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2020-08-24

非認知能力の育て方 – 大人でも鍛えられる?子どもの活動を通じて伸ばす

生き抜く力を身に着けるため「非認知能力」が世界的に注目されています。

鍛えるため特に重視したいのが幼児期。

なぜ幼児期が重要視されているのか、非認知能力はどういった活動を通して育まれるのか。学校教育現場での取り組みや、大人でも強化できるのかのかなど、非認知能力を鍛える方法について解説します。

非認知能力とは

非認知能力とは、「目標や意欲、興味・関心をもち、粘り強く、仲間と協調して取り組む力や姿勢を中心」とする力のことを言います(出典4)。

▶️非認知能力とは?世界が注目、生涯の学びを支えるちから

 

めまぐるしく変化する社会で人生の成功を支えるものとして重視されており、認知能力を育てる時期としては乳幼児期が注目されています。

非認知能力が世界で注目されたきっかけは、1960年代にアメリカで行われた「ペリー就学前計画」をヘックマンが紹介したことでした。

生涯にわたり必要な力の基礎をつくる時期として幼児期が重要であること、そのような力は認知能力ではなく「それ以外のもの=非認知能力」が影響すると考えられ、非認知能力育成には幼児期が強く関係していると言われるようになったのです。

非認知能力の育て方

授業中の大学生

実は、非認知能力を鍛えるために、新しく特別なことを始める必要はありません

日本の幼児教育・保育はこれまでも、非認知能力に重なる「心情・意欲・態度」を大切にしてきました。

例えば、大人が「今から〇〇をやりましょう!」と言って子どもたちにやらせるのではなく、必ず子どもたちの興味・関心を出発点にしています。

つまり、子どもたちがいろいろな遊びや活動に興味を持ち、自分で何かを発見して喜びを味わう経験や、自ら「やりたい!」と思うような環境を用意することが、非認知能力育成には不可欠なのです。

では、実際に子どもたちはどのような活動を通して非認知能力を高めているのでしょうか。いくつかの活動に分けて、具体的に見ていきましょう。

遊びを通して非認知能力を育てる

非認知能力を育てる方法の一つ目は、乳幼児期の「遊び」。さまざまな遊びの体験です。

一つの遊びが特定の能力を伸ばすわけではありません。一つの遊びの中にも数多くの要素があり、全ての力が互いに影響しながら育っていくのです。

例えば「ごっこ遊び」の中では、遊びのテーマを考える想像力や、自分のイメージを表現すること、そのためにどのような道具やおもちゃを使えばよいか、あるいはどのようにして道具を作ればよいか、道具を作るのにどれくらい時間がかかるかなどを考える力が必要です。これらは認知能力に含まれるものです。

加えて、道具を思い通りに作るための手先の器用さも必要でしょうし、イメージを友だちと共有して楽しんだり、時にはイメージがぶつかり合ったときにどのように交渉・調整したりということも必要になります。

ごっこ遊び一つとっても、認知能力・非認知能力両方に関連する要素が含まれるのです。

さらに、複数の遊びを通して一つの力が育っていくという視点も大切です。

ごっこ遊びで培われていく力は他の遊びや生活場面でも発揮される力です。

例えば、ごっこ遊びでの表現力や手先の器用さは描画活動につながるし、友だちと協同したり交渉したりしながら何かに取り組む力は日常生活に欠かせません。こうした活動どうしのつながり、関連を知っておくことも大切です。

友だちとの関わりを通して育てる

非認知能力が育つためには、友だちとの関わりも不可欠です。

非認知能力に関わる「協同する力」とは、単に友だちと仲良く遊べればよいのではなく、異質な相手と折り合いをつけて、一緒に課題を追求するような姿を想定しているとされています(出典1)。

つまり、自分の思いと相手の思いがぶつかる中で、葛藤したり、相手が何を考えているか分からず思い悩んだりする経験があって初めて、自分の気持ちも相手の気持ちも尊重できるようになるのです。ただ人の気持ちを教えられればよいのではありません。

幼児期になると、いざこざを子どもたちが自分で解決しようとする姿も見られるようになります。クラスの中でいざこざが起きたときに、周りにいる子どもたちが仲裁に入ったり、当事者である友だちの気持ちを代弁してあげるような「いざこざへの介入」が見られることが報告されています(出典6)。

介入によって必ずしもすぐに解決するわけではありませんが、仲間意識が育っていることの証拠だと言えるでしょう。

学校現場では?

学校内を歩く子どもたち

学校教育の場でも非認知能力育成に通じる目標が取り入れられています。

学習指導要領の中では「主体的・対話的で深い学び」という表現で、生涯にわたって能動的に学び続けられる力を身につけることを目指しています。

教師が一方的に話し続けて知識を教えるのではなく、ディベートやグループワーク等を通して学習者自身が学んだ知識をもとに問題を見出して解決策を考えたり、知識を関連付けたりして、より深く理解していくことを目標としているのです。

これを、

  1. 知識及び技能
  2. 思考力、判断力、表現力等
  3. 学びに向かう力、人間性等

の3つの柱で整理しています。

しかしここでも、注意すべき点が2つあります。

1つは、認知能力と非認知能力が相互に関連しながら一人の人間が育っていくということです。

どちらかが優先されるべきものではなく、また、必ずしも両者は明確に分類できるわけでもありません。

もう1つは、授業は基本的に強制の場であるにもかかわらず、その中で学習者の能動性・主体性が求められているということです(出典2)。

授業の内容や方法は教員の裁量によって決められています。「自分が学びたいのは違うことだ」とか「今は気分が乗らないから授業に参加したくない」といった態度は許容されません。

つまり学習者は、授業の枠組み自体は受動的に受け入れなければならないにも関わらず、その中では能動的であることが求められているというダブル・バインド状況が起こってしまいます。

このような状況の中では、グループ・ワークを行うことそのものを目的にしてしまうことなく、本当の意味で学習者が主体的に学びに向かっていくための工夫が求められます

大人でも鍛えられる?

非認知能力は生涯にわたって重要な力です。そのため、大人になってからもさまざまな場面で発揮されます。

例えば、自分の人生をデザインする力を養うキャリア教育では、職業観などの価値観や論理的思考力に加えて、人間関係を形成する力や自己理解・自己管理能力などの「基礎的・汎用的能力」が非認知能力に関わるものとして重要視されています(出典5)。

また、大学生アスリートの中で全国大会に出場するほどの高いレベルの選手はそうでない選手に比べてGrit(やり抜く力)を測る得点が高いことが報告されています(出典3)。

高いパフォーマンスを示す人は、競技レベルを向上させる過程でスポーツに情熱的に取り組み、多くの困難や壁を乗り越えながらやり抜く力を高めてきたのではないかと考えられています。

このように、非認知能力の中には非常に多くの力が含まれています。大人になればなるほど、あらゆる場面で求められる力であると言えるかもしれません。

だからこそ、まずは自分自身がどのような力をつけ、どのような人になりたいかを思い描くことが必要になるでしょう。

非認知能力育成には「どのように」が大切

全年齢を通じて非認知能力を伸ばすために大切なのは、何をするかではなく、どのようにするか、です。

子ども自身が興味を持ち、友だちや大人と関わり合いながら活動を充実させていくことができれば、活動の内容は遊びでも勉強でもスポーツでも習い事でも構いません。

非認知能力が育つことは、そのような活動に取り組んだ子ども自身が満足感や達成感を味わった「結果」なのです。

乳幼児期は大人になるための準備期間ではなく、その時その瞬間に子どもがいきいきと過ごすことが大切です(出典1)。

活動そのものを本人が思い切り楽しんだり、没頭したり、試行錯誤しながら乗り越える中で「もっとやりたい」という気持ちを持つ。

そして活動が充実していくことが、結果的に非認知能力や認知能力を含むさまざまな力を育て、豊かな人生を送れる人に育っていくことへとつながるのです。

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出典

1)秋田喜代美・中山昌樹・太田亜希. (2015). 座談会 今, OECD など世界が注目している「社会情動的スキル」とは?(特集 子どもの未来につながる力を幼児期から育む). これからの幼児教育, 2-9.
2)藤川大祐. (2017). アクティブ・ラーニングとゲーミフィケーション: 「主体的・対話的で深い学び」 のデザインに関する考察. 教育におけるゲーミフィケーションに関する実証的研究, 2, 1-9.
3)上妻卓実・藤田 勉・蛯原正貴. (2019). 大学生アスリートの競技レベルと非認知能力の関係. 鹿児島大学教育学部教育実践研究紀要, 28, 115-124.
4)無藤 隆. (2016). 生涯の学びを支える「非認知能力」をどう育てるか. ベネッセ教育総合研究所「これからの幼児教育」, 18.
5)中山芳一. (2016). キャリア教育における多元的自己評価試論: 非認知能力を手がかりとして. 岡山大学全学教育・学生支援機構教育研究紀要, 1, 123-132.
6)吉田真理子. (2016). 友だち同士のいざこざに幼児はどのように関与するか: 発達的変化およびネガティブな展開に着目して. 心理科学, 37(2), 48-63.

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