
文部科学省では広くキャリア教育を浸透させるために、2014年に映画版の「魔女の宅急便」、2015年公開の映画「HERO」とのタイアップを実施しました。
このほかにも、学校における地域や産業界と連携した教育活動を推進するポータルサイト「子供と社会の架け橋となるポータルサイト」の運営や、Youtubeにキャリア教育への理解を深める動画を投稿するなど、キャリア教育の啓発を推進しています。
キャリア教育というと少し難しく聞こえますが、例えば「職場体験」やインターンシップはキャリア教育の1つとして、実は身近に存在しています。
キャリア教育は主に小・中・高等学校において実施されていますが、他にも企業の取り組み、大学の取り組みなども解説します。
この記事の監修者
Education Career 編集部
教育業界専門の転職エージェント「Education Career」の編集部です。年間で数百名の教育業界出身者の転職やキャリアの支援を行う転職エージェントとして、教育業界での転職活動やキャリアに役立つ記事を更新しています。
目次
キャリア教育とは
キャリア教育とは、子供たちが学ぶ意欲を高め、職業人としての自分の進路を自分で決めていく力を養うための教育のことです。
文部科学省の「キャリア教育の必要性と意義」によれば、キャリア教育は以下のように定義されています。
一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して、キャリア発達を促す教育
▶キャリア教育コーディネーターとは学校と地域社会をつなぐプロ
キャリア教育に関連する語句の説明
キャリア
キャリア(career)は、日本語に訳すと生涯、経歴、職業といった意味です。
キャリア発達
キャリア発達とは、将来を見据えて、自分が社会の中で果たす役割や生き方を展望し、実現するまでの過程のことを言います。
キャリアカウンセリング
キャリアカウンセリングとは、その人の職業選択やキャリアプランの相談に乗ることを言います。キャリア教育において、キャリアカウンセリングは、就職活動で悩む学生や、転職で悩む社会人のサポートすることを指します。
キャリアカウンセラー・コンサルタント
上記のキャリアカウンセリングを行う職業のことを、キャリアカウンセラーもしくはキャリアコンサルタントと呼んでいます。
キャリア教育と職業教育の違い
キャリア教育と共によく使われる言葉に、「職業教育」があります。
職業教育とは、文部科学省によると「一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度を育成するもの」と定義されています。
キャリア教育と職業教育は同義ではありませんが、基本的方向性はどちらも以下の3つです。
- 幼児期の教育から高等教育に至るまでの体系的なキャリア教育の推進
- 職業教育の意義の再評価と実践的な職業教育の体系的整備
- 生涯学習の観点に立ったキャリア形成支援の充実
キャリア教育と職業教育の違いとしては、育成する力と教育活動の観点において違いがあります。
| キャリア教育 | 職業教育 | |
| 育成する力 | 一人一人の社会的・職業的自立に向け、必要な基盤となる能力や態度 | 一定又は特定の職業に従事するために必要な知識、技能、能力や態度 |
| 教育活動 | 普通教育・専門教育を問わず様々な活動の中で実施される(職業教育も含まれる) | 具体の職業に関する教育を通して行われる(この教育は、社会的・職業的自立に向けて必要な基盤となる能力や態度を育成する上で有効) |
職業教育の取り組みは、具体的な職業の専門的な知識・技能を習得させることに重きが置かれていることが特徴です。
▶2019年4月に創設された専門職大学とは?大学・専門学校との違い、卒業後の進路など
キャリア教育が推進される背景・目的
文部科学省の「キャリア教育が求められる背景とその基本的な考え方」によると、以下の5つの背景からキャリア教育が求められているとされています。
- 少子高齢化社会の到来、産業・経済の構造的変化や雇用の多様化・流動化
- 就職・職業をめぐる環境の変化
- 若者の勤労観、職業観や社会人・職業人としての基礎的・基本的な資質をめぐる課題
- 精神的・社会的自立が遅れ、人間関係をうまく築くことができない、自分で意思決定ができない、自己肯定感を持てない、将来に希望を持つことができない、進路を選ぼうとしないなど、子どもたちの生活・意識の変容
- 高学歴社会におけるモラトリアム傾向が強くなり、進学も就職もしなかったり、進路意識や目的意識が希薄なまま「とりあえず」進学したりする若者の増加
これらの社会状況の変化と、若者の就業観の変化を要因として、キャリア教育が求められていると考えられます。
キャリア教育の現状
公的教育機関の取り組み
ここでは、国立教育政策研究所の「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」を参考に、公的教育機関として小学校・中学校・高等学校の3つを取り上げ、それぞれの機関が取り組んでいるキャリア教育施策を具体的事例を取り上げて説明します。
小学校におけるキャリア教育
小学校では、学習意欲の向上や、人間関係形成・社会形成能力の育成を目的とした取り組みが進められています。
キャリア教育のの学習内容等でよく行われているものには、中学校訪問や体験入学、学校説明会などがあります。
働くことの意義を考える授業や、自分の将来について考え具体的な目標を考えてもらう機会などを設けている学校などもあります。
中学校におけるキャリア教育
中学校では、キャリア教育を各教科と横断的に捉え、学習と実社会を結び付けて考えることを重視した取り組みが行われています。
キャリア教育の充実度が高い学校ほど、生徒の学習意欲が高いことが国立教育政策研究所の調査によって示されています。
学校側が学校教育で育てたい生徒の能力を明確にし、授業のほか、課外活動、委員会活動などで実践的にキャリア教育を推進する方針です。
高等学校におけるキャリア教育
高等学校は、普通科、専門学科、総合学科、それぞれの学校にとって必要な取り組みを踏まえながら、全体計画の策定、教員への取り組みの促し、外部組織との連携などが行われています。
総合的な学習を活用した、自主的な調査研究、ワークショップ、討論を実施したりと、教科の枠を超えた活動が重視されています。また、インターンシップを活用し、生徒の自主性や、大人社会と関わる能力の育成なども行われています。
民間企業の取り組み
民間企業においても職場見学やインターンシップ、会社説明会などにおいて、キャリア教育の取り組みが進められています。
以下で具体的な事例として、トモノカイとキャリア教育プログラム開発推進コンソーシアムの2つの事例を紹介します。
トモノカイ
株式会社トモノカイは、学生向けメディア事業や家庭教師事業などを行っている企業です。
トモノカイは、キャリア教育事業として「大学体感プログラム」を実施しています。大学体感プログラムとは、「大学とはどのような場所か」を知ることを目的に、中高生が大学生と交流するプログラムです。
具体的には、大学でのゼミが模擬体験できる「体験ゼミ」や「現役大学生との座談会」を行っています。
キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアム
キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアムとは、学校で活用できる教育プログラムを普及させることを目的として、2006年に民間企業や団体が連携して設立した組織です。
環境、経済、食育などといった多様なテーマで、教育委員会や学校に無償で教育プログラムを提供しています。
キャリア教育プログラム開発推進コンソーシアムが運営する「企業が提供する教育プログラム情報サイト」では、学年・教科・テーマなどで、教育機関側が求める条件に当てはまる教育プログラムを検索することができます。
キャリア教育の課題
日本政府は、キャリア教育全体の課題として以下の4つを挙げています。
- 職場体験活動のみをもってキャリア教育を行ったものとしてしまっていること
- 社会への接続を考慮せず、次の学校段階への進学のみを見据えた指導となっていること
- 職業を通じて未来の社会を作り上げていくという視点に乏しく、特定の既存組織のこれまでの在り方を前提に指導が行われていること
- 将来の夢を描くことばかりに力点が置かれ、「働くこと」の現実や必要な資質・能力の育成につなげていく指導が軽視されていること
これらの課題を乗り越えるため、教育課程全体を通じて必要な資質・能力の育成を図っていく取り組みが重要となると考えています。
さらに、その他の課題として、校内研修の実施率が低いことと、キャリア教育の評価方法がわからないという悩みを学級担任が抱えていることなどがあります。
校内研修の非実施割合は、小学校:54.4%、中学校:38.7%、高校:34.6%です。教員相互の勉強会、振り返りや実践報告の機会を設けるべきであると言われています。
評価の方法がわからずに悩んでいる学級(ホームルーム)担任の割合は、小学校:33.2%、中学校:34.9%、高校:31.0%です。
この評価方法の現状から、国立教育政策研究所は、やるべきことをやったかを見る「アウトプット評価」と力がついたかを見る「アウトカム評価」の両方の評価が必要としています。
※アウトプット評価は目的・目標の達成のために行われる事業の結果に対する評価。例えば、「5日間の職業体験を実施したか」など。
※アウトカム評価は事業の目的・目標の達成度や数値目標に対する評価。例えば、「職業体験を通して、生徒がどのように成長したか」など。
また、小学校・中学校・高校・大学のキャリア教育において、異なる課題が認識されています。以下ではそれらを紹介します。
小学校におけるキャリア教育の課題
小学校では、キャリア・カウンセリングの良さや必要性の理解が不十分なことが課題となっています。
2014年の小学校における調査では、キャリアカウンセリングの実施率が4.7%でした。
この実施率の低さは、「キャリア・カウンセリングの実施方法がわからない」ということも要因と考えられています。
中学校におけるキャリア教育の課題
中学校では、キャリア教育の取り組みが、そのほかの教育活動とは別物として扱われやすい傾向にあることが課題として認識されています。
それぞれの教育活動とキャリア教育の実践を結び付ける考え方の浸透が必要とされています。
高等学校におけるキャリア教育の課題
高等学校では、インターンシップの実施率と経験割合に乖離があることが課題となっています。
2016年時点で、高等学校におけるインターンシップ実施率は86.9%でした。一方、在学中にインターンシップを経験した生徒の割合は33.3%で、特に普通科においてインターンシップを経験した生徒が少なくなっています。
この要因は、高等学校から生徒に対するインターンシップ参加への働きかけが不十分であると考えられています。
大学におけるキャリア教育の課題
大学では、キャリア教育は「担当の教員のみが行う取り組みである」という認識が強く、全学的な位置づけが取れていないという課題を抱えているようです。
運営組織・体制の整備、教職員への意識の啓発が必要とされています。
教育方法として、グループワーク・ゼミ形式の授業、調査・実習・発表重視の授業、インターンシップなどを効果的に活用していくことが重要とされています。
参考
- 文部科学省「キャリア教育の推進」
- 国立教育政策研究所「キャリア教育・進路指導に関する総合的実態調査」
- 厚生労働省「Part2 キャリア教育の実践 第1章 大学におけるキャリア教育の内容と課題」
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