2019-10-18 2023-12-12
教師・教員の働き方改革!学校はどう変わる?背景や方向性を解説
朝7時頃登校し、授業を行い、休み時間は生徒指導、放課後は部活動や翌日の授業準備、職員会議に追われ、学校を出るのは夜8時過ぎ・・・
こうした働き方をされている教員の方も多くいるのではないかと思います。
しかし、世界に目を向けると、ここまで長く学校教員が勤務しているのは日本だけであることが国際調査によって明らかになりました。
現在、国主導の「学校における働き方改革」が推進されています。この記事では、教員の働き方改革について実態となるデータを挙げ、方向性やスケジュールを説明します。
この記事の監修者
Education Career 編集部
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教師・教員の働き方改革が進められる背景

現在、学校を取り巻く環境は大きく変化しています。
外国にルーツを持つ子どもの増加、障害をもつ子どものインクルーシブな教育など、学校が対応すべき課題は近年多様化・複雑化しています。
さらに、グローバル化の進展やインターネットの普及などによる社会構造の変化は、教育の在り方の見直し・改革の必要性を浮き彫りにしました。
これまで知識の習得が重視された教育から、知識を応用する力を育成する重要性が指摘され始め、アクティブラーニングやICTを使った指導法への転換が現場の教師には求められるようになりました。
今までの古い指導法から抜け出し、現代の社会に則した新しい教育方法を教員は模索しなければならないのです。
しかし、この状況下において日本の教師の見過ごせない勤務実態が明らかになりました。
教員の勤務時間はこの10年で増加しており、2018年のOECDの調査では参加国中最長となりました。
学校には様々な新しい課題への対応が求められる中、教育の質を維持するためには教員の働き方改革が必要だという認識が強くなっています。
学校における働き方改革の考え方
国が主導する「学校における働き方改革」の基本的な考え方は、教師の日々の業務の在り方を見直すことで教師自身の生活の質を改善し、それが児童生徒にとっても最適な指導へとつながっていくというものです。
そのうえで、何が教師の長時間勤務の実態を引き起こしているのかという点に対して様々な議論が重ねられ、検討の視点として
- 学校及び教師が担う業務の明確化・適正化
- 学校の組織運営体制の在り方の見直し
- 勤務時間の在り方に関する意識改革と制度面の検討
- 学校種や学校の設置者の違いを踏まえた働き方改革
などが挙げられています。
公立小中学校の教員の勤務実態

日本の公立小中学校の教員はどれぐらい働いているか、データを使って説明します。
文部科学省が平成28年度に実施した調査によると、教師の1週間あたりの学内総勤務時間は平成18年度調査と比較して小学校、中学校ともに増加しています。
教師の1週間当たりの学内総勤務時間(小学校)
| 28年度 | 18年度 | 増減 | |
| 校長 | 54時間59分 | 52時間19分 | +2時間40分 |
| 副校長・教頭 | 63時間34分 | 59時間5分 | +4時間29分 |
| 教諭 | 57時間25分 | 53時間16分 | +4時間9分 |
| 講師 | 55時間18分 | 52時間59分 | +2時間19分 |
| 養護教諭 | 51時間3分 | 48時間24分 | +2時間39分 |
文部科学省「教員勤務実態調査(平成28年度)の分析結果および確定値の公表について」(平成30年9月27日)より作成
小学校教師は、前回調査と比べて2時間~4時間ほど勤務時間が長くなっています。特に副校長・教頭、教諭の勤務時間の増加が顕著です。
教師の1時間当たりの学内総勤務時間(中学校)
| 28年度 | 18年度 | 増減 | |
| 校長 | 55時間57分 | 53時間23分 | +2時間34分 |
| 副校長・教頭 | 63時間36分 | 61時間9分 | +2時間27分 |
| 教諭 | 63時間18分 | 58時間6分 | +5時間12分 |
| 講師 | 61時間43分 | 58時間10分 | +3時間33分 |
| 養護教諭 | 52時間42分 | 50時間43分 | +1時間59分 |
文部科学省「教員勤務実態調査(平成28年度)の分析結果および確定値の公表について」(平成30年9月27日)より作成
中学校教師は、どの職階でも小学校教師と比べて勤務時間が長くなっています。
また、前回調査と比べても約2時間~5時間勤務時間が増加しています。最も勤務時間が伸びているのが教諭で、5時間以上長くなっています。
世界に目を向けると、日本の教員の勤務時間の長さが浮き彫りになります。
OECDが2019年6月に公表した国際教員指導環境調査(TALIS2018)によると、教員の1週間の仕事時間の国際平均は38.3時間であり、日本の小学校54.4時間、中学校56.0時間は調査に参加した48か国・地域の中で最も長いことがわかりました(文部科学省「我が国の教員の現状と課題―TALIS2018結果より―」)。
この結果から日本の教員の勤務時間の長さは世界的にも著しく、何らかの対応が必要であるという認識が広まりました。
学校の働き方改革の方向性

日本の教員の勤務時間が長くなる要因として、日本の学校や教師が諸外国と比べて広い役割を担っているということが挙げられます。
例えば給食指導や清掃指導などは外国の学校ではあまり見られない指導ですが、日本の多くの小中学校で導入されています。
日本の学校は学習指導以外の人格的、道徳的指導を重視する傾向があります。
この「日本型学校教育」は子どもの人格的成長に大きな役割を果たしているとして国際的にも高く評価されていますが、一方で教師の負担を増やし長時間勤務を引き起こしていると言えるのです。
こうした状況を踏まえ、学校の働き方改革においては、教師に心身の健康を損なうような無理な負担を強いることのないよう業務を見直したうえで、限られた時間の中で児童生徒に接する時間を十分に確保し、適切な指導を行っていくことを目指しています。
そのためには、これまで学校が果たしてきた役割を教師以外の職員や学校外の機関に委ねることで、教員の負担は軽減され、生徒への適切な指導も持続できるとしています。
その結果、学校の働き方改革の方向性として以下の4つの視点、
- 学校及び教師が担う業務の明確化/適正化
- 学校の組織運営体制の在り方の見直し
- 勤務時間の在り方に関する意識改革と制度面の検討
- 学校種や学校の設置者の違いを踏まえた働き方改革
が挙げられました。それぞれについて、以下で詳しく見ていきます。
学校・教師が担う業務の明確化/適正化
現在日本の小中学校は広範な役割、業務を担っています。
どこまでが学校や教師の役割なのか曖昧な業務や、半ば慣習的に行われている業務もあると言われています。
中央教育審議会では、学校や教師が担っている業務を一度見直した上で、学校・教師以外にも任せられるものについてはその環境整備を積極的に検討すべきであるとの提言が出されました。
参考:中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」平成29年12月22日
特に、これまで授業以外で学校・教師が担ってきた代表的な14の業務に関しては
- 「基本的に学校以外が担うべき業務」
- 「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」
- 「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」
の3つに分類され、
- 「基本的に学校以外が担うべき業務」
- 登下校に関する対応
- 放課後から夜間などの見回り、児童生徒が補導されたときの対応
- 学校徴収金の徴収・管理
- 地域ボランティアとの連絡調整
- 「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」
- 調査・統計等への回答→事務職員が対応可
- 休み時間における対応
- 校内清掃→地域ボランティア等が対応可
- 部活動→部活動指導員が対応可
- 「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」
- 給食時の対応→学級担任と栄養教諭との連携等
- 授業準備
- 学習評価や成績処理→補助的業務へのサポートスタッフ参画
- 学校行事の準備・運営→事務職員との連携、外部委託等
- 進路指導→事務職員や外部人災との連携
- 支援が必要が児童生徒・家庭への対応→専門スタッフとの連携
という考え方が示されています。
参考:中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(中間まとめ)」平成29年12月22日
上記に挙げられた14の業務以外にも各学校や地域によって様々な業務が発生することが考えられますが、
- 教師が専門性を発揮できる業務か否か
- 児童生徒の生命・安全に関わる業務か否か
といった観点から、可能なものは業務の担い手を学校・教師以外に移行していくことが求められています。
この動きを促進するために国、教育委員会、各学校がそれぞれ取り組むべき方策についても取りまとめました。
国は「学校と地域・保護者の連携を促すための資料提供」「業務改善の取り組みの優良事例の提供」など、教育委員会等は「所轄する学校への業務改善方針計画の策定」「事務職員の資質・能力・意欲向上」、各学校は「関係機関や地域住民との連携の促進」といった方策を行うべきとされています。
学校の組織運営体制のあり方
学校における働き方改革を進めるにあたり、学校の組織体制を見直し長時間勤務を是正していくことも必要です。
校長を中心とした管理職がリーダーシップを持って学校組織マネジメントをしていくのは必要不可欠です。
一方で、教員勤務実態調査では管理職である副校長・教頭の勤務時間の長さが指摘されているため、全て管理職まかせにするのではなく学校全体で組織改善に取り組むことも同時に重要であるとされています。
具体的には、似た内容を扱う委員会の統合や構成員の統一を図り(例えば学校保健委員会と学校安全委員会の統合など)、会議の回数を削減するなど業務の効率化を進める必要性が指摘されています。
その際に勤務年数が長く経験豊富な主幹教諭や指導教諭クラスの教諭が、自らの専門性を発揮できるように、役割分担や連携づくりといった環境整備をしていくことも重要だとされています。
単に持ち回りで組織運営を分掌するのではなく、教員を適材適所に配置していく考え方への転換が重要だと言われています。
その他にも、事務職員の校務運営への参画の推進や、専門人材や保護者、地域ボランティアといった外部人材を積極的に活用し「チームとしての学校」体制を確立していくことの必要性も指摘されています。
「チームとしての学校」を実現していくためには、様々な主体と連携し人材を確保することが必要となってくるため、校長のマネジメントや人材を確保するための教育委員会の役割の大きさが指摘されています。
参考:中央教育審議会「新しい時代の教育に向けた持続可能な学校指導・運営体制の構築のための学校における働き方改革に関する総合的な方策について(答申)」平成31年1月25日
勤務時間に関する意識改革と制度面の検討
勤務時間管理は、労働法制上校長や教育委員会に求められる責務であることが改めて明確になり、自己申告方式ではなく、ICTやタイムカード等を使った勤務時間把握の徹底が指摘されています。
ただ、あくまでも勤務時間管理は働き方改革の手段であり目的ではないことが強調され、真に必要な教育活動がおろそかになったり虚偽の記録が残ることはあってはならないこととされています。
具体的な取り組みとしては、中央教育審議会の答申では適正な勤務時間の設定を行うために、以下の「超勤4項目」
- 生徒の実習
- 学校行事
- 職員会議
- 非常災害、児童生徒の緊急事態など
以外の業務に関しては校長は時間外勤務を命じることができないことが明記されています。
例えば、早朝の登校指導や夜間の見回りといった仕事を校長は命じることができない、といった内容です。
時間外の保護者からの問合せを減らす工夫や「運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」を踏まえた適切な活動時間・休養日の設定などについても、その重要性が述べられました。
教職員全体の意識改革も必要であるとして、研修や人事評価等を活用して教職員全体のマネジメント能力を高める取り組みや、学校評価と連動した業務改善の点検・評価の必要性ついても指摘されています。
公立学校の教師の勤務時間の上限はどのように定められるか
こうした動きの中で、政府は平成31年1月25日、「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」を打ち出しました。
このガイドラインは残業時間の上限の目安を「月45時間、年間360時間」と定めました。
なお、児童生徒の特別な事情によって勤務せざるを得ない場合にも年間の残業時間が720時間を超えないことや、1か月あたりの残業時間が45時間を超える月は1年間に6か月までといったことも定められました。
このガイドラインには法的な拘束力はなく、あくまでも目安として定められています。
しかし、このガイドラインが実効性を持ち教師の勤務状況が改善されるために教育委員会が勤務時間の上限に関する方針を策定すること、教育委員会・文科省ともにガイドライン内容の周知を保護者や地域住民にも行っていくことなどが求められています。
学校における働き方改革のための環境整備と予算
このように教師の長時間勤務を是正し学校の働き方を改革するためには、今まで学校が担ってきた業務を整理統合し、可能な部分は他に委託する必要が指摘されました。
学校内にも専門的な知識を持つ外部人材を導入し、役割を分担していくことも提案されています。
これらの取り組みを実行するためには、まず人材を確保し環境を整備する必要があります。
そこで、文部科学省は「2019年度の予算(案)主要事項」でこれらの環境整備に関して以下の予算案を提出しました。
新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築:1兆5348億9515万6000円
- 義務教育費国庫負担金:1兆5,200億3,300万円
- 専門スタッフ・外部人材の拡充:134億6,950万4,000円
- スクールカウンセラーの配置拡充:47億3,803万4,000円
- スクールソーシャルワーカーの配置拡充:17億2,166万2,000円
- いじめ防止等対策のためのスクールロイヤー活用に関する調査研究:811万8,000円
- 補修等の指導員派遣事業:55億2,119万4,000円
- 学力向上を目的とした学校教育活動支援:30億7,319万4,000円
- スクールサポートスタッフの配置:14億4,000万円
- 部活動指導員の配置:10億800万円
- 特別支援教育専門家の配置:14億8,049万6,000円
- 学校現場における業務の適正化:1億293万7,000円
2019年度予算案では、「新学習指導要領の円滑な実施と学校における働き方改革のための指導・運営体制の構築」の分野で約1兆5348億円の予算が計上されています。
そのうちの1兆5200億円は義務教育費国庫負担金として支払われる教職員の給料です。
教職員の人手不足を改善するための定数増加による予算もここに含まれています。
学校や教師が行う業務を適正化させるための専門スタッフや外部人材の確保には約134億円ほど予算配分されており、昨年から10億円ほど多く計上されています。
いじめや虐待といった問題に対処するためのスクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、スクールロイヤーといった専門人材の配置が進められています。
退職教員や大学生といった教育分野に知見のある人材を活用したスクールサポートスタッフや部活動指導員の配置も積極的に進められています。
▶教師・教員を辞めた後はどうなる?後悔しないために事前に知っておきたいこと
学校の働き方改革のスケジュール

学校の働き方改革は中央教育審議会を中心に審議が行われており、2017年12月に中間まとめ、2019年1月に最終答申が出されました。
これをもとに、必要な財政措置(学校指導体制の充実やスタッフの配置、モデル事業の章かいなど)は継続される方針です。
勤務時間の上限を定める規則などについては、文科省がガイドラインを2019年1月に決定しており、今後各自治体で上限を設けることの検討を進めています。
業務分担や業務改善については中教審の中間まとめを受け各自治体で取り組みを開始しており、2020年4月にそれらの成果をとりまとめ、必要ならば上記の勤務時間の上限設定に反映していく方針です。
参考:「学校における働き方改革に関する総合的な方策パッケージ工程表」
まとめ
今回はニュースなどでも頻繁に取り上げられる「教員の働き方改革」について取り上げました。
学校は教員の勤務時間削減を目指す一方で、児童生徒に対する十分で適切な教育を保証しなければなりません。
今まで学校が担ってきた役割を学校の中だけに閉じ込めるのではなく、保護者や地域住民、外部の専門家らに開くことで多くの人が「チーム」として協力しながら児童生徒の教育に携わっていく方針が模索されています。
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この記事の監修者
Education Career 編集部
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