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2019-10-18

デジタル教科書とは19年4月に導入が制度化された、紙の教科書をそのまま記録した電子的な教材

2019年4月に文部科学省はデジタル教科書導入を制度化しました。

2020年度より学習指導要領が改訂されることもあり、授業改善や学習補助を目的として実施されましたが、全国一律にデジタル教科書の普及が進んでいない状況にあります。

教員の方や小中学生の子どもを持つ保護者の方は、デジタル教科書がどういったものなのか気になっている、不安に思っている方もいるのではないでしょうか。

この記事では、デジタル教科書の概要やメリット、デジタル教科書導入にあたっての課題などについて説明しています。

デジタル教科書とは「紙の教科書の内容をそのまま記録した電子的な教材」

デジタル教科書は、文部科学省によれば、「紙の教科書の内容の全部をそのまま記録した電磁的記録である教材」と定義されています。

この定義は、厳密には「学習者用デジタル教科書」の定義です。

デジタル教科書には、学習者用と指導者用のものがあります。

指導者用デジタル教科書は、教員が生徒に授業内容を提示しながら指導するための電子黒板等のことを言います。

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2019年4月にデジタル教科書が制度化

2019年4月に「学校教育法等の一部を改正する法律」等関係法令が施行されました。

これは、2020年度より実施される新学習指導要領を踏まえた授業改善や学習補助を目的として、学習者用デジタル教科書を小学校・中学校・高校・特別支援学校で導入するという内容の法令です。

制度化によって、紙の教科書を中心に扱いながら、デジタル教科書を併用して授業を行うことが可能になりました。

デジタル教科書の制度化に関連する法律・法令は、

  • 学校教育法等の一部を改正する法律(平成30年法律 第39号)
  • 学校教育法施行規則の一部を改正する省令 (平成30年 文部科学省省令 第35号)
  • 学校教育法第34条第2項に規定する教材の使用について定める件 (平成30年 文部科学省告示第237号)

等があり、ここではこの3つについて説明します。

学校教育法等の一部を改正する法律(平成30年法律 第39号)

  • 紙の教科書の内容を文部科学大臣の定めるところにより記録した電磁的記録である教材(学習者用デジタル教科書)がある場合には、文部科学大臣の定めるところにより、児童生徒の教育の充実を図るため必要があると認められる教育課程の一部において、紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用できる。
  • 視覚障害、発達障害その他の文部科学大臣の定める事由により紙の教科書を使用して学習することが困難な児童生徒の学習上の困難を低減させる必要がある場合には、文部科学大臣の定めるところにより、教育課程の全部においても、紙の教科書に代えて学習者用デ ジタル教科書を使用できる

学校教育法施行規則の一部を改正する省令 (平成30年 文部科学省省令 第35号)

  • 学習者用デジタル教科書の要件:紙の教科書の発行者が、紙の教科書の内容を全て記録(ただし、デジタル化に伴い必要となる変更は可能。)
  • 学習者用デジタル教科書を使用する際の基準は告示において定める。
  • 教育課程の全部においても紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用できる事由:視覚障害や発達障害等の障害、日本語に通じないこと、これらに準ずるもの。

学校教育法第34条第2項に規定する教材の使用について定める件 (平成30年 文部科学省告示第237号)

  • 教育の充実を図るため、紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用する際の基準:
    • 紙の教科書と学習者用デジタル教科書を適切に組み合わせ、紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用する授業は、各教科等の授業時数の2分の1に満たないこと。
    • 児童生徒がそれぞれ紙の教科書を使用できるようにしておくこと。
    • 児童生徒がそれぞれのコンピュータにおいて学習者用デジタル教科書を使用すること。
    • 採光・照明等に関し児童生徒の健康保護の観点から適切な配慮がなされていること。
    • コンピュータ等の故障により学習に支障が生じないよう適切な配慮がなされていること。
    • 学習者用デジタル教科書を使用した指導方法の効果を把握し、その改善に努めること。
  • 児童生徒の学習上の困難を低減させるため紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用する際の基準
    • 障害等の事由に応じた適切な配慮がなされていること。
    • 紙の教科書に代えて学習者用デジタル教科書を使用する授業が、各教科等の授業時数の2分の1以上となる場合には、児童生徒の学習及び健康の状況の把握に特に意を用いること。

重要な要素としては、以下の3点があげられます。

  1. 教育課程の一部でデジタル教科書を扱える
  2. デジタル教科書は紙の教科書の内容すべてを記録している必要がある
  3. デジタル教科書を使用する授業は各教科の授業時数の2分の1以下であることが条件

デジタル教科書を使用する際は、あくまで教育課程の一部として扱うこととされています。この一部とは、各教科の授業時数の2分の1以下でなければなりません。

また、デジタル教科書の内容は、これまでの紙の教科書の内容を踏襲する必要があります。

文部科学省はひとえに紙からデジタル教科書へと転換するのではなく、徐々に導入し紙の教科書との併用を推進していく意向であると考えられます。

参考

デジタル教科書の機能

デジタル教科書には、多くの機能が搭載されています。ここでは、デジタル教科書の機能の一部を箇条書きで説明します。

  • 拡大機能:文字や画像の拡大ができる
  • 2画面表示機能:2つの画面を同時に表示して、比較ができる
  • 音声再生機能:詩の朗読や英語の発音などが再生できる
  • アニメーション機能:アニメーション動画を視聴できる
  • 参考資料機能:教科書にない画像・映像資料の閲覧ができる
  • 書き込み機能:画面に線や文字を書くことができる
  • 付箋機能:重要な単語を付箋で隠して、覚えているか確かめられる
  • 作図・描画機能:図を動かしたり、数を変えて調べられる
  • 文具機能:分度器やコンパスを使用できる
  • 保存機能:画面の書き込みを保存できる
  • 正答比較機能:正解を画面に提示して、自分の答えと比較できる
  • 印刷機能:自分で加工した画面を印刷できる

デジタル教科書の普及により、今後はさらに機能が付与されていくことが予想されます。

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デジタル教科書の学習意欲を向上させる教育効果

ここでは、千葉市が2011年度より2年間かけて行ったデータを元にデジタル教科書の教育効果について説明します。

千葉市教育センターの「デジタル教科書を活用した研修授業における教育効果の研究」によると、

  • デジタル教科書は子ども達の関心・意欲を高めるのに役立つと回答した教師 98%
  • デジタル教科書を使うと楽しいと回答した生徒 92%

の結果が出ています。

また、デジタル教科書は、授業の中で特に

  • 導入部分
  • 見通しが必要な場面
  • まとめ部分

において、効果的なようです。

デジタル教科書を使用する際、説明する側と聞く側の双方がデジタル教科書を注視するため、子どもたちの集中が高まり、深い理解につながると考えられています。

また、まとめや振り返りの場面では、過去の授業記録が残っており、時系列に沿って復習ができるという利点も挙げられています。

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デジタル教科書のメリット

ここでは、デジタル教科書のメリットを学習者側と指導者側の2つの視点から説明します。

学習者側のメリット

学習者側のメリットとして、以下の5点が考えられます。

  1. 書き込みやすく、消しやすい
  2. 音声や映像を使って学べる
  3. 学習経過・履歴が可視化できる
  4. デジタル教材との一体的な活用ができる
  5. 教科書やノートの持ち運び負担がなくなる

デジタル教科書に搭載されている機能を活用し、その他のデジタル教材と併用することで学習効率は更に上がると考えられます。

また、デジタル教科書のみでの授業が可能になれば、タブレット1台ですべての教科書の代用となり生徒の荷物負担の軽減につながります。

指導者側のメリット

指導者側のメリットとしては、以下の3点が考えられます。

  1. 授業で生徒の視線が集められる
  2. 過去の授業の振り返りを、授業記録から簡単にできる
  3. 生徒一人ひとりの学習状況を正確に把握できる

前述した千葉市の効果検証によれば、デジタル教科書は生徒の集中力向上に寄与できることがわかりました。これは日々授業を改善する教師にとってメリットと言えるでしょう。

さらに、デジタル教科書は授業の記録や生徒の学習状況をデータとして閲覧でき、教育の質向上に役立てることができます。

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デジタル教科書の普及率は50%以下

ここからは、デジタル教科書の普及状況について説明します。

普及率は現状50%以下で、広く普及しているとはいえない状況です。特に、地域によって普及率に大きな差が生じています。

文部科学省が2018年2月に公表した「学校における教育の情報化の実態等に関する調査結果」によれば、デジタル教科書の整備状況は、以下の通りです。

(同調査におけるデジタル教科書とは、指導用デジタル教科書のことを指します)

  • 小学校 52.1%
  • 中学校 58.2%
  • 義務教育学校 59.1%
  • 高等学校 12.5%
  • 中等教育学校 41.9%
  • 特別支援学校 12.8%
  • 合計 48.4%

小中学校の導入状況は約5~6割、合計すると48.4%という半分に満たない結果でした。

都道府県別にみると、

  • 1位 佐賀県 98.7%
  • 2位 石川県 83.1%
  • 3位 沖縄県 80.3%

~略~

  • 45位 鳥取県 26.6%
  • 46位 島根県 25.9%
  • 47位 北海道 16.5%

と、1位の佐賀県と47位の北海道とではおよそ80%の差が開いています。

教員1人に配布する指導用デジタル教材の普及率が50%に達していないことを考えると、学習者用のデジタル教科書の普及はさらに時間を要することが見込まれます。

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デジタル教科書の課題

ICT環境の整備

デジタル教科書の普及を進めていくには、学校のICT環境の整備が必要となります。

インターネット接続を学校内で可能にするに加えて、コンピュータの設置や校務支援システムの整備も必要です。

ICT環境は地域格差が強く出やすい要素であり、義務教育課程でデジタル教科書の導入を進めるにあたって普遍的なIT基盤の構築が重要になるとでしょう。

効果的な利活用方法の共有

デジタル教科書は各教科・各分野で有効活用できる場面が異なり、教員のデジタル教科書活用のための知識やノウハウを共有し高めあっていく必要があると考えられています。

教員の研修やデジタル教科書活用の機会を増やすことで、デジタル教科書の効果的な使い方ができる場面が増えていくことが望まれています。

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まとめ

  • デジタル教科書は紙の教科書の内容の全部をそのまま記録した電磁的記録である教材
  • 2019年4月に文部科学省によってデジタル教科書が制度化された
  • デジタル教科書の普及率は約5割と標準化までには時間がかかる見込み

デジタル教科書の活用には、学習者・指導者の双方に大きなメリットがあります。

文部科学省がデジタル教科書の導入を制度化したことで、今後はデジタル教科書が普及していくことが予想されます。

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