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2024-05-30 2025-12-25

教員勤務実態調査から見る、教員の勤務時間・残業について

日本の教員は長時間労働が常態化しており、その負担が深刻な問題となっています。

授業だけでなく部活動指導や事務作業など、多岐にわたる業務が勤務時間を延ばす要因です。

本記事では、文部科学省の教員勤務実態調査を元に、教員の勤務時間・残業時間について見ていきます。

この記事の監修者

網屋亮介

教員のキャリア支援に特に強みを持つキャリアアドバイザー。年間で数百名の教員とのキャリア面談を実施。学校法人や教育系の事業会社へ多数の転職支援の実績を持つ。教員特有のレジュメ作成、選考対策など教員の転職支援に強み。前職は旅行代理店、教員家系に育ち、2児の父。

教員実務実態調査から見る、教員の勤務時間

教員実務実態調査とは、教師の勤務実態や働き方改革の進捗状況等を把握・分析することを目的として文部科学省が実施する調査です。

本調査では、「在校等時間」と「持ち帰り時間」という区分が用いられています。「在校等時間」は、学校において業務に取り組んでいる時間、「持ち帰り時間」は、出勤時刻から退勤時刻までのいわゆる定時を除いた時間帯で業務に取り組んでいる時間を指します。

平日の在校等時間

本調査によると、令和4年度の教員の在校等時間は、平成28年度と比べて減少傾向にあります。

土日の在校等時間

令和4年度の土日の在校等時間も、平成28年度と比べて減少傾向にあります。

持ち帰り時間

平成28年度と比較して、持ち帰り時間は小学校と中学校ともに微増しています。ただし、土日の持ち帰り時間についてはいずれも減少しています。

学級担任の在校等時間

学級担任を受け持つ教諭の在校等時間は、担当する学年が上がるほど長くなる傾向にあります。

学校種別 在校等時間
小学校1年 10:54
小学校2年 10:48
小学校3年 10:51
小学校4年 10:54
小学校5年 11:03
小学校6年 11:11
中学校1年 11:13
中学校2年 11:18
中学校3年 11:26

教員の残業時間について

教員の残業時間は非常に長いことが指摘されています。特に、時間外労働の管理が不十分なことが問題視されており、月80時間を超える「過労死ライン」を超える教員も少なくありません。

この長時間労働の背景には、以下のような要因があります。

  • 業務の多様化:教員の業務が増加している。
  • 人員不足:教員不足が深刻化しており、既存の教員に業務負担が集中。
  • 部活動指導の負担:休日や放課後の部活動指導が、長時間労働の一因となっている。
  • 保護者対応や校務作業の増加:家庭との連携が重視される一方で、教員の負担が大きくなっている。

また、文部科学省が定める給特法により、教員の給与には残業代が含まれていないため、時間外労働の抑制が難しいという問題もあります。実際には、多くの教員が自発的なサービス残業を行っており、これが長時間労働を常態化させる要因の一つとなっています。

近年では、働き方改革の一環として定時退勤日の設定や、ICTを活用した業務負担の軽減策が進められていますが、現場の実態としては十分に機能していない場合も多く、抜本的な改革が求められています。

教員の勤務時間の他国との比較

日本の教員の勤務時間は、他国と比べても異常に長いことが指摘されています。

OECD(経済協力開発機構)の「TALIS(国際教員指導環境調査)」によると、日本の教員は授業以外の業務に費やす時間が非常に多く、事務作業や部活動指導に多くの時間を割いていることが特徴です。

  • フィンランドの教員:平均7〜8時間/日
  • アメリカの教員:平均8時間/日
  • 日本の教員:平均11〜12時間/日

日本の教員は授業以外の業務が多く、それが長時間労働の一因となっています。

教員の長時間労働が引き起こす問題

教員の長時間労働は、さまざまな問題を引き起こします。特に以下の点が深刻です。

  • 健康リスク(過労・メンタルヘルス):過労による精神疾患や体調不良の増加。過重労働が続くと、うつ病や不眠症、心筋梗塞などのリスクが高まります。
  • 仕事の質の低下と教育への影響:疲労による授業の質の低下が懸念される。十分な授業準備ができないことで、生徒の学力向上に影響を与える可能性があります。
  • 教員不足の悪循環:長時間労働が原因で離職する教員が増え、結果として残る教員の負担がさらに増加。新規採用が進まず、教員のなり手が減少する可能性があります。
  • 家庭やプライベートの犠牲:教員自身の家庭生活やプライベートの時間が削られ、ワークライフバランスの崩壊を引き起こす可能性があります。
  • 学校全体の運営への影響:過労による教員の欠勤が増えることで、学校全体の運営が困難になるケースもあります。

これらの問題を解決するためには、労働時間の管理強化や、業務の適正化、人的リソースの確保など、多方面からのアプローチが必要です。

教員の勤務時間削減に向けた取り組みと課題

教員の長時間労働を是正するために、政府や自治体、学校現場ではさまざまな施策が講じられています。しかし、その実効性には課題も多く、現場の負担軽減には十分とは言えない状況が続いています。

教員の業務負担軽減策

業務負担の削減には、ICT(情報通信技術)の活用が不可欠です。たとえば、授業準備においてはデジタル教材や電子黒板の活用、オンラインでの教材共有などが進められています。また、成績処理についてもクラウドシステムを導入し、従来の紙ベースの管理からデジタル化を進めることで、業務時間を短縮する試みが行われています。

部活動指導に関しては、教員が指導するのではなく、外部指導者を活用する部活動の地域移行が推進されています。これにより、休日や放課後の指導負担が軽減され、教員が本来の教育業務に集中できる環境の整備が進められています。

文部科学省の政策と現場の課題

文部科学省は、教員の働き方改革の一環として定時退勤日の設定を推奨しています。しかし、多くの学校では行事や部活動、保護者対応などにより、実際には定時退勤が難しい状況が続いています。また、教員の人員不足を解消するために採用枠を拡大する動きもありますが、給与や労働環境の厳しさから教職を希望する若者が減少しており、採用数の増加だけでは抜本的な解決にはつながっていません。

給特法(公立学校の教員の給与等に関する法律)の改正も議論されています。現在の給特法では、労働時間の削減に対するインセンティブが働きにくい状況です。このため、時間外労働の適正管理を可能にする法改正の必要性が指摘されています。

海外の成功事例から学ぶ働き方改革

海外の事例を参考にすることで、日本の教員の長時間労働を削減するヒントを得ることができます。

フィンランドでは、教員の労働時間管理が厳格に行われており、授業外の業務は最小限に抑えられています。また、アメリカでは部活動指導を外部コーチが担当するのが一般的で、教員が課外活動に時間を割くことがほとんどありません。

これらの国では、教員が授業準備や指導に専念できる環境が整えられており、日本の教育現場でもこうした制度を参考にすることで、業務負担の軽減につなげることができるでしょう。

今後の展望と求められる取り組み

今後、日本の教育現場では、以下のような取り組みが求められます。

  1. 教員の職務範囲の明確化
    • 教員の業務範囲を明確にし、不要な業務を削減することで、労働時間の適正化を図る。
  2. 学校と地域・保護者の協力強化
    • 学校外の専門家やボランティアと連携し、教員の負担を軽減する体制を整える。
  3. 長時間労働の是正に向けた新たな方策
    • 給特法の見直し、ICTの更なる活用、人的リソースの強化など、包括的な労働環境改革を進める。

これらの施策を実行することで、教員の勤務時間短縮が実現し、より持続可能な教育環境の構築につながると考えられます。

まとめ

教員の長時間労働は教育の質の低下や健康リスクを引き起こし、持続可能な働き方の実現が求められています。

ICT活用や部活動の地域移行などの対策が進められていますが、課題も多く残されています。

今後は法改正や職務範囲の見直しを通じて、持続可能な教育環境を整備することが求められます。

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