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2020-12-01

CLILとは教科学習と英語学習を統合した学習法

2020年からは新学習指導要領の実施、大学入試改革などで日本の英語教育が大きく変わりました。

その中で、国や民間の教育関係者から注目を集めているのがCLILという英語学習法です。

この記事ではCLILという学習法の理論や効果、注目される理由をまとめました。

CLILは教科学習と英語学習を統合した学習法

CLIL(クリル)は、Content and Language Integrated Learning(内容言語統治型学習)の略称です。

教科科目やテーマの内容(content)の学習と、外国語(language)の学習を組み合わせた(integrated)言語習得アプローチを指します。

CLILの特徴は、習得を目指す言語(主に英語)を用いながら、別の教科や社会的テーマを学ぶ点にあります。

be動詞やto不定詞といった単元学習を目的とするのではなく、数学や歴史、環境問題や人種問題といった学習内容の理解に重きを置き、そのための「ツール」として英語を位置付けているのがCLILという教育方法です。

また、学習者の思考力やコミュニケーション能力、協同学習、異文化理解を重視しているのもCLILの特徴と言えます。

CLILは、発祥の地であるヨーロッパでは既に広く定着しており、世界各国でも少しずつ導入が進んできています。

日本でもここ数年でカリキュラムに取り入れる学校が増えてきており、注目が集まっています。

CLILが掲げる4つのC

CLILの学習理論の特徴は「4つのC」というフレームワークを掲げている点です。

4つのCとは、

  • Content(内容)
  • Communication(言語)
  • Cognition(思考)
  • Culture/Communication(文化・協同)

を指します。

CLILでは、教科やテーマに関した内容(Content)と言語学習(Communication)以外にも、

  • 学習者の思考活動(Cognition)
  • 文化・国際理解/他者との協同学習(Culture/Communication)

を同時に促すことを目指しています。

この4つの枠組みを取り入れながら教材開発や指導をすることによって、教育の質が高くなると考えられているためです。

CLILの10の原則

CLILを用いた授業をする際には、以下に示す10の原則を満たすように教材を準備し、指導します。

  1. 内容学習と語学学習の比重は1:1である。
  2. 4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく統合して使う。
  3. タスクを多く与える。
  4. 様々なレベルの思考力(暗記、理解、応用、分析、評価、創造)を活用する。
  5. 協同学習(ペアワークやグループ活動)を重視する。
  6. 異文化理解や国際問題の要素を入れる。
  7. オーセンティック素材(架空の設定ではなく、日常生活に実際にある素材のこと。新聞、雑誌、ウェブサイトなど)の使用を奨励する。
  8. 文字だけでなく、音声、数字、視覚(図版や映像)による情報を与える。
  9. 内容と言語の両面での足場(学習の手助け)を用意する。
  10. 学習スキルの指導を行う。

出典:池田真「CLILと英文法指導:内容学習と言語学習の統合」『英語教育』2011年10月号

CLILではこの10の原則を基に授業を行います。

全ての原則を満たすことは難しい場合もあるため、学校段階や教科内容に応じて3~8つほど取り入れるなど、柔軟に選択することが可能です。

次に実際の授業の手順について紹介します。

CLILの授業手順

実際のCLILの授業はどのように進んでいくのでしょうか。

ここでは池田真ほか(2016)『CLIL内容言語統治型学習 上智大学外国語教育の新たなる挑戦 第3巻 授業と教材」で提案されているものをご紹介します。

1.Activating(導入)

授業の導入部分であり、学習者の興味を呼び起こしたり、学習の目当ての整理などが行われます。

映像や写真といった視覚情報を示すことなどもあります。また、初めて学ぶ語句の説明などもこの導入部分で行われます。

2.Input(内容理解)

新聞記事や論文、ウェブサイトといった資料を生徒が読み、この授業のテーマの内容を理解します。

ここでも、文字情報だけでなく音声、数字、視覚情報の提供が推奨されます。

3.Thinking(思考)

理解した内容に対して、分析や評価といった思考を必要とする活動を行います。

ペアになって話し合ったり、ワークシートの設問に自分の意見を書き出すといったタスクをこなす中で、生徒が自分の主張を確立していきます。

4.Output(発表)

思考の段階でまとめた自分の意見を「話すこと」や「書くこと」によって発表します。

クラス全体に向かって発表し、さらなるディスカッションを行ったり、授業後にレポートなどの形でまとめるといったタスクが与えられます。

CLILの効果

CLILは1990年代にヨーロッパで始まった学習法ですが、近年はCLILを使った授業の実践報告などが増えてきています。

これらの研究報告から、

  • 語学学習のモチベーションが維持されやすい
  • 英語4技能を習得できる
  • 記憶に定着しやすい
  • 文化・国際理解が深まる

といった効果が指摘されています。

語学学習のモチベーションが維持されやすい

従来の英語教育では、機械的な文法学習や単語の暗記が重視されており、このような作業が苦手な生徒はモチベーションが下がりやすい傾向がありました。

CLILでは、言語習得と内容理解の両方を重視するため、言語習得が苦手な生徒でも学習内容に興味や強みがあれば授業に十分ついていくことができ、モチベーションが維持されやすいと言われています。

また、従来の英語教育では日常の場面からかけ離れた題材を用いる場合も多くありましたが、CLILでは新聞や雑誌、テレビ番組、映画といった日常生活にあるものを題材にしている点も生徒の積極的な学習参加につながると言われています。

さらに、CLILでの学習から異文化理解や国際理解が進むことによって、「国際社会に参加するために英語を習得する」という統合的動機(これに対して、受験勉強のために学習する動機を「道具的動機」と言います)が生まれやすい点もCLILの利点と考えられています。

英語4技能を習得できる

CLILの授業ではインプットとアウトプットの両方が必要になるため、リーディング・リスニング・スピーキング・ライティングの4技能がバランスよく習得できると言われています。

また、従来の文法や単語の正確性にこだわった英語の授業では、生徒が間違いを恐れ発言を控えてしまう傾向がありました。

中身のある内容を並行して学ぶCLILでは、英語を使うことへの心理的不安が和らぎコミュニケーション量が増加すると言われています。

そのため、CLILを用いることで日本の英語教育でかねてから課題となっているスピーキングやライティングの能力を伸ばすことにつながると考えられています。

記憶に定着しやすい

CLILでは、言語知能だけでなく、内容理解の段階での論理的思考力や、音声や視覚情報を読み解く際の視覚・空間的知能、他者と交流する際のコミュニケーション能力など多角的な知能に働きかけます。

多重知能の理論からこのように複数の知能に働きかけながら学習することは、人間の記憶メカニズムにも効果的に働きかけると言われています。

日常生活にあるものを題材にすることも、生徒の印象に強く残り、学習内容の定着につながると考えられています。

文化・国際理解が深まる

CLILで学習する際のテーマとして、環境問題や他国の文化など、国際的なテーマを用いることも多いです。

そのため、学習を通じて生徒の中で自然と異文化意識が育ちやすいとされています。

日本ではヨーロッパなどと比べると学校段階で異文化と接する機会はまだ多くない中で、意識的に異文化、国際社会との接点を持つことは重要だと考えられています。

CLILの始まりはヨーロッパ

CLILは、EUの統合によって1990年代からヨーロッパで始まりました。

民族や文化、言語が異なる国々を「欧州連合」として一つの共同体に束ねるためには、様々なバックグラウンドを持つ人々が共通に理解する言語を持つことは非常に重要な意味を持ちました。

そこで、英語を母語としない加盟国では、母語に加えて共通言語としての英語を学ぶことが課題とされ、それを可能にする対策としてCLILが生まれました。

2000年以降はタイ、インドネシア、ベトナムなど東南アジアの各国でも初等教育を中心にCLILが導入され、成果をあげています。

日本でCLILが注目される理由

日本ではCLILを用いた授業実践が2010年頃から始まり、現在は文部科学省もCLILを取り入れることの有効性を指摘しています。

このように日本で現在CLILが注目されるのには、

  • 自然と英語でコミュニケーションを取れるから
  • 様々な科目で実践できるから
  • 幅広い教育課程に取り入れられるから

といった理由が考えられます。

自然と英語でコミュニケーションを取れるから

文部科学省は社会が急速にグローバル化する中で、英語教育の充実は極めて重要であるとして様々な改革を行ってきました。

2020年度から実施された新学習指導要領でも、英語科目では様々な変更点がありました。

小学校では、英語の学習開始学年が小学校3年生からに前倒しになりました。

さらに小学校5・6年生ではこれまでの「外国語活動」ではなく「教科としての英語」を学ぶこととなり、文法や語彙学習が始まりました。

中学校では4技能のうち「聞く」「話す」のウエイトが上がり、習得語彙数と文法事項が増えました。また「授業を英語で行うことを基本とする」という方針も示されています。

高校では、特に大学入試改革が授業のやり方を大きな変化させています。

英検やTOEFLなど民間の検定試験を活用して英語4技能を評価する方針が示され、大学によって民間検定試験の結果を出願条件や加点の対象としています。

センター試験も「大学入学共通テスト」となり、リスニングの配点が増加したり、問題文が全て英語に変更となったりしました。

このように全ての学校段階で改革が行われていますが、これらに共通する目的は「英語を使う力」「英語でコミュニケーションを取る力」を伸ばしたいというものです。

これまでもコミュニケーション能力の育成は言われてきましたが、授業内では形式的なものに終始してしまいがちでした。

そのため、丸暗記したものをそのまま言う、といった「正解を当てさせる」授業から脱却し、自分の主張を伝えあうためにコミュニケーションを取る授業が可能になるよう、カリキュラムが見直されたのです。

生徒が積極的に自分の主張を伝えたい、表現したいと思わせるには、そのような意欲を高める題材を用意することが効果的です。

日常的な題材を用いたり、他教科で学ぶ題材を英語で学ぶといったCLILの手法は生徒の主体的な授業さんかに効果的であるとして注目を集めているのです。

様々な科目で実践できるから

CLILの特徴は、様々な科目で活用ができる点にもあります。日本でこれまで行われてきているCLILの実践例をいくつか紹介します。

まずは英語の授業に算数を取り入れた実践例です。

小学校6年生が英語の数の学習をする際に、「足し算」「引き算」「掛け算」といった算数の計算活動を取り入れ、算数の計算や法則性を学びながらそれに関わる英語の語彙や言い回しを同時に習得する授業を行いました。

その結果、児童の学習意欲が高まりコミュニケーション量の増加、発話量の増加、計算活動に使う語彙の定着が見られました。

出典:二五(2013)「算数の計算を活用した教科横断型の英語指導―小学校高学年児童を対象とした英語の数の学習を事例として―

また、ある研究では小学校段階で、社会科、道徳、家庭科、国語、算数、理科と英語をそれぞれ統合したCLILの授業を実践し、CLILを取り入れなかった授業と比較しました。

その結果、CLILを取り入れた授業では、児童の学習意欲向上、コミュニケーション活動促進、思考活動の促進、協同学習の質の向上、国際理解の深まりを促進する可能性が高いという研究結果が出ています。

この研究から、CLILは様々な科目との組み合わせが可能であることが伺えます。

出典:山野(2013)「小学校外国語活動における内容言語統合型授業(CLIL)の実践と可能性

幅広い教育課程に取り入れられるから

CLILは幅広い教育課程に取り入れることが可能です。

上で紹介したように、小学校段階でCLILを取り入れる学校は増えています。また、幼児の英語学習でもCLILを取り入れる実践は増えてきています。

英語で数字を教える際に簡単な足し算引き算を学ばせるといった方法や、おままごとやサッカーといった遊びやスポーツを英語で行うといった実践があります。

大学でもCLILの実践は行われています。

外国語教育で有名な上智大学はCLILプログラムを導入し、経済学や心理学など専門分野を英語で学ぶコースや、通訳英語やジャーナリズム英語といった専門職で用いられる英語を学ぶコースなどを設置しました。

これらの授業では内容学習と語学学習の比重を同じにしているため、帰国子女だからといって評価が高いとも限りません。

内容を理解し、自分なりの価値判断を加えて分析し、その主張を英語で効果的に伝える中で、内容と言語の両方の習得が促されます。

まとめ

  • CLILは教科科目やテーマの内容の学習と外国語の学習を組み合わせた言語習得アプローチである
  • CLILでは教科やテーマに関した内容と言語学習以外にも、学習者の思考活動や、文化・国際理解/他者との協同学習を同時に促すことを目指している
  • CLILには英語学習へのモチベーション向上、4技能のバランスよい習得、国際理解の深まりといった効果があると言われている
  • 日本では英語でコミュニケーションを取る力を伸ばすためにCLILが注目されている

この記事では、CLILの理論や効果、日本で注目される理由についてまとめました。

CLILを用いた授業実践は始まって間もないため、詳細な効果検証や効果的な指導方法についてはまだまだ研究が必要だと言えるでしょう。

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