2019-05-14 2024-09-06
学童保育とは?浸透した背景、施設や児童数、施設の種類や今後の課題は?
この記事では、学童保育に関する情報をまとめています。学童保育の制度、浸透した背景、運営方法や施設の種類、施設・児童数などを紹介します。
この記事の監修者
Education Career 編集部
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目次
学童保育とは
学童保育とは小学生を放課後や学期間休業中、保護者の代わりに預かって保育サービスを提供する事業を指します。
保護者が日中働いているなどの理由で、放課後に子どもの面倒を見る人がいない家庭が主に利用します。正式名称を「放課後児童健全育成事業」といい、主に厚生労働省が所轄しています。
学童保育は、子どもの安全を守る場であるとともに、学齢期の子どもの健全な育成のための成長支援を行う場でもあります。
一般的な事業内容は、保護者が迎えに来るまで子どもの健康管理や安全確保を行ったり、遊びの場や活動を提供したり、捕食としておやつを提供したり、宿題などの自主学習の場を提供する、といったものが挙げられます。
ただ、学童保育施設には自治体が管轄している公営のものと、民間会社や学校法人が運営している民営のものがあり、運営主体によって提供しているサービスが異なります。
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学童保育が浸透した背景

現代は女性の社会進出が進み、祖父母とは別に住む家庭が増え、地域的なつながりも少なくなりました。
このような変化は、小学生の放課後事情にも大きな影響を与えています。
以前は共働きの世帯が少なく、親が仕事に就いていても大家族で住んでいたため、誰かしら子どもの面倒をみてくれる人がいました。
公園や空き地といった遊び場も多くあり、子どもたちは暗くなるまで近所の友人や兄弟・従兄弟などと自由に遊ぶことができました。地域のつながりも強かったため何かあった場合には近所の大人が対応することができました。
しかし、現在は共働きの世帯が増え、核家族化も進み、兄弟がいない場合には放課後、帰ると家に一人きりです。
近所づきあいも希薄になり、近くに遊び相手になる友達がおらず、何かあったときに対応してくれる大人がいないことも多いです。公園の数も減り、子どもたちの遊び場が減っているとともに凶悪事件の発生から子どもを外で自由に遊ばせることを控える家庭も増えました。
このように小学生の放課後事情が昔と今では様変わりしています。
こういった事情から、放課後の子どもの面倒をみるために小学校入学時に保護者が仕事をやめたり、勤務時間を短くしたりと就労体系を変えるケースが増え、「小1の壁」として社会問題にもなっています。
「仕事と子育ての両立」が国をあげての大きな課題となる中で、子どもの小学校入学後も保護者が安心して勤務できるため、そして児童の安全で健全な育成のため、「学童保育」の需要が高まっていきました。
しかし、需要の高まりに対して受け入れ環境が整っておらず、施設を利用したくてもできない「待機児童」が増えています。
厚生労働省は、2018年9月に発表した「新・放課後子ども総合プラン」の中で、2023年度末までに学童保育で受け入れられる子どもの人数を今より約30万人増やすことを目標としており、民間企業も学童保育事業に積極的に参入しています。
学童保育の施設の種類、運営の形態
運営形態
学童保育施設には、公的機関が設置した(公設)のものと、民間事業者が設置した(民設)のものがあり、運営の形態によって「公設公営」「公設民営」「民設民営」の3種類に分けられます。
「公設公営」
自治体が設置し、直接運営しているものです。
以前はこの事業形態が最も多かったのですが、自治体が人件費を削減するために運営を民間に委託するケースが増え、現在は公設民営の事業形態が最も多くなっています。
「公設民営」
自治体が設置し、運営をNPOや民間企業、父母会(保護者自身によって構成された組織)などに委託しているものです。現在はこの事業形態が最も多くなっています。
「民設民営」
民間企業や学校法人、NPO、父母会あるいは個人が設置し、運営しているものです。行政から運営費補助を受けているものもあります。
学童保育の種類
「放課後児童クラブ」
厚生労働省が管轄しており、児童福祉法によって規定された福祉事業です。
保護者が就労などの理由で子どもの面倒をみることができない家庭が対象で、家庭に代わる生活の場所として健康管理を行い、安全な遊びの場やおやつの提供などを行っています。
実施場所は小学校の余裕教室や児童館、公民館などです。放課後児童支援員の1名以上の配置が義務付けられています。
有料で、自治体によりますが月額5,000円~10,000円程度の利用料がかかります。原則として年間250日以上開所しており、祝日や長期休暇中も利用できます。
「放課後子ども教室」
文部科学省が管轄しており、社会教育事業として行っているため、厳密には「放課後児童健全育成事業(通称学童保育)」には含まれません。すべての小学生を対象とし、安全・安心な子どもの居場所として体験活動やスポーツ、交流活動などを提供しています。
原則小学校の余裕教室を実施場所としています。地域ボランティアや退職教員などがスタッフとして配置されており、利用料はかかりません。
実施形態は断続的・単発的で、年間の開設日数は平均120日程度であり、開設時間も放課後児童クラブよりは短くなっています。
現在は「放課後児童クラブ」と「放課後子ども教室」を一体的に実施する総合的な放課後対策(放課後子どもプラン)も推進されています。
「民間学童保育」
民間企業や学校法人などが行っている事業です。親の就労有無は問わず、年齢制限がないものが多く、利用条件も特にありません。
最近は学習塾や習い事教室、スポーツ教室などの業種が参入しており、様々なプログラムを用意して子どもが希望するものを選択できたり、夜遅くまでの預かりや夕食の提供などサービスが多様化しています。また、公設のものに比べて学習支援に重点を置いている施設が多いです。
職員の配置には特に規定がありませんが、保育士や幼稚園教諭などの資格保持者がスタッフとして雇用されていることが一般的です。利用料金は公設のものよりは高く、月額40,000~60,000円程度かかり、入会金なども別途必要となります。
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学童保育の施設の数、児童の数
放課後児童クラブと登録児童、待機児童の数
2018年5月1日時点では設置施設数は全国で25,328か所、登録児童数は1,234,366人でした。
一方で、学童保育施設を利用できなかった児童数は17,279人でした。いずれの数字も過去最高を記録しています。
現在小学校の数が約2万校で、学童保育施設は小学校数よりも多くなっています。
登録児童数は学年ごとに下記のようになっていて、1~3年生が全体の81.1%を占めます。
- 「1年生」38.7万人(31.4%)
- 「2年生」34.5万人(28.0%)
- 「3年生」21.7万人(21.7%)
- 「4年生」13.8万人(11.2%)
- 「5年生」6.4万人(5.1%)
- 「6年生」3.2万人(2.6%)
施設を利用できなかった児童数(待機児童数)は下記のようになっています。
- 「1年生」2,667人(15.4%)
- 「2年生」2,113人(12.2%)
- 「3年生」4,016人(23.2%)
- 「4年生」5,312人(30.7%)
- 「5年生」2,304人(13.3%)
- 「6年生」867人(5.0%)
前年と比べて1~3年生は669人減少しましたが、2015年以降事業の対象に含まれた4~6年生は778人増加しています。
運営主体別では、公設公営が8,740か所(37.5%)、公設民営が11,486か所(45.3%)、民設民営が5,102か所(20.1%)でした。
放課後子供教室の数
放課後子供教室の数は、2013年10月時点で10,376か所、2017年9月時点で17,615か所で実施されており、2017年にかけて増加しています。
放課後子供教室の約69%は小学校で実施されています。
児童数のデータはすべての児童を対象としているため、開示されていません。
また、放課後児童クラブと放課後児童教室の一体型施設は2017年5月時点で4,554か所、2018年5月時点で4,913か所と、こちらも増加しています。
参考
- 厚生労働省「平成28年(2018年)放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」
- 文部科学省「平成25年放課後子供教室の実施状況①」
- 内閣府「平成30年版少子化社会対策白書全体版」
- 厚生労働省「放課後児童クラブ関係資料」
放課後児童支援員とは

ここまで学童保育施設について説明してきましたが、ここからは学童保育で働いている、放課後児童支援員について説明していきます。
放課後児童支援員とは、2015年に新しく創設された学童保育の指導のための資格です。
2015年4月以降、厚生労働省が管轄する「放課後児童クラブ」には放課後児童支援員を原則2名以上(1名は放課後児童支援員を補助する者で代えることが可能)配置することが義務付けられました。
子どもが安心して過ごせる場を提供するために、一人一人の発達の特徴などを理解して子どもの育成支援につなげていきます。
保護者と連携して家庭を支援することも、放課後児童支援員の重要な仕事です。
放課後児童支援員になるには
下記の条件を満たし、かつ都道府県が行う「放課後児童支援員都道府県認定資格研修」を受講することで「放課後児童支援員」の資格を取得できます。
- 保育士、社会福祉士、幼稚園・小学校・中学校・高校の教員免許を持っている人
- 高卒以上の学歴を持ち、2年以上児童福祉事業に従事した人
- 大学・大学院で、社会福祉学、心理学、教育学、社会学、芸術学、体育学を専修する学科・研究科に所属し、またはこれらに相当する課程を修めて卒業した人
- 大学にて上記の学科で単位を修得したことにより、大学院への入学が認められた人
- 高卒以上の学歴を持ち、2年以上放課後児童健全育成事業に類似する事業に従事し、市町村長が適当と認めた人
研修のカリキュラムは6分野16科目(1科目は90分)から構成されています。
スケジュールは都道府県にもよりますが、研修期間は2~3か月程度です。保育士や社会福祉士などの資格を既に持っている人は、研修科目の一部が免除されます。
また、放課後児童支援員の資格取得後、さらに実践的・専門的な内容を学びたい支援員のために、日本放課後児童指導員協会は以下の3つの資格を独自に認定しています。
3つの資格とも、日本放課後児童指導員協会の登録会員である必要があります。
「放課後児童育成支援師」
子どもたちの育成支援について実践的に学びたい人向け。4科目24時間の講習を受講します。放課後児童支援員の資格取得が条件です。
「放課後児童専門育成支援師」
子どもたちの育成支援について専門的に学びたい人向け。全2日12時間の講義を受講したのち、試験に合格することで認定されます。放課後児童支援師の資格取得が条件です。
「放課後児童高度育成支援師」
子どもたちの育成支援について専門性と実践力を身に着けたい人向け。セミナーを1日受講し、実践研究報告書を提出・発表することで認定されます。放課後児童育成支援師の資格取得、かつ放課後児童クラブに通算600日以上従事していることが条件です。
学童保育に関する課題
待機児童の増加
学童保育の利用を希望する人は年々増加しており、需要に比べて供給が追い付かず、施設を利用できない待機児童が増えています。
施設数そのものは増加していますが、それ以上に学童保育登録児童数が増えているのが現状です。
学童保育の質の低下
政府は今後3年間で待機児童をゼロにすることと、2023年までに学童保育の受け入れ人数を現状より約30万人増加させることを目標としています。
施設数増加のため2018年11月、放課後児童クラブではそれまで放課後児童支援員を2名以上配置することが義務付けられていましたが、人手不足に配慮し2名の職員配置でも容認する方針が示されました。このような基準緩和を受けて、学童保育の質の確保が課題となっています。
また、現場では既に職員の人手不足が深刻となっていて、1施設あたり5人以下の配置となっている施設がほとんどです。現場からはこれ以上受け入れ児童を増やすとひとりひとりに目を配れなくなるという声が出ています。
人手不足・職員の待遇
学童保育の職員の半数が年収150万円未満といわれており、待遇の低さから現場は人手不足が深刻化しています。
学童保育に対する年間の国庫補助金は年々拡大されていますが、それでも保育園と比べると1桁少ない規模となっています。学童保育の職員の待遇改善が課題となっています。
海外の学童保育の状況
イギリス
学童保育も学校担当省庁が所管し、すべての学校で18時まで子どもを預かる学童保育を設置しています。
また、学童保育に限らず学習支援、スポーツ・音楽などのクラブ活動、親へのサポート、地域住民への施設開放など字幅広くサービスを提供しています。
各学校が国の監査機関(Ofsted)による評価を受ける際には、学童保育も含めて評価されています。
フランス
「余暇センター」と「長期休暇センター」の2つのシステムがあります。
「余暇センター」は日本の学童保育に近く、平日の放課後など通常期間を対象にサービスを提供しています。「長期休暇センター」は学期間休業中、短期間または終日、森などに行き集団の余暇活動サービスを提供しています。
他にも、管轄省庁は異なりますが、「コロニー・ド・バカンス」という、青少年の健全育成を目的に、自然環境での長期滞在型余暇活動を提供しているサービスもあります。
アメリカ
母子家庭の割合が2割を超え、保育ニーズが高いです。放課後の過ごし方が社会的格差拡大の原因となっていることから、政府は貧困地域を対象とした放課後プログラムに積極的に投資しています。
ただ、基本的には民間のサービスが中心となっています。放課後活動の場所は6割が公立学校内で、そのほかには教会やコミュニティセンターなどが利用されています。
韓国
小学生低学年児童の7割が放課後民間の塾に通っており、幼稚園や学校で行われる放課後プログラムの利用は1割程度にとどまっています。民間塾の利用は世帯所得によって大きな格差があります。
まとめ
学童保育は「仕事と育児の両立」を重視する社会情勢を追い風にして、需要が大きく伸びています。
行政は、福祉事業を提供する厚生労働省と教育事業を提供する文部科学省が連携して児童の放課後の居場所づくりを積極的に行っています。
民間からも需要の増加を背景に様々な業種が参入しており、今後は学童保育サービスの多様化が予想されます。
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