2021-01-13 2021-02-15
GRITとは非認知能力の1つの「やり抜く」力
スティーブ・ジョブス、ヒラリー・クリントン、マーク・ザッカーバーグ、マイケル・ジョーダン・・・
様々な分野で活躍するこのような成功者にはある共通点があったことがアメリカの研究でわかりました。
それは持って生まれた特殊な才能などではなく、「GRIT(グリット)」という「やり抜く力」です。
この記事では起業家、ビジネスマン、アスリート、アーティスト、学者など、様々な分野で多大な成果を挙げた「成功者に共通する力」として、今注目を集めている言葉「GRIT」について解説します。
GRITとは「やり抜く」「粘る」力のこと
英語の「Grit」という単語は、日本語で困難にあってもくじけない「勇気」「気概」「闘志」などを意味します。
この単語をもとに、アメリカの心理学者であるアンジェラ・リー・ダックワース教授は、社会的に成功している人が持つ心理特性を「GRIT」(やり抜く力)として定義づけました。
アンジェラ教授が定義した「GRIT」は、
- Guts(ガッツ):困難に立ち向かう「度胸」
- Resilience(レジリエンス):失敗しても諦めずに続ける「粘り強さ」
- Initiative(イニシアチブ):自らが目標を定め取り組む「自発性」
- Tenacity(テナシティ):最後までやり遂げる「執念」
の4つの要素で構成されています。
持って生まれたIQ(知能指数)のような才能ではなく、この「GRIT」がどの分野においても成功して偉業を達成するには重要であることをアンジェラ教授は科学的根拠をもって証明し、大きな反響を集めました。
「GRIT」は苦労して頑張ることを美徳と考える人の多い日本人には相性が良く、教育界や産業界でもその概念は浸透しはじめているようです。
非認知能力とは
IQ(知能指数)のようにテストで測ったり数値化したりできる知的な能力(学力)は「認知能力」と呼ばれています。
それに対し、テストなどで測定することが難しい認知能力“以外のもの”を広く指す言葉が「非認知能力」です。
より具体的に定義すると、非認知能力とは「目標や意欲、興味・関心をもち、粘り強く、仲間と協調して取り組む力や姿勢」を指す「社会的情動的スキル」です。
GRITはIQのような知能指数と対比されるため、この非認知能力に含まれます。
文部科学省の学習指導要領でも指摘される「生きる力」はこの非認知能力を指したものとされます。
「非認知能力」についてより詳細を知りたい方は以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
GRITのポイント
アンジェラ教授が提唱したGRITでは、
- 才能とやり抜く力は違う
- 子どもだけでなく大人もGRITを伸ばせる
- 「成長思考」がGRITを伸ばすかは不明
の3つのポイントがあげられています。
才能とやり抜く力は違う
アンジェラ教授は、GRITは持って生まれた才能や知性とは関係がないとしています。
高い才能を持ちながら途中で挫折してしまった人もいれば、特に際立った才能を持っていなくとも大きな成功を収めた人がいることを例に挙げながら、アンジェラ教授は「才能があったとしても、それを活かせるかどうかは別の問題である」と述べています。
もともと才能があって努力をすれば、スキルは他人よりも早く身に着きますが、そこで終わってしまえば大きな成功を収めることはできません。
身に着けたスキルを用いてさらに努力を継続することで、初めて目標は達成されます。
つまり、成功には「才能」の優劣よりも努力の継続、つまり「やり抜く力」が決定的な影響を及ぼしている、とアンジェラ教授は主張しています。
子どもだけでなく大人もGRITを伸ばせる
GRITは生まれ持った能力ではなく、大人になってからでもトレーニングを重ねれば後天的に伸ばすことができます。
これまでに成果を出すことができなかった人でも、GRITを意識して実践に生かすことができれば、物事を成功に導くことができるようになります。
GRITを伸ばすための方法としては
- 興味があることに打ち込む
- 失敗を恐れずチャレンジし続ける(挑戦せざるを得ない環境をつくる)
- 小さな成功体験を積み重ねる
- GRITがある人のいる環境に身を置く
の4つが現状で考えられています。
自分が本気で打ち込めることを探し、失敗を恐れずに粘り強く挑戦することでGRITは育まれます。
しかし自分の意識や習慣をすぐに変えることは難しいため、GRITが高い人がいる環境に身を置き、やらざるを得ない環境を作り出すことも重要とされています。
「成長思考」がGRITを伸ばすかは不明
GRITは「やみくもに何かをやりぬけばいい」というわけではないのもポイントです。
アンジェラ教授はGRITには良いGRITと悪いGRITがあるとしています。
悪いGRITは、周囲のアドバイスに耳を貸さず、独りよがりになってしまうことを指します。
この「強情GRIT」は偽りの成功へと人を駆り立て、自己陶酔や嫉妬、傲慢の原因になるとしています。
一定期間まで続けたものの自分の中でしっくりとこない、手ごたえが感じられないといった場合には、柔軟に挑戦を変えていくことも必要です。
良いGRITには、
- 情熱
- 幸福感
- 目標設定
- 自制心
- リスク・テイキング
- 謙虚さ
- 粘り強さ
- 忍耐
の8つの要素があるとされています。
情熱や幸福感は、前述したように自分が本気で打ち込めることに取り組むことで生まれてきます。
学生時代の部活動や課外活動のように本業に直結していなくても良いので、挑戦を楽しめることを探すことが大切です。
そして適切な目標設定をすることも大切です。
GRITを高めるためには、自分ならやれるという自信を持つことが大切ですが、それは小さな成功体験の積み重ねによって生まれてきます。
自分のスキルより少し上の目標を設定し、それをクリアするという経験を積み、忍耐強く、粘り強く目標にむかって進んでいきましょう。
その上で果敢に挑戦し、失敗したとしてもチャレンジを続けていくことでGRITを伸ばすことができます。
ペンシルバニア大学のアンジェラ教授が提唱
GRITはアメリカの心理学者であり、ペンシルベニア大学のアンジェラ・リー・ダックワース教授によって提唱されました。
アンジェラ教授は、世界有数のコンサルティング会社マッキンゼーで勤務した後、ニューヨークの公立中学校で数学の教師として働きます。
アメリカではIQ(知能指数)のような数字が進学において日本以上に重視される傾向があります。
しかし、アンジェラ教授は自身の学校での勤務経験において、学校で高い成績を収める生徒は必ずしもIQで示されるような能力の高い生徒ではなく、時間をかけてじっくり取り組んで習得しようとする生徒であることに気づきました。
そこから大学に戻り心理学の研究を続けた結果、成功には「才能」の優劣よりも努力の継続、つまり「やり抜く力」が決定的な影響を及ぼしていること、そして、この「やり抜く力」は「情熱」と「粘り強さ」という要素でできていることを突き止めました。
GRITを測る「グリット・スケール」
GRITの高さはアンジェラ教授が開発した「グリット・スケール」で測ることができます。
下記の10項目それぞれを全く当てはまらない~非常に当てはまるの5段階で評価し、合計点を出してみてください。
- 新しいアイデアやプロジェクトが発生すると、ついそちらに気を取られてしまう。
- 全く当てはまらない(5点)
- あまり当てはまらない(4点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(2点)
- 非常に当てはまる(1点)
- 私は挫折してもめげない。簡単には諦めない。
- 全く当てはまらない(1点)
- あまり当てはまらない(2点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(4点)
- 非常に当てはまる(5点)
- 目標を設定しても、すぐ別の目標に乗り換えることが多い。
- 全く当てはまらない(5点)
- あまり当てはまらない(4点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(2点)
- 非常に当てはまる(1点)
- 私は努力家だ。
- 全く当てはまらない(1点)
- あまり当てはまらない(2点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(4点)
- 非常に当てはまる(5点)
- 達成まで何か月もかかる作業に、集中して取り組むことができない。
- 全く当てはまらない(5点)
- あまり当てはまらない(4点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(2点)
- 非常に当てはまる(1点)
- 一度始めたことは必ずやり遂げる。
- 全く当てはまらない(1点)
- あまり当てはまらない(2点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(4点)
- 非常に当てはまる(5点)
- 興味の対象が毎年のように変わる。
- 全く当てはまらない(5点)
- あまり当てはまらない(4点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(2点)
- 非常に当てはまる(1点)
- 私は勤勉だ。
- 全く当てはまらない(1点)
- あまり当てはまらない(2点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(4点)
- 非常に当てはまる(5点)
- アイデアやプロジェクトに夢中になっても、すぐに興味を失ってしまったことがある。
- 全く当てはまらない(5点)
- あまり当てはまらない(4点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(2点)
- 非常に当てはまる(1点)
- 重要な課題を克服するために、挫折を乗り越えた経験がある。
- 全く当てはまらない(1点)
- あまり当てはまらない(2点)
- いくらか当てはまる(3点)
- かなり当てはまる(4点)
- 非常に当てはまる(5点)
出典:アンジェラ・ダックワース(著)/神崎朗子(翻訳)『やり抜く力GRITG(グリット)』
合計を10で割った数字がグリット・スコアでGRITの高さを表します。
10問中5つが情熱を測る質問(①、③、⑤、⑦、⑨)で、残りの5つが粘り強さを測る質問(②、④、⑥、⑧、⑩)です。
まとめ
- GRITとは困難に遭ってもくじけずに努力を重ねる情熱や粘り強さである
- GRITは持って生まれた才能とは関係なく大人になってからでも伸ばすことができる
- GRITを高めるには失敗を恐れず挑戦し小さな成功体験を重ねることが大切
- GRITの高さはグリット・スコアによって測定することができる
この記事ではアンジェラ・リー・ダックワース氏によって提唱された「GRIT(やり抜く力)」について解説しました。
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