2020-01-06 2021-09-30
社会人が教員免許を取得するには?働きながら先生になる5つの方法
社会人として働きながら教師になりたいと思いはじめる方は意外と多いものです。実際に、企業で働きながら教員免許を取得し、学校で教えている方もいらっしゃいます。
教員になるには、教員免許を取得し、自治体や学校法人に採用される必要があります。
この記事では、働きながら先生を目指す方へ向けて、社会人になってから教員免許を取得する5つの方法を説明します。
目次
社会人が教員免許を取得する5つの方法
社会人が教員免許を取得するには、
- 通信制大学で普通教員免許状を取得する
- 教員資格認定試験を受ける
- 臨時免許制度を活用する
- 特別免許状を取得する
- 大学等で普通教員免許状を取得する
という5つの方法があります。
※既に教員免許を取得する方法が決まっている方は、次項以降で具体的な方法を説明していますので飛ばしてご覧ください。
教員採用の年齢制限
公立学校の先生になるための自治体の採用試験では年齢制限が設けられている場合があります。
もっとも低いのは、東京都と奈良県の39歳。次いで鹿児島県の40歳、44〜45歳の自治体が複数、といった具合なので、20〜30代の方ならほぼ問題なく受験できます。
ほか、教職経験者(正規教員、常勤講師、非常勤講師)や、英語や理科など特定領域の有資格者および指導経験者は、年齢の条件が緩和される自治体もあります。
なお年齢制限は撤廃傾向にあり、今後さらに広く門戸が開かれるでしょう。
参考)文部科学省「5 受験年齢制限、情報公開・不正防止のための措置」
▶教育コンサルタントに転職したい人がはじめに見ておくべき基礎知識
1.通信制大学で普通教員免許状を取得する
社会人が働きながら教員免許を取得する方法の一つ目は、通信制大学へ通うことです。
大学により取得可能な免許状はさまざまですが、四年制大学卒業と同等の、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、特別支援学校、養護、の普通教員免許状を取得できます。
免許取得にかかる期間は、座学に加え教育実習や介護等体験が必要となるため、最短2年はかかると見た方が良いでしょう。
実習以外の単位は、対面で授業を受ける「スクーリング」や、通信授業などを通じて取得できます。仕事や生活の状況に合わせて、計画を立てながら学びを進めることができます。
通信制大学の費用
通信制大学は一般的な大学よりも学費が安いというメリットがあり、免許取得までに必要な費用として約30万円ほどが相場と言われています。
そのため大学に入り直すよりは安く済むと言えるでしょう。
仕事との両立がうまくできないと単位取得に時間がかかる場合があります。その場合、授業料は年額で加算されるため、費用が高くなる可能性があります。
例えば、日本大学通信教育部では、2年で約30万円〜で次の免許が取得できます。
中学校(1種・2種) 国語科、英語科、社会科
高等学校(1種) 国語科、英語科、地理歴史科、公民科、商業科
参考)日本大学通信教育部「取得可能な資格」
2. 教員資格認定試験を受ける
「教員資格認定試験」は、大学等で教職課程を修了していなくても、教員として必要な資質・能力を持つと認められた人が教員として働ける機会を提供するために、文部科学省が実施している試験です。
現在は、
- 「幼稚園教員資格認定試験(幼稚園教諭二種免許状)」
- 「小学校教員資格認定試験(小学校教諭二種免許状)」
- 「特別支援学校教員資格認定試験(特別支援学校自立活動教諭一種免許状)」
が行われています(平成30年度時点)。中学、高校の試験は実施されていません。
認定試験に合格した場合は、合格証書を元に居住している都道府県の教育委員会に申請をすることでその学校種の普通免許状を取得できます。
上記の免許状を取得した後、教員採用試験に合格すると教員として働くことができます。
参考)文部科学省「教員資格認定試験」
かかる時間と費用
教員資格認定試験を受験するには、大学で教職課程を履修していたかどうかなどの事前知識にもよりますが、1年~2年ほど前から勉強を始める必要があるでしょう。
小学校の認定試験を受ける場合には実技試験も必要なので、その対策も必要です。
受験料は25,000円ですが、勉強に必要な問題集の費用や実技のための対策にも費用がかかる場合があります。
受験資格
教員資格認定試験の受験資格は次のとおりです。学校種別に定められています。
幼稚園教員資格認定試験
高等学校を卒業し20歳以上かつ保育士として3年以上の実務を経験している人
保育士としての勤務経験を持つ人の幼稚園教諭免許状取得を推進するという目的で実施されているため、保育士資格を持っていることが受験資格となっています。
小学校教員資格認定試験
高等学校を卒業し20歳以上の人
特別支援学校教員資格認定試験
大学を卒業した人、または高等学校やその他大学を卒業し22歳以上の人
試験内容
教員資格認定試験の試験内容は次のとおりです。学校種別に定められています。
幼稚園教員資格認定試験
教職に関する知識や保育内容の指導法、幼児理解に関する知識を測る筆記試験2科目と、実際に指導案の作成を行う論述式の試験1科目の合計3科目があります。
科目名 | 内容 | 試験方法 |
教科および教職に関する科目(Ⅰ) | 教育原理や教育制度など | マークシート式 |
教科および教職に関する科目(Ⅱ) | 保育内容の指導法や幼児理解など | マークシート式 |
幼稚園教育の実践に関する科目 | 指導案の作成 | 論述式 |
小学校教員資格認定試験
認定試験は「第1次試験」「第2次試験」「指導の実践に関する事項に関わる試験」に分けて行われます。
第1次試験の科目 | 内容 | 試験方法 |
教科および教職に関する科目(Ⅰ) | 教育の基礎的理解や道徳・総合的な学習の時間など | マークシート式 |
教科および教職に関する科目(Ⅱ) | 小学校の各教科の指導法、基礎的な教科内容 | マークシート式 |
第2次試験は第1次試験の合格者が受験できます。
第2次試験の科目 | 内容 | 試験方法 |
教科および教職に関する科目(Ⅲ) | 小学校の10教科の中から1科目を選び、その専門的な事項と指導法 | マークシート式 |
教科および教職に関する科目(Ⅳ) | 音楽、図画工作、体育 | 実技試験 |
口述試験 | 小学校教員として必要な能力全般 | 口述試験 |
指導の実践に関する事項に関わる試験は第2次試験の合格者が受験できます。
授業観察、指導案等作成、討論などを行い、小学校教員として必要な指導の実践に関する能力を測ります。
特別支援学校教員資格認定試験
認定試験は「第1次試験」「第2次試験」に分けて行われます。
第1次試験の科目 | 内容 | 試験方法 |
教職に関する専門的事項に関する科目 | 教職に関する知識 | マークシート式 |
自立活動に関する科目(Ⅰ) | 特別支援教育に関する知識 | マークシート式 |
第2次試験は、第1次試験の合格者が受験できます。
第2次試験の科目 | 内容 | 試験方法 |
自立活動に関する科目(Ⅱ)(Ⅲ) | 視覚障害・言語障害それぞれの専門的事項 | Ⅱは筆記、Ⅲは実技形式 |
口述試験 | 自立活動担当教員として必要な能力全般 | 口述試験 |
合格判断基準
教員資格認定試験の実施主体である独立行政法人教職員支援機構(NITS)が公表している合格判定基準によると、筆記試験では満点の6割以上を合格とみなしています。
しかし教員採用試験に比べると出題レベルは高めに設定されており、特に「教科に関する科目」ではかなり専門的な出題がされています。
そのため、合格率はそこまで高くありません。
文部科学省の「教職員試験機構説明資料」によると合格率は
- 幼稚園教員資格認定試験:20%~30%ほど
- 小学校教員資格認定試験:15%前後
となっています。
3. 特別免許状を取得する
「特別免許状制度」とは、教員免許状を持っていないものの優れた知識や経験を持つ社会人が教員として学校で働くことで、学校教育の多様化・活性化を促進する目的で導入された制度です。
小学校、中学校、高等学校の全教科および特別支援学校における自立教科を担当することができます。
都道府県教育委員会が行い、その人物の学力や経験、意欲をみる「教育職員検定」に合格すると授与されます。
英会話学校で教えている人が英語科の特別免許状を取得したり、パティシエが家庭科の特別免許状を取得したりといった事例があります。
活用の拡大が推進されており、特別免許状の授与件数は増加傾向にあるようです。
▶教員採用試験とは?試験内容や受験資格、社会人特別選考、競争率(倍率)、教員採用試験対策などについて紹介!
4. 臨時免許状を取得する
臨時免許状は、普通免許状を取得している者を採用できない場合に限って例外的に授与される免許状です。
助教諭、養護助教諭として勤務できます。
参考)文部科学省「教員免許制度の概要(平成31年4月1日版)」
5. 大学等で普通教員免許状を取得する
大学等へ通うのは教員免許を取得する一番メジャーな方法です。関連単位がなくゼロから取得するとなると最低でも2〜4年かかるため、仕事を続けながら通うのは困難ですが、時間さえ確保できれば取得は可能です。
高卒で社会人になっている場合、大学または短期大学に入学して必要な単位を取得したのち卒業することが必要です。
既に大学を卒業している場合、
- 大学に再度入学して教職になるための課程を卒業する
- 有効単位があれば「科目等履修生」として必要な科目だけ履修する
選択肢があります。
社会人が大学へ入学する方法・費用
大学に入学するには、
- 一般入試に合格する
- 社会人入試を利用する
- (既に学士号を持っている場合)学士入学する
などの方法があります。
費用面では入学金や授業料が必要で、金額は私立か国公立かによって大きく変わります。
文部科学省の「国公私立大学の授業料等の推移」によると、
- 私立大学:入学料約25万円、授業料年間約88万円
- 国公立大学:入学料約23万円、授業料年間約54万円
ほどかかります。
大学に4年間通うか、編入して2年間通うかなどによっても費用は変わってきます。
社会人入学の場合、授業料を安くしている大学もあります。
科目等履修生になる場合、入学金は2~3万円程度、授業料は1単位当たり1万円程度が相場と言えるでしょう。
必要な単位数が少ない場合には費用を安く抑えることができます。
いずれにせよ、大学の授業は昼間に行われることが多いため、必要単位数をそろえるには仕事を退職・休職する必要があるでしょう。
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先生になるには教員採用試験を受ける
ここまで教員免許を取る方法を紹介してきましたが、教員免許を持っているだけでは学校の先生になることはできません。
公立学校で教えるには各都道府県や政令指定都市の教育委員会が行っている教員採用試験に合格する必要があり、私立学校で教えるためには各学校が行っている教員採用試験に合格する必要があります。
教育委員会によって試験科目や内容は異なりますが、概ね「筆記試験」「面接試験」「論文試験」などがあります。
教育委員会によっては模擬授業や指導案作成などを実施している場合もあります。
この教員採用試験はかなり難関な試験と言われているため、先生を目指すのであれば試験対策は必須です。
▶教員採用試験に落ちた場合に取りうる選択肢、あきらめずに教員・教師になる方法
教員免許の種類
教員免許にはそもそも、大きくわけて3つの種類があり、学校種、教科別に区分が設けられています。
免許状の基本的な種類
教員免許状は
- 「普通免許状(全国、有効期間10年)」
- 「特別免許状(授与された都道府県内、有効期間10年)」
- 「臨時免許状(授与された都道府県内、有効期間3年)」
の3種類にわかれています。
一番メジャーなのは普通免許状で、ほとんどの教員は普通免許状を持っています。
学校種・教科別
免許状は、
- 「幼稚園」
- 「小学校」
- 「中学校」
- 「高等学校」
- 「特別支援学校」
の学校種に分かれます。さらに、中学・高校では教科別に分かれます。
中学校には、
国語・社会・数学・理科・音楽・美術・保健体育・保健・技術・家庭・職業・職業指導・職業実習・外国語・宗教
の教科があります。
高等学校には、
国語、地理歴史、公民、数学、理科、音楽、美術、工芸、書道、保健体育、保健、看護、看護実習、家庭、家庭実習、情報、情報実習、農業、農業実習、工業、工業実習、商業、商業実習、水産、水産実習、福祉、福祉実習、商船、商船実習、職業指導、外国語、宗教
の教科があります。
特別支援学校の教員は、教科別での指導ではなく障害の領域別の指導になります。視覚障害者、聴覚障害者、知的障害者、肢体不自由者、病弱者の領域があります。
働きながら教員免許を取得するのは簡単ではありません。
しかし、自身の経験をいかして先生になるチャレンジは、年齢に関係なく取り組めます。
反対に、教員免許を取得しながら先生にならなかったとしても、学んだ知識は社会のさまざまな場面でいかせます。
まとめ
この記事では社会人から教員になるための方法を紹介しました。
学校の先生になるのは簡単ではありませんが、社会人からでも教員にチャレンジできる方法はたくさんあります。
また、日本政府は社会人経験のある人を先生として学校で採用することを推進しています。
教員になりたい方は、「社会人から教員を目指す」ことを選択肢に入れてもよいのではないでしょうか。
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