2019-07-05 2019-12-13
教育にも用いられる「ゲーミフィケーション」とは?ゲームの要素を社会活動やサービス開発に組み込むこと
「ゲーミフィケーション」という言葉を聞いたことがありますか。
あまり聞きなじみのない言葉かもしれませんが、ゲーミフィケーションとは、ゲームの要素やデザインを社会活動やサービス開発に組み込むことを指します。
ゲーミフィケーションは教育分野においても活用され始めており、日本でも2011年頃から注目されています。
この記事では、ゲーミフィケーションと、ゲーミフィケーションの教育分野における効果などを解説します。
※教育工学・ゲーム学習論を専門とする東京大学の藤本徹氏、教育工学・科学教育を研究する早稲田大学の森田裕介氏が2017年2月にミネルヴァ書房より出版した書籍「ゲームと教育・学習」を参考にしています。
ゲーミフィケーションとは
ゲーミフィケーションとは、2010年代に使われるようになった言葉で、ゲームの要素を社会活動やサービス開発に組み込むことです。
何かの活動の際にポイントや、得点んなどの設計、競争の仕組みを導入することもゲーミフィケーションの一部です。
教育分野におけるクイズ形式の教材や、小売業などでの会員ポイント制なども、広義ではゲーミフィケーションに含まれます。
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ゲーミフィケーションの特徴
ゲームの要素を取り入れていること
ゲーミフィケーションの特徴は、ゲームでない活動やサービスの一部に、ゲームのデザインや仕組みを取り入れていることにあります。
娯楽として扱われるゲームのゴールやルール、フィードバックなどといった要素がサービスに盛り込まれています。
課題・目標・規則が明確であること
ゲーミフィケーションの特徴として、クリアすべき課題が設定されており、クリアするとなんらかの報酬が得られるようになっていることが挙げられます。
また、規則が決まっており、その規則(ルール)の中で課題に取り組みます。ゲームは一定の条件があり、それをクリアすると報酬が与えられるようになっており、全くの制限のないゲーミフィケーションというのは設定のしようがありません。
「動機付け」につながること
「ゲーミフィケーションの活用によって、そのサービスに対する動機付けにつながるか」がポイントです。
例えば、この問題をクリアしたら何かがもらえるとか、一定時間を活動にかけるとバッジや称号が与えられるといったことがあげられます。そうした仕組みによって、行動を促す仕組みになっているかです。
ゲームの要素はあくまでも、本来の目的を補助するために活用されていなくてはいけません。
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ゲーミフィケーションが教育分野で注目される背景
スマートフォンの普及
ゲーミフィケーションが注目を集めるようになった背景として、スマートフォンが急速に普及したことが上げられます。
総務省の「平成30年版 情報通信白書」によると、スマートフォンの世帯保有率は2010年は約10%でしたが、2017年には約95%まで増加しています。
個人のスマートフォン保有率も、2014年は約45%、2017年は約61%と増加しています。
スマートフォンには複数の機能がありますが、アプリケーションをインストールすることで、さらに機能を追加することができます。
現在提供されているアプリは、ニュースを見るためのアプリや、ゲームアプリなど実に様々です。
その中でも、ゲームを通して学習する、ゲーミフィケーションを用いたアプリケーションがたくさんあります。
スマートフォンの普及とともにアプリケーションの開発が進み、教育・学習を目的に作られたアプリが普及したことで、ゲーミフィケーションの考え方も広がってきました。
エデュテインメントの考え方
ゲームの楽しさの要素に着目して、娯楽用途のゲームを教育的な意図で開発したり、娯楽ゲームを教育的な文脈で利用したりする活動
『ゲームと教育・学習』第1章1.1「研究分野の歴史的経緯と用語・概念の整理」 より
エデュテインメント(Edutainment)は、Education:エデュケーション(教育)とEntertainment:エンターテインメント(娯楽)を組み合わせた造語です。
ゲームの楽しさに付随して教育的な効果を得るための活動のことです。
エデュテインメントはゲーミフィケーションよりも狭義で、サービス内容が教育分野に限定されています。
エデュテインメイントの考え方は最近できた考え方というわけではなく、以前から存在していました。
20世紀初頭に主にボードゲーム、1980年代以降は主にデジタルゲームを用いてエデュテインメントが活用されています。
そのエデュテインメントの考え方に加え、デジタルゲーム技術の発展・幼少期からデジタルゲームに触れて育った世代の成長を背景として、2007年頃に「シリアスゲーム」が提唱されました。シリアスゲームは社会的な問題解決のためのゲームの利用を総称しています。
2010年以降、より広義な「ゲーミフィケーション」が教育分野においても提唱されるようになりました。
最近のスマートフォンの普及と、古くからあるエデュテインメントの考え方が発展したことで、ゲーミフィケーションは注目されています。
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ゲーミフィケーションの教育における効果
本来的にゲームは参加型で課題志向であり、スキルの習得と実践が一連の活動の中で密接に関わっているという性質をもつことから、ゲームと学習の親和性の高さが説明されている。
『ゲームと教育・学習』第1章1.4「ゲームの教育における役割と長所・短所」 より
ゲームと学習はその相性の良さから、様々な効果が期待されます。
ゲーミフィケーションを学習に取り入れる方法は様々で、その方法により期待される効果は異なりますが、ここでは代表的な効果として、「継続学習しやすい(挫折しにくい)」「暗記しやすい」「複雑な概念が理解しやすい」の3つを紹介します。
学習を継続しやすい、学習意欲を維持しやすい
ゲーミフィケーションを教育で活用する効果として、学習への意欲を高めやすいことが挙げられます。
冒頭でも触れた通り、ゲームは本質的に課題志向であり、課題をクリアしたことを学習者自身が実感でき成長の実感を得やすいため、継続学習に繋がりやすい、という効果が期待されています。
繰り返し学習することで、暗記しやすい
暗記すべき重要事項を、ゲームを通して自然と身に付けることができます。
例えば、間違えた部分や重要な内容を繰り返し確認させるために、ゲーミフィケーションを活用したサービスが多くあります。
複雑な概念が理解しやすくなる
ゲーミフィケーションを活用することで、複雑な概念の理解を促す効果が期待できます。
例えば、言葉だけでは理解しづらい内容を動画で解説したり、覚えにくい内容をキャラクターとの会話やストーリーの中で覚えていく、などの手法が使われます。
ゲーミフィケーションを活用した学習サービスの事例
ここまでゲーミフィケーションとその効果について説明してきました。
ここからは実際にゲーミフィケーションを取り入れた学習サービスとその効果について、3つの事例を挙げて紹介します。
リクルートマーケティングパートナーズ「スタディサプリ」
スタディサプリは、リクルートマーケティングパートナーズが提供する、オンライン動画学習サービスです。
小学生から高校生までの学校教育が対象のコース(「スタディサプリ」)と、英語学習に特化したコース(「スタディサプリENGLISH」)があります。
スタディサプリは「課題をこなすと獲得できるコインを使って、モンスターを育成する」というゲーミフィケーションの要素を取り入れています。
スタディサプリの学習への効果としては、2016年に渋谷区の小中学校で実証実験が行われ、代々木山谷小学校5年生48名のうち半数以上の生徒が学習意欲が上がったと回答した、という結果がでています。
さらに、鉢山中学校2年生31名が受験した到達度テストの結果では、実験前後で平均点が20点向上(42点→62点)しました。
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ベネッセ(進研ゼミ)「歴史人物つながりバトル42」
「歴史人物つながりバトル42」は、ベネッセが進研ゼミ会員向けに提供する、歴史学習アプリです。
対戦形式で、小学6年生~中学1年生が対象となっています。
このアプリでは、制限時間内に関連する歴史人物のカードを組み合わせて対戦し、ステージクリアを目指します。
「歴史人物つながりバトル42」の学習効果は、アプリ学習に「取り組んだグループ」と「取り組まなかったグループ」に分けて歴史人物に関する問題の正解率を比較したところ、取り組んだグループは取り組まなかったグループより、成績上位層で4.0%、中位層で8.4%、下位層で9.4%、それぞれ正解率が高いことがわかりました。
(参考:「ビッグデータで確かめるデジタル教材の学習効率!」)
すららネット「すらら」
すららは、すららネットが提供する、対話型アニメーションタイプのeラーニング教材です。
小学生から高校生までが対象で、2019年7月時点では英語・数学・国語の3科目が提供されています。
すららには、ゲーミフィケーションの3要素が取り入れられています。
- 他のユーザーと競い合うこと(総学習時間やクリア数など)
- キャラクターとのインタラクティブな対話形式で学習を進めていくこと
- 各ステージ(問題)をクリアすること
すららの学習効果は、2012年12月に発表された論文「ゲーミフィケーションを活用したeラーニング教育の可能性について」の実験結果によると、すららを1週間利用した神戸星城高等学校1年生77名のうち約87%の生徒の成績が向上しました。
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