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2016-05-02 2020-07-21

反転授業とは従来の授業形式を”反転”させる教育方法!メリット・デメリットを解説

2013年頃から大きな注目を集めるようになった反転授業。

新型コロナウイルスの影響で学校教育が大きく変化する中、再び「反転授業」に注目する動きが強まっています。

この記事では反転授業とは何か、メリットとデメリット、注目されている背景、反転授業の実践例を紹介します。

反転授業とは従来の授業形式を”反転”させる教育方法

反転授業とは従来の授業形態を「反転」させる教育方法のことです。

従来は、授業の講義で先生が新しい知識を教え、生徒が自宅で宿題などを通して習った知識の定着を測る教育方法が一般的でした。

この授業形態を「反転」させます。

ビデオなどのオンライン教材で新しい知識を個別に事前に学習し、学校の集団授業では演習を行って分からない部分を質問したり、

クラス内で意見交換を行って理解を深めるのが「反転授業」です。

つまり、生徒が知識を得る「インプット」と、理解を深め知識を定着させるための演習を行う「アウトプット」の場を「反転」させる教育方法が反転授業です。

オンラインを授業にとり入れる「ブレンド型学習」の1つ

ブレンド型学習とはオンライン型教育と、生徒と教師が直接向き合って学ぶオフライン型教育を組み合わせる学習形態です。

反転授業はそれまで教室で先生が行っていた講義部分をビデオなどのオンライン教材で代替し、その教材で基礎知識を学んだあとに対面で会って知識の定着や理解の深まりを目的を目指します。

反転授業も「ブレンド型学習」の学習形態に含まれます。

反転授業は2007年頃にアメリカの公立学校で始まった試みで、その後急速に世界各地で広まり、日本でも2013年頃から高い注目を集めています。

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反転授業のメリット

反転授業には従来の授業にはないメリットがあり、注目を集めています。

ここからは反転授業のメリットを生徒と教員、それぞれの立場から説明します。

【生徒】自分のペースで繰り返し学習できる

生徒にとってのメリット1つ目は自分のペースで繰り返し学習できる点です。

個別に映像教材などを使いながら新しい知識を習う場合、わからない箇所は理解するまで繰り返し視聴することができます。

これは対面での集団授業ではなかなか難しいことです。

映像教材のデータがしばらく残っている場合には、少し時間が経ったあとに復習として視聴することも可能です。

これは生の授業では不可能です。

このように個々人が自分のペースで学べるため、反転授業では効率的な知識習得が可能と言われています。

授業についていけず分からないということが起きにくいため、生徒の学習意欲の向上にもつながります。

【生徒】問題解決能力の育成

反転授業では対面で行う授業は演習問題を解いたり、より発展的な内容を扱う時間に充てるため、インプットした知識を生徒がアウトプットする機会が増えることで問題解決能力の育成につながるとされています。

分からなくなったらすぐに教師や周りの生徒に質問ができる環境で演習を行うことによって、一人では解けなかった難しい問題にチャレンジしやすくなります。

また複数人で一つの問題を考えることで、自分では思いつかなかった様々な解法があることを知り、理解の深まりにつながることもあります。

こうして生徒が知識をアウトプットし、より難しい問題にチャレンジする機会を増やすことで、問題解決能力を育成することができます。

【生徒】協働的な学習が可能

反転授業では、一人で問題を解くのではなく、複数人で協力して答えを出すディスカッションやグループワークの機会も頻繁に作ることができます。

こうして授業の中で「学び合い」「教え合い」をする時間や、議論する時間が増えることによって協働的な学習が可能になり、新しい発見があったり、違う意見を持つ人の考えに触れる機会を持つことができます

また、仲間と共に学ぶことによって、学習意欲の向上にもつながるとされています。

【教員】生徒の学習状況を把握しやすい

反転授業のメリットは学ぶ側、生徒だけにあるわけではありません。

反転授業では授業が生徒が学んだことをアウトプットする場になるため、教員が生徒の理解度合いを細かく確認できるという利点があります。

そのため、教員は生徒の進捗や得意不得意に合わせた学習サポートがしやすいです。

また、生徒と直接コミュニケーションを取る機会が増えることによって、生徒と教師の関係性向上にもつながります。

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反転授業のデメリット

一方で、反転授業にはデメリットもあります。

【生徒】自習時間を確保する必要がある

反転授業は生徒が事前に予習をして来なければ効果が出づらい学習法です。

生徒によっては自習時間を確保することにハードルを感じる場合があります。

例えば部活動や課外活動に忙しい生徒は、学校外で学習時間を確保することが負担になるケースがあります。

低学年の生徒の場合は、家庭で自習時間を確保するために保護者のサポートが必要になる事も多いです。

しかし、共働き家庭のようにそのようなサポートが難しい環境だと、予習を事前に行えず学校の授業についていくことができなくなり、学習効果が出づらくなってしまいます。

自習時間を確保しなけばならないのは反転授業のデメリットと言えるでしょう。

【生徒】ある程度の学習意欲が必要

先述した自習時間を確保する難しさとも関わりますが、反転授業では自分で自発的に学習する必要があるため、ある程度の学習意欲が必要です。

いわば反転授業は学習に対する意欲が乏しい生徒にとってはハードルが高い学習法であると言えます。

反転授業には予習の徹底が欠かせませんが、学習意欲の低い生徒が集まる環境ではそれがなかなか実現せず、期待していた学習効果が見られないケースもあります。

【生徒】デジタル機器を使うことによる目の疲れ

反転授業は、従来は授業内で受けていた講義を映像教材に置き換え、事前に生徒が自宅で予習できるようにしたものです。

映像教材を視聴するためのデジタル機器を長時間視聴することで、徒が目の疲れを感じたり、視力が低下する危険性が指摘されています。

【生徒・教員】物理的な学習環境の整備が必要

反転授業を取り入れる場合には、全ての生徒が講義部分を代替したオンライン教材にアクセスできる必要があります

映像教材を見るためには、端末やインターネット回線の整備など物理的な学習環境の整備が不可欠です。

しかしこのような環境整備には費用がかかるため、資金が潤沢にある地域とそうでない地域や私立学校と公立学校の間等で整備にばらつきが見られています。

最近は文部科学省が「GIGAスクール構想」をうちたて、生徒1人1台端末整備の実現を目指しています。

▶GIGAスクール構想とは、1人1台端末と通信ネットワークを整備する文科省の方針

【教員】教材準備が大変

教員にとっては、今まで授業内で行っていた講義をオンラインで生徒が事前に学習できるように講義動画などの教材を準備する必要があります。

オンライン教材を初めて作成する教員はまだまだ多く、勝手がわからず負担になっていることがあります。

反転授業が注目される理由

欧米で実証された学習効果

the Atlantic「The Post-Lecture Classroom: How Will Students Fare?」によると、ノースカロライナ大学のRussell Mumper副学部長が基礎薬学の課程で反転授業を2012年と2013年に導入し、年度末試験において

  • 2012年は前年度+2.5%
  • 2013年は前年度+2.6%

結果が向上しました。つまり、2年間で計5.1%向上しています。

また、生徒は従来の講義形式よりも反転授業を好んだとの結果がでています。

このような反転授業の学習効果が実証されたことが契機となり、欧米で反転授業への関心が高まったと考えられます。

ICT環境の普及

反転授業が注目されている理由の1つとして、ICT環境の普及が考えられます。

現在日本は、インターネット環境が急速に普及し、家庭・学校双方に回線が整備されてきています。

同時に、スマートフォンやタブレット、パソコンなどの情報端末が普及しています。

このようなICT環境の普及によって、教育機関にとって教材や課題の配信がしやすい環境が整い、生徒の学習状況の管理もしやすい状況が生まれました。

教育のデジタル化

ICT環境の普及によって、教育のデジタル化も進んでいます。

具体的には、

  • 学習塾や企業研修などでオンライン配信されるビデオ教材
  • ゲーム要素が盛り込まれた学習アプリ
  • 大学教授や専門家の講義が受けられる教育プラットフォームMOOCs

など多くのサービスが挙げられます。

実際、MOOCsのひとつである「Khan Academy(カーンアカデミー)」は、カリフォルニア州の学校で反転授業の一貫として導入されていました。

▶Khan Academyとは世界中で600万人が学び、学校教育にも活用されるオンライン学習サービス

▶MOOCsとは?読み方は?代表的な組織、海外での事例は?日本でのMOOCsは?

COVID-19(コロナウィルス)等への対策

新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大を防ぐために外出を自粛し、自宅に待機する「ステイホーム」が世界中で呼びかけられています。

日本では3月から全国の学校で一斉休校が呼びかけられ、5月末あたりまで休校が続いた地域や学校がありました。

教室で集まることができない間、生徒が自宅で学ぶことができるようにオンライン学習が急速に普及しています。

現在は徐々に学校が再開されてきていますが、流行の第2波への懸念から児童生徒の登校には慎重な姿勢が続いています。

その中で、せっかく学校に登校した際にはその時間を有効に過ごせるように工夫をする動きが広まり、集団で学ぶ利点や映像授業の活用例として、「反転授業」が改めて注目されています。

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反転授業の事例

ここからは、実際に日本で行われている反転授業の事例を教育段階別に紹介します。

小学校:タブレットPCを活用した”スマイル学習”

「スマイル学習」とは、佐賀県武雄市で実施されている反転授業のことです。

武雄市では、全国に先駆けて学校現場へのiPad整備を行い、2016年には市内全小中学校で1人1台タブレットPCを普及させました。

導入したタブレットPCを用いて、当時から話題を集めていた「反転授業」を実践しています。

「スマイル(SMILE)」とは「School Movies Innovate the Live Education-classroom」の頭文字です。

特徴

「スマイル学習」では自宅に持ち帰ったタブレットPCで生徒は授業の予習を行います。

反転授業では予習をしてこない生徒への対応が問題になりますが、武雄市ではこのような生徒がなるべく少なくなるように、予習用の動画をなるべく子どもたちの興味に刺さるものになるように工夫したそうです。

協力企業を募り、現場の教師と企業が共同作成した動画は子どもたちにも好評で、予習を忘れてくる生徒は非常に少なくなりました。

この予習が家庭での学習習慣の確立に役立っているという声も寄せられています。

効果

武雄市のスマイル学習を取り入れた効果として「生徒の学習態度の向上」と「教師の指導方法の振り返り・向上」が見られると報告されています。

スマイル学習の成績に対する効果についてはまだはっきりした関係が見られないとのことなので、今後も効果検証を積極的に進めていく方針が示されています。

今後

今後は2020年度に小学校で必修化されたプログラミング教育や、英語のネイティブ話者と交流するオンライン英会話などにも様々な活用が見込んでいるようです。

参考:武雄市教育委員会発行パンフレット

中学校:数学の授業動画を作成、「思考を活性化」する授業

兵庫県篠山市の篠山東中学校では、市教育委員会の使命を受け、反転授業の取り組みを2015年から実施しています。

教職員が作成した映像教材を生徒が事前に視聴し、授業ではより応用的な内容や深い思考を要する演習の時間に充てることで生徒の理解度向上を目指しています。

英語・数学、・国語・理科・社会の主要5科目だけでなく技術・家庭・音楽といった教科でも反転授業を実践しているようです。

効果

授業後の生徒アンケートでは、反転授業に対して肯定的な意見が多く寄せられています。

映像教材がわかりやすい、わからなくても何度も繰り返し見られるといった意見が集まりました。

教師からも、事前に予習をしてきているため授業では活発な意見交換ができ、学習意欲の高まりがみられたという意見や、家庭学習の定着が見られたという意見が集まりました。

一方で、映像教材作成への負担の大きさや、予習をしてこない生徒への対応の難しさが課題として挙げられています。

単元によって効果が上がらないものもあるため、導入単元の検討が必要といった指摘もありました。

参考:源浩貴(2015)「反転授業~アクティブラーニングを取り入れた授業を目指して~」『兵庫教育9月号』24-27頁

高校:英語・数学で反転授業を導入

近畿大学附属高等学校では、2013年から新入生へのiPad購入を義務付け、学校側でもデジタル教科書の利用やポータルサイトの構築を進めるなど教育のICT化に積極的に取り組んでいます。

同校では英語と数学に反転授業を取り入れています。

実践内容・効果

英語の授業では、ポータルサイト上に講義ビデオを事前にアップして生徒が授業前に視聴できます。

これまで授業で最も多くの時間を欠けていた日本語訳と解説は授業前に済ませているようです。

授業内はオールイングリッシュで行い、発音の練習や、リスニングとして英簿のビデオを視聴する時間を多く取っています。

反転授業を行ったことによって、1年間かけて終わらせていた教科書の範囲を約半年で終わらせることができています。

数学の授業では、反転授業の手法を取り入れたことによって、授業内で「ジグソー法」という学習形態を取り入れるなど演習の時間をより多く取ることができているそうです。

自分がきちんと説明できなければ班の他の3人に迷惑をかけてしまうため、みんな真剣に問題に取り組みます。

このようにジグソー法という学習形態は非常に効果的ではありますが、演習に多くの時間を使うためこれまでの詰め詰めの学習計画だと実践が難しいとされていました。

反転授業を取り入れたことによってこのような授業が実践しやすくなったそうです。

ジグソー法とは:クラス内の生徒を4つのグループABCDに分けた場合、各グループに異なる問題ABCDを与えます。各グループはその問題の解答を考え、他の人にも説明できるまで理解します。その後、グループを解体し、ABCDの各グループにいた4人を混ぜ合わせた班を再度作ります。この班には、それぞれ異なる問題を解いた生徒がいるため、それぞれ自分が解いてきた問題の解法を他の3人に説明します。

参考:教育家庭新聞「”反転授業”で学習課題を解決する」2013年10月7日

社会人教育:elearningを活用し経営者育成

関西大学は、平成26年度の文部科学省の「高度 人材養成のための社会人学び直し大学院プログラ ム」の委託事業として、「海外子会社の経営を担う 人材を養成する大学院教育プログラム」の開発と試行を行っています。

これは、海外子会社の経営を担える人材を養成するために、経営者として必要な知識や技術を身に着けることを目的にした約半年間の教育プログラムを対象にしています。

受講者は対面授業の前までに共有されたビデオを視聴し、授業担当者から出された課題に対して知識や考えを整理して授業に望みます。

対面授業では他の参加者との交流を通して思考の深まりを目指します。

効果

プログラム終了後のアンケートによると、反転授業は理解の深まり、学習意欲の向上につながったという意見が多数寄せられたとされています。

事前学習によって自分の考えを整理し、どこが分からないのかを明確にすることで

  • 理解の深まりにつながった
  • 受講者同士で協働学習をすることによって新たな発見があった
  • 自分の具体的な業務場面を想定して主体的に学ぶことができた

などといった意見がありました。

参考:西尾三津子(2016)「社会人教育における反転授業を取り入れた授業デザイン-学び直し大学院教育プログラムの形成期での試行を事例として‐」『関西大学高等教育研究』第7号、129-134頁

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反転授業の課題

このように注目を集めている反転授業ですが、日本は諸外国に比べると導入が進んでいないと言われています。

日本が反転授業を導入する上で、

  • 学習環境の整備
  • 指導者側のサポート体制

の2点が課題となっています。以下で詳しく説明します。

学習環境の整備(時間・IT環境・教材等)

反転授業を普及させるには、学習環境の整備が必須です。

反転授業のデメリットでも指摘したように、反転授業には生徒が自身で授業外の学習時間を確保する必要があります。

しかし、学習習慣が身についていない生徒や、家庭環境が恵まれていない生徒にとっては大きな負担となりかねません。

予習せずに授業に臨むとその内容が理解できず、学習が遅れることになってしまいます。

さらに、学校・家庭ともにインターネット回線の整備や、タブレットなど情報端末を生徒の人数分確保するといった外部環境の整備が必要不可欠です。

日本は諸外国に比べて教育のIT化が遅れていることがこのような反転授業の導入の大きな足かせとなっています。

指導者側のサポート体制

反転授業を進めるために、指導者である教師へのサポートはとても重要です。

反転授業ではこれまでの教師の立場や求められる力が異なるためです。

教師は反転授業になると、授業中は黒板を使って講義をするのではなく、生徒の演習の補助やディスカッションの進行補助の役割が求められます。

生徒の習熟度の把握や、生徒が演習を進める上で適切なアドバイスをする力が求められます。

さらに生徒が事前に予習してくるオンライン教材の作成も教師にとっては大きな負担になります。

特にデジタル機器に慣れていない教師にとっては適切なサポートが必須です。

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まとめ

  • 反転授業とはインプットとアウトプットの場を「反転」させる授業形式
  • 反転授業はブレンド型学習と呼ばれる教育方法のひとつ
  • 反転授業の課題は、学習環境の整備と指導者へのサポート体制の構築

日本では、反転授業の導入は諸外国に比べるとまだまだ進んでいないといえます。

しかし、コロナによって教育のオンライン化が急速に増える中で、学校教育・社会人教育での活用も今後進んでいくと予想されます。

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