2019-08-19 2025-09-09
教育バウチャーとは、学校や習い事で使えるクーポン
教育バウチャーという言葉をご存知でしょうか。
小中学生くらいの子どもがいる方、教育政策に関心のある方であれば聞いたことがあるかもしれません。
教育バウチャーとは教育に目的を限定したクーポンのようなもので、近年東京都や千葉県の一部地域で導入が進んでいます。
この記事では、教育バウチャーの概要や注目される背景、メリット・デメリットについて説明しています。
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目次
教育バウチャーとは教育に使用目的を限定したクーポン
教育バウチャーとは、子供のいる家庭に交付される、教育に目的を限定したクーポンのことです。
子どもとその保護者が学校や教室を選択し、学校や教室は集まったバウチャーの数に応じて政府から学校運営費を受け取る仕組みです。
「教育バウチャー」のほかに、「教育クーポン」とも呼ばれています。
教育バウチャーの始まりは欧米諸国
教育バウチャーは、1950年代にアメリカの経済学者ミルトン・フリードマンが学校格差・教育格差是正のため、学校に競争原理を取り入れる意図で提唱しました。
アメリカでは、ごく一部の地域で格差是正目的で教育バウチャーが導入されています。
宗教系の学校への補助に対する憲法上の制約が強く、アメリカ全域での導入は滞っているようです。
ヨーロッパ諸国では、教育バウチャーや教育バウチャーに似た制度が普及しています。
- イギリス:学校自由選択性と公教育への補助金制度
- スウェーデン:学校選択制度と補助金制度
- オランダ:生徒数に応じて国が学校に補助金を支払う制度
ここでは、上に挙げた3か国の例を紹介します。
イギリス
イギリスでは、「補助学籍制度(Assisted Places Scheme)」という制度が1981年にありました。
これは、受入児童数に応じて補助金が学校に支払われる制度です。
補助学籍制度は、1997年にブレア労働党政権において社会的公正に反するという理由から廃止されました。
現在のイギリスの学校自由選択制と公教育への補助制度(児童生徒数に応じた予算配分)の組み合わせは、広義の教育バウチャーにあたるという意見もあります。
スウェーデン
スウェーデンには、学校選択制度と、それに付随した公私立学校への生徒数に応じた補助金制度があります。
これが擬似的な教育バウチャーであると一部の有識者から認識されています。
子供が居住している自治体が、その子供が通う学校に生徒1人当たりの年額の補助金を支払うという仕組みです。
利用者の所得や人種、学校の国公私立の種類にも制約はありません。
オランダ
オランダには、生徒数に応じて国が学校に補助金を支払う仕組みがあります。
維持管理費は市町村負担、その他の運営費は国の負担という仕組みです。
これは、広義のバウチャー制度として認識されています。
教育バウチャーが日本で注目される理由

日本では、各政党や代表が教育バウチャーの導入を掲げる政策を発表したことで注目されるようになりました。
最初は2006年の安倍内閣による教育改革、最近では2012年の橋下徹大阪市長による提案により話題になりました。
2006年の安倍内閣による教育改革の目玉に
日本で初めて教育バウチャーの導入が検討されたのは、第一次安倍内閣における2006年10月に発足した教育再生会議でした。
2006年に教育改革の検討課題のひとつとして掲げられ、注目を集めました。
しかし、その後は特に動きがなく頓挫しました。
2012年に橋本徹大阪市長が提案
2006年に検討課題のまま議論がストップして以降、2012年に橋本徹市長が塾代補助クーポンを提案し再び話題になりました。
塾代補助クーポンは、中学生の7割程度に月1万円分のクーポンを支給するという内容でした。
これは実際に日本初の教育バウチャーとして導入され、注目されました。
以後、教育バウチャーは東京都や千葉県など市・区単位での導入が進んでいます。
教育バウチャーの仕組み
ここまでに挙げた日本の各自治体や諸外国の制度のように、教育バウチャーと呼ばれていなくても擬似的な制度は多く存在しています。
大きく分けると、教育バウチャーは以下2つの仕組みに分けることができます。
- 給付方法:家庭にクーポンを配布する方法と学校に補助金として給付する方法
- 使用用途:学校教育バウチャーと学校外教育バウチャー
2つの補助金の給付方法
政府の教育バウチャーの給付の仕組みは、大きく2通りにわかれます。
家庭にクーポンを配布する形での給付と、生徒数等に応じて学校に使途・譲渡制限のある補助金としての給付です。
前者は狭義の教育バウチャーとも呼ばれ、アメリカの一部の州で導入されている教育バウチャーがこれにあたります。
後者は広義の教育バウチャー(擬似バウチャー)と呼ばれ、スウェーデンやオランダの教育バウチャーがこれにあたります。
学校教育バウチャーと学校外教育バウチャー
| 学校教育バウチャー | 学校外教育バウチャー |
|
|
教育バウチャーが使用される場所によって、学校教育バウチャーと学校外教育バウチャーの2種類に分けられます。
学校教育バウチャーが学校の学費を補助する教育バウチャーであるのに対し、学校外教育バウチャーは、塾や予備校、習い事などに利用可能な教育バウチャーです。
学校外教育バウチャーには、渋谷区のスタディクーポンや大阪市の教育クーポンといったものがあります。
▶シティズンシップ教育とは?海外での事例、日本国内での今後の可能性を解説
教育バウチャーのメリット
ここでは、教育バウチャーのメリットについて、子どもと保護者(受ける側)、学校(提供する側)の2つの立場から説明しています。
子ども・保護者(受ける側)
子ども・保護者が教育バウチャーを利用するメリットは、大きく分けて2点あります。
- 授業料負担などの公私格差の解消が図れること
- 学校選択の自由があること
国公私立を問わない教育バウチャーであれば、公私一律に補助を受けることで格差の解消が見込めます。
また、学校選択の自由があることで、学区などにとらわれず、子どもの学力等に合わせて学校を選択することができます。
学校(提供する側)
学校にとってのメリットは、より多くの子どもを集めるために、教育の質向上に向けた努力をするようになることです。
教育の質が上がることは、子どもにとってのメリットでもあり、教育市場全体にとってのメリットとも言えます。
教育バウチャーのデメリット
ここでは、教育バウチャーのデメリットについて、子どもと保護者(受ける側)、学校(提供する側)の2つの立場から説明しています。
子ども・保護者(受ける側)
- 地理的な学校選択の自由が保障されていない
- 利用先が限定されてしまう
地理的な学校選択の自由が保障されていない点が教育バウチャーのデメリットの1つです。
地方部と都市部では、学校の数も質も異なり、地方部と都市部の教育格差はますます広がっていくことが考えられます。
また、利用先が限定されてしまうこともデメリットとして挙げられます。
すべての学校が選択肢に含まれる教育バウチャーであればこのようなことは起きませんが、対象となる学校を限定している場合はこのデメリットが生じます。
学校(提供する側)
メリットで記載した教育の質向上とは、真逆の現象が生じてしまう可能性があります。
生徒を多く集めることにばかり注力してしまい、実質的な教育の部分がおろそかになってしまう可能性があるからです。
この場合、学校にとっても子ども・保護者にとってもデメリットとなります。
また、教育バウチャーを利用する生徒が一部の学校に偏ってしまい、学校間での支給額の格差が生じてしまうことも考えられます。
▶Coursera(コーセラ)とは、スタンフォード大学の教授が設立したMOOCs
まとめ
- 教育バウチャーとは、教育に目的を限定したクーポンのこと
- 日本初の教育バウチャーは、2012年に橋本徹市長が提案した塾代補助クーポン
教育バウチャーは、日本では2006年に導入が検討されて以降、しばらく動きがありませんでしたが、近年東京都の一部の区を中心に導入が進んでいます。
今後教育バウチャーは、これまでの成果等から、様々な場所で導入されていくことが予想されます。
▶STEAM教育とは何か?国内、海外での取り組み、推進に当たっての課題は?
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