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2019-02-01 2019-12-09

シティズンシップ教育とは?海外での事例、日本国内での今後の可能性を解説

この記事では、シティズンシップ教育についてまとめています。

シティズンシップ教育とは何か、他教育とシティズンシップ教育の違い、海外での事例、日本での事例、シティズンシップ教育の今後の動向を説明します。

シティズンシップ教育とは

「シティズンシップ教育」は、市民として必要な要素を備え、市民としての役割を果たせるようになることを目指す教育のことです。
「シティズンシップ」は、市民であることや市民としての権利のことを意味します。

文部科学省「子どもの徳育に関する懇談会(第5回)議事要旨

シティズンシップという言葉は、もともとは国籍や市民権という言葉があったが、そこに参加的な市民という意味が加わって、ブレア政権下の「市民性教育に関する委員会(クリック委員会)」により定義されたものである。その教育内容としては、社会的・道徳的責任、コミュニティへの関与、政治的リテラシーの3つで構成され、後にアイデンティティと多様性が加わった。

シティズンシップ教育の背景

文部科学省の教育課程部会教育課程企画特別部会は、「高等学校における教科・科目の現状・課題と今後の在り方について(検討素案)」のなかで、高等学校の公民教育に関する現状について、次のように述べています。

・積極的に社会参加する意欲が国際的にみて低い
自分の力で世の中を変えられると考えている若者が、諸外国に比べて少ない。衆議院選挙の投票率では、20代の投票率は60代の半分以下。

・理念や概念の理解、情報活用能力が十分身についていない
政治や経済、現代社会の諸課題について、基礎的な理念や概念を問う問題への正答率が低い。特に記述式の問題の無答率が高い。
先哲の基本的な考え方を手掛かりとして自分自身の考え方や自分の体験と関連付けて自己の生きる課題として考えさせるような問題の正答率が低い。
有用な情報を主体的に選択して活用したり、課題を考察した過程や結果を様々な方法で適切に表現したりする力が十分に身に付いていない。

・政治や経済の仕組み、働く意義等を学ぶことへの関心は高い
政治・経済についての学習が大事だと思っている生徒の割合は国語や外国語に次いで高い。
若年層の就労者の多くは、働く上での権利・義務や働くことの意義を学校教育でもっと学ぶことが大切だと考えている(連合の意識調査)

こういった現状から、政治や経済を学び、市民性を育むシティズンシップ教育が注目されるようになりました。

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シティズンシップ教育の目的

シティズンシップ教育の目的は、社会の中で円滑な人間関係を維持するのに必要な能力を身に着けることです。

シティズンシップ教育は様々な分野で効果を上げると考えられています。

例えば、地域の活動への参加などの社会・文化分野、選挙への関心や政治リテラシーの向上などの政治分野、生産や消費、生活行動の変化などの経済分野での効果が挙げられます。

シティズンシップ教育とその他の教育のちがい

主催者教育とシティズンシップ教育

文部科学省は「主権者教育の推進に関する検討チーム中間まとめ(平成28年3月31日)」のなかで、主催者教育の目的を以下としています。

単に政治の仕組みについて必要な知識を取得させるのみならず、主権者として社会の中で自立し、他社と連携・協働しながら、社会を生き抜く力や地域の課題解決を社会の構成員の一員として主体的に担う力を発達段階に応じて、身に着けさせる

主催者教育とシティズンシップ教育は、ほぼ同義で扱われています。

キャリア教育とシティズンシップ教育

文部科学省は、中学校キャリア教育の手引き「第1節キャリア教育の必要性と意義」で、キャリア教育を以下と定義しています。

一人一人の社会的・職業的自立に向け,必要な基盤となる能力や態度を育てることを通して, キャリア発達を促す教育

キャリア教育とシティズンシップ教育の違いは、社会や政治との関わりを中心に置くか(シティズンシップ教育)、自分のキャリアを中心に置くか(キャリア教育)であると言えます。

道徳とシティズンシップ教育

文部科学省は、「道徳教育について」、以下と定義しています。

児童生徒が人間としての在り方を自覚し,人生をよりよく生きるために,その基盤となる道徳性を育成しようとするもの

シティズンシップ教育が「市民」としての能力を育成するものであるのに対し、道徳教育は「人間」としての基盤を育成する、という違いがあります。

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シティズンシップ教育の先駆け、イギリスとアメリカのシティズンシップ教育実践例

イギリス

イギリスでは、1997年頃からシティズンシップ教育が全国共通カリキュラムに取り入れられました。

当時のブレア政権は、問題となっていた、若者の政治への関心・投票率の低さの改善を目標とし、シティズンシップ教育を導入しました。

現在の英国のシティズンシップ教育の特徴は、社会の仕組みを学ぶだけなく、実際の社会参加のためのスキルや考え方も一緒に学ぶことです。

サークルタイム

サークルタイムは、授業として、みなが輪になって行う、参加・参画型の活動です。自分の意見を表明する能力などを育みます。

Preston Monor高校

Preston Monor高校は、シティズンシップの授業で「犯罪と法遵守の意識」について扱っています。社会への帰属意識、社会を認識する力を身につけることを目的としています。

Association for Citizenship Teaching

Association for Citizenship Teachingは、シティズンシップ教育を実践する教師の支援をする団体です。指導案作成、イベント、モデルとなる実践事例の普及、研修情報など シティズンシップ教育の実践を支援するための情報提供と研修の実施を行っています。

アメリカ

アメリカでは、1990年代以降、若者の政治関心に低さをきっかけに、シティズンシップ教育が求められるようになりました。具体的な取り組みは州・学校に委ねられていますが、各州政府・学校・民間団体が協力してシティズンシップ教育を推進しています。

Avalon高校

Avalon高校は、学校憲法と生徒議会を導入し、生徒の政治参画の意識や市民性の育成を実践しています。またほぼすべての授業はプロジェクトベース学習になっていて、そのプロジェクトも生徒が立案することになっています。

St.Barnard School

St.Barnard Schoolは、公民の授業にPA(パブリックアチーブメント)を導入しています。
パブリックアチーブメントとは、問題解決型のプロジェクトによる市民教育であり、子供たちに社会問題への取り組み方や解決法を考えさせています。新しい安全な公園の設置や車の速度制限の実施など、生徒の意見をもとに導入された取り組みも存在します。

ミネソタ大学(The University of Minnesota)

ミネソタ大学は、学生をコーチとして他の学校へ派遣し、パブリックアチーブメントを支援しています。

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海外のその他の国のシティズンシップ教育実践例

シティズンシップ教育はイギリス、アメリカが先駆けとされていますが、現在ではその他の国でもシティズンシップ教育に取り組んでいます。ここでは、フランス、ドイツ、オランダ、スウェーデン、オーストラリア、シンガポールのシティズンシップ教育の取り組みを紹介します。

フランス

フランスでは、1990年頃より移民が増加し、民族・文化・価値観の多様化が起こり、共和国としての価値が揺らいでいました。そのような変化に対応し、共和国の価値を身に着けた市民を育成するため、シティズンシップ教育の概念が導入されています。

フランス政府は「ESPE」と呼ばれる教員養成用の大学を新たに作り、生徒の学習をよりサポートすることができるよう、教員の教育を始めました。

また、政府は市民性と道徳性を高めるための教育カリキュラム改革にも着手しています。このカリキュラムは、生徒に生活・社会生活の中で、自らの責任の認識を深めてもらうことを目指しています。

ドイツ

ドイツでは、シティズンシップ教育は「政治教育」とも呼ばれています。民主主義社会の市民として必要な能力を、政治的判断能力・政治的行為能力・方法的能力としており、これらを育むために、シティズンシップ教育を取り入れています。

学校では、「政治」「歴史・政治」「労働」「社会科学」「ゲゼルシャフツレーレ」などの科目があります。また、バーデン=ヴュルテンベルク州政治教育センターを各州に設置しています。ここでは、政治に関する情報提供やイベントを開催しています。

オランダ

オランダでは、2006年にシティズンシップ教育が義務教育化されています。具体的には、「フレーデザームスホール・プログラム」を行っています。

このプログラムは生徒に、対立の解消、民主的な意思決定の仕方、多様性の受容などを学ばせることを目的としています。

全38回の生徒参加型の授業を行い、クラスづくりや対立解消、コミュニケーションについて学びます。上級生は指導を受け、校内の生徒間で起こる対立を解消するための役割を担います。

スウェーデン

スウェーデンでは、青少年の声を社会に反映させる取り組みや環境があります。住民と地方自治体(コミューン)の関係が密接であり、若者を積極的に地域社会に参加させる取り組みが進んでいます。

ストックホルム南方のヨンショーピン・コミューンでは、「青少年行動計画」を青少年の声をもとに作成し、都市再開発計画への参加など、街づくりに子供たちを参画させる取り組みを行っています。

オーストラリア

オーストラリアでは、若者の政治的無関心を危惧し、「見識ある市民」の育成を目標として取り組みを開始しました。

1999年に「デモクラシーの発見」プログラムが公教育に導入されました。オーストラリアの歴史や政治についての知識を身に着けることを目的としています。

ビクトリア州では、「学校州議会」を行っています。「学校州議会」は、州内から選ばれた高校生が、年ごとに決められたテーマで議論する取り組みです。

シンガポール

シンガポール政府は、シティズンシップ教育として、「Character and Citizenship Education(CCE)」を置いています。CCEを通して、生徒は核となる価値観、社会的な能力、シティズンシップに関連するスキルを身に着けることを目指します。

シラバスは、生徒中心の学習であること、人格教育と市民教育のバランスの取れたものであること、自己から世界に領域を広げるものであることなどが挙げられています。

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日本でのシティズンシップ教育実践例は?

日本でシティズンシップ教育に取り組んでいる事例をいくつか紹介します。

小中学校では、シティズンシップ教育をプログラムに取り入れる学校が増えてきています。大学では、シティズンシップ教育の研究を行う学科・研究会が設立されています。また、地域全体でシティズンシップ教育に取り組んでいる地域もあります。

教育機関での取り組み

お茶の水女子大学付属小中学校

お茶の水女子大学付属小中学校では、「協働して学びを生み出す子ども」というテーマで教育を行っています。

1つの教科でシティズンシップを身に着けることはできないと考え、社会科、国語、音楽、体育などの各教科で取り組んでいます。「市民」の授業では、「自らの考えを出力する力」に重点を置いています。

例えば、起業するためのビジネスプランの作成と発表を行います。立地や諸条件を意識した起業プランを作成し、発表までを行っています。

立教池袋中学校・高等学校

立教池袋中学校・高等学校では、高校1年生の6月初旬に市民性学習の授業を実施しています。市民性の土台となるコミュニケーション力、相互理解力を育むことを目的としています。

5日間のプログラムで、コミュニケーショントレーニング、社会の課題解決についてのグループワーク、ヒアリング調査、プレゼンテーション、その他大学の先生による講義などを行います。

東村山市立秋津東小学校

東村山市立秋津東小学校では、全教科の連携により「進んで学ぶ子の育成」を目指しています。

例えば、テーマ「日本と関係の深い国々」として、社会科の授業を行っています。知識をつけることだけでなく、わかりやすく伝える能力を育むことを目指しています。そのため、学習後にグループで話し合い、考えをまとめる時間を設けています。

上尾市立東中学校

上尾市立東中学校では、グローバル化に対応する力を身につけ、持続可能な社会づくりの担い手を育成するため、「グローバルシティズンシップ科」を設置しました。グローバル社会に対応した資質と能力を育成するシティズンシップ教育を行っています。

八幡市教育委員会

八幡市では、「豊かな市民力」と「しなやかな身体力」の育成を目指して、「やわた市民の時間」を新設しました。小・中9年間の系統的なコアプログラムと、教科を横断的に関連させたサブプログラムを通して、市民意識の育成に取り組んでいます。

地域での取り組み

神奈川県

神奈川県は、全県立高校で、公民科、家庭科、総合的な学習の時間、特別活動の時間などを使いシティズンシップ教育を実施しています。また、神奈川県立総合センターが、教育の総合的な指針となる「かながわ教育ビジョン」を策定しています。

「かながわ教育ビジョン」の重点課題の一つである「キャリア教育の推進」の取り組みの一環として、シティズンシップ教育を取り入れています。神奈川県の教育委員会は8つの県立高校を「シチズンシップ教育実践研究校」として実践的な取り組みを進めています。

品川区

品川区では、教養豊かで品格のある人間を育てることを目指し、小学校1~9学年(小中高生)を対象に「市民科」を設置しました。

児童・生徒一人一人が自らの在り方や生き方を自覚し、生きる筋道を見付けながら自らの人生観を構築するための基礎となる資質や能力を育みます。

愛知県

愛知県では、小学生から高校生までを対象に、選挙に関する話や模擬選挙を通して選挙の重要性を認識する「選挙出前トーク」や、市議会へ質問や提案をする「子ども議会」などの取り組みが行われています。

法人、企業の取り組み

NPO法人金融知力普及協会

NPO法人金融知力普及協会は、自立した消費者となり、生活者としてお金とどう向き合うかを考えることを目的に、金融知力教育を行っています。自分と生活・仕事のかかわりの理解、地域の仕事調べ、モノづくり・販売体験などのカリキュラムを提供しています。

シティズンシップ教育推進ネット

シティズンシップ教育推進ネットは、中学・高校生を対象とし、まちづくりワークショップを行っています。社会・経済、政治の各分野を理解し、それらに働きかける力を身につけさせることを目的としています。

NPO法人Rights

NPO法人Rightsは、未成年を対象に模擬選挙を行い、結果を一般やマスコミ、各団体に公表しています。模擬選挙の目的は、民主主義の体感や有権者の育成、投票率のアップなどにあります。

株式会社ウィル・シード

ウィル・シードは、若年層向け教育支援事業YOUTH PROJECTとして、オリジナル体験型プログラム「いきいきゲーム」を提供しています。

いきいきゲームは、会場を1つの世界とみたて、国(チーム)に分かれて行う対抗ゲームです。不平等な条件設定と、予想外の状況変化で、柔軟な対応力とあきらめない精神力を育むことを目指しています。

特定非営利活動法人 ドットジェイピー

特定非営利活動法人ドットジェイピーでは、主に大学生向けのインターンシップを行っています。

インターンシップを通じて実体験に基づく社会を体験し「社会学習」をしてもらうため、「議員インターンシップ・コーディネート事業」を行っています。若者が参加しやすい仕組みを通して若者と政治を結ぶことを目的としています。

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日本におけるシティズンシップ教育の今後の可能性は?

現状の日本の公民科の教育では、政治や経済の仕組みを学習することにとどまっているという問題があります。また、学んだ知識が、実際に社会で有効なものであるのか、検証をしていく必要もあります。

さらに、18歳選挙権の導入などの社会の変化により、教育の改善が求められています。

こういった状況下で、内閣府は各省庁と連携しながら、シティズンシップ教育を推進していくと宣言しました。

内閣府「平成25年版 子ども・若者白書

社会の一員として自立し,権利と義務の行使により,社会に積極的に関わろうとする態度を身に付けるため,社会形成・社会参加に関する教育(シティズンシップ教育)を推進することが必要である。

こういったことから、日本において、シティズンシップ教育の取り組みは活発化していくと考えられます。

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