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2025-06-25

学習塾ステップの取締役が語る「教える」ことへの徹底したこだわりと成長の土台

2025年に創業50周年を迎えた株式会社ステップ。

同社が営業活動を一切行わず、業界トップクラスの平均年収700万円超を誇り、神奈川県公立トップ校合格者数で30年近く連続1位という驚異的な実績を出し続けているのはなぜでしょうか?

その秘密は、「教える」ことへの徹底したこだわりと、教師一人ひとりが「歩く広告塔」となる独自の成長戦略にありました。

この記事の監修者

Education Career 編集部

教育業界専門の転職エージェント「Education Career」の編集部です。年間で数百名の教育業界出身者の転職やキャリアの支援を行う転職エージェントとして、教育業界での転職活動やキャリアに役立つ記事を更新しています。

新卒入社以来24年間ステップ一筋・取締役 松浦様のキャリア

▲株式会社ステップ 取締役 松浦 隆夫様

—自己紹介をお願いします。

株式会社ステップ取締役の松浦と申します。

2001年に新卒で入社し、2005年から教室長を務めています。2018年には相鉄地区のブロック長と相鉄東横本部の本部長を兼任し、2021年には時間割編成部の編成部長も兼任、そして2023年から取締役を務めています。

—2023年から取締役を務めていますが、現役で教師として授業もしているんですよね。

はい、入社以来24年間、現場で授業を担当しています。現在は週に3回ほどです。

—貴社がどういう事業を展開しているのか、概要のご説明をお願いします。

当社は1975年に創業し、今年で50周年を迎えます。

主に湘南・横浜地区を中心に事業を展開しており、小中学部が145校舎、高校部が15校舎、ステップキッズが5校舎、STEP Junior Laboが1校舎あり、生徒数は約3万5千人です。

1995年に株式を店頭公開し、2012年に東証一部上場、2022年には東証プライムに移行しました。

ステップの「授業力」向上へのこだわり

—貴社は授業に力を入れているイメージがあります。授業力向上のために、どのような取り組みを行っていますか?

授業力向上の大きな柱は、4種類の授業研修です。

一つ目は「キャリア新人・2年目研修」で、入社から2年間、藤沢本部に集まり、午前中から午後まで研修担当の前で模擬授業を行う集合研修です。

二つ目は「キャリア新人・2年目個別研修」で、各校舎で同じ科目の先輩がマンツーマンで模擬授業を見て、授業の悩み相談やアドバイスを受けられる個別研修です。

三つ目は「地域別研修」で、8つの本部がある地域ごとに実施され、入社1年目の教師から入社30年目を超える教師まで、同じように模擬授業を行います。

—社歴の長い方も参加されるのですね。

はい、その通りです。

当社のモットーは「ベテラン教師はいない」「何年経っても無限に成長できる」という考えです。ダンスや漫才と同様に、表現する仕事に100点満点はないと私たちは考えます。ステップの教師も授業に満点はないとし、入社何年目になっても授業を磨き続けています。

そして四つ目は「フォローアップ研修」で、授業に苦戦している教師を支援するための研修です。

研修では主に模擬授業を行い、地域別研修では入試の分析を持ち寄ったり、成功した授業手法の交換も行います。また、教師は年に1回、自身の授業を丸ごと撮影し、監査担当がその映像を点検します。授業展開や生徒とのコミュニケーションについてアドバイスを受け、次の授業に活かす制度もあります。

撮影された映像はe-STEPという動画サーバーにアップロードされます。教師は他の教師の授業を視聴し、授業方法を学習することができます。その他には、生徒からの様々な質問に即座に答えられるよう、学力研修も実施しています。

私自身も入社当初に比べれば失敗は減りましたが、生徒は毎年異なりますし同じ授業でも反応が違うことがあります。それが楽しさでもありますが、やはり100点満点はないと思いますね。

—プライム上場企業の取締役クラスで週3日の授業を担当されているのは、かなり珍しいのではないでしょうか。

おっしゃる通りかと思います。ただこれは当社の伝統とも言えるもので、創業者の龍井も62歳まで現役で授業を行っていました。

—授業を行いながら経営にも携わるのですね。

その通りです。当社の教室長はその校舎で最も多くの授業を担当します。

他塾では教室長やブロック長になると授業から外れることが多いですが、せっかく身につけた授業の技術を現場で活かせないのはもったいないですよね。

そのため教室長・ブロック長・本部長・役員という役職になっても、授業を担当しながら教室運営や経営を行うことが非常に重要だと考えています。

—そうすると今の幹部の方々、経営陣の方々も、全員最初は現場で先生をされていたということですか?

はい。教師として入社したメンバーは、キャリアアップ後も一貫して授業を担当し続けています。高校部でチューターとして入社したメンバーも、室長になってもチューター業務を継続します。

女性が結婚や出産で現場を離れる場合を除き、入社時に携わる授業やチューター業務をキャリアアップしても継続するという方針です。

営業活動を一切行わない理由

—授業とマネジメントの両立は大変ではないですか。

当社では営業活動を一切行っていません。そのため、教師は授業以外の時間も生徒のために費やします。教室長が行うマネジメント業務も、時間割作成や定期テスト対策の計画、保護者説明会の準備など、すべてが授業や教務に繋がっています。

生徒に良い授業を提供することで地域に評判が広がり、それが財産となって最大の広告宣伝になると考えていますから、教師の電話営業や友達を紹介した生徒にノベルティや金券を与えるといった営業活動は行いません。

また、学業成績や模試の成績が高い生徒の授業料を減額する特待生制度も設けていません。これは、同じ授業に参加する生徒間で授業料に差を設けることはしないという考えからです。

—シンプルな運営で授業に専念できるということですね。

はい。教師や教室長は広告宣伝を意識せず「良い授業をしたい」という思いで日々の仕事に取り組んでおり、それが結果的に評判に繋がっています。

創業当初は多少の広告宣伝費を費やしていましたが、年々削減して現在はほとんど使わずに生徒数を伸ばし続けています。

生徒や保護者からの評判が口コミや弟妹の入会に繋がり、教師一人ひとりが「歩く広告塔」となっています。

—授業力に裏打ちされた結果、神奈川県での展開に繋がっているのですね。公立トップ校の合格者数では、30年近く連続で1位を維持していますよね。

その通りです。これは合格実績を直接目指したのではなく、高い授業力の結果として自然とついてきたものです。地道な取り組みの結果、例えば藤沢市では中学生の20%以上が、ステップに通っています。

教材とデータの活用で授業力をさらに補う

▲教師一人ひとりの授業力はもちろん、生徒に必要な教材を自分たちで作っていくのもステップの特徴のひとつ。

—神奈川県内で地域密着で成長し、シェアを伸ばしている現状ですね。この成長の要因は授業力以外にもありますか。

はい、授業力以外では教材の力とデータを活用する力が挙げられます。

教材については「教材研究部」という専門部署があり、主に教師出身者が神奈川入試を徹底的に分析し、ステップのテキスト、プリント、模試を作成しています。

毎年変わる入試傾向に対応するため入試後には全員で問題を解き、その分析に基づいて教材の改訂や模試の作成方針を決定し、教師に伝えています。

また神奈川県の一部の学力進学重点校で実施される「特色検査」に対しては、早期に専門の「特色検査対策チーム」を結成しました。このチームが対策プリントや模試を作成し毎年リニューアルしているため、教材の力が成長の大きな要因となっています。

作成した教材や模試は自社内で使用しています。中3生向けの「オープン模試」は外部の方も受験できます。

そしてデータを分析する力も重要です。毎年入試後に公立高校を受験した生徒から答案のコピーを見せてもらい、数千ものデータを収集します。これにより今年度の教科ごとの間違いやすい箇所や、各高校のボーダーラインが正確に把握できます。

このデータを教材作成に活用するほか「高校ガイダンス」で生徒や保護者に情報を提供しています。

高校ガイダンスは春と秋に年2回開催され、受験者が多い高校を中心に、入試分析、学校紹介、今後の勉強法といったパートで構成されます。

春のガイダンスでは高校のボーダーラインや模試の目標点数を伝え、秋のガイダンスでは入試分析に加え、受験スケジュールや受験戦略、推奨教材などを紹介します。

精密に分析されたデータをもとに生徒は目標を立てやすくなります。教師もこのデータを生徒とのコミュニケーションやモチベーション向上に役立て、保護者への情報提供も行います。

毎年4月には「入試分析会」で各高校のボーダーラインを教師間で共有し、教師も高校ガイダンスを見学することで、生徒指導の指針を立てています。

なぜ「神奈川県」にこだわるのか?

—なぜ神奈川県に特化して事業を展開されているのですか。

主な理由は2点あります。

一つは県によって入試制度が大きく異なることです。神奈川県では5教科の試験以外に特色検査を実施する学校があり、学校の成績・5教科の点数・特色検査の選抜割合も学校ごとに違います。

他都道府県の入試制度はそれぞれ異なるため、各制度に対応する教材作成や進路指導を一本化することでより高い成果が得られると考えています。

もう一つは全国的に少子化が進む中、神奈川県は少子化のペースが比較的緩やかである点です。特に川崎市と横浜東部は少子化の進行が緩やかであり、市場として恵まれています。

そのため少子化が激化している他県に進出するよりも、現在の神奈川県で着実に事業を進める方が良いという考えから、当面の間、神奈川県外に出る予定はありません。

神奈川県全体の中学生の53%が横浜市と川崎市に集中しています。その中でステップのシェアは、横浜市で10%、川崎市で5.8%です。藤沢市、鎌倉市、海老名市では20%以上のシェアがあります。この数字から、横浜市と川崎市にはまだ大きな成長余地があると考えています。

川崎地区は比較的最近開校した校舎が多く、ドミナント戦略で徐々に展開している段階です。南部線を中心にまだ開校の余地があり、今後も川崎市での展開を強化していこうと考えています。

—研修に時間をかけていますし、教師が商品そのものであることを考えると、無闇に展開すると品質が低下するリスクがあると。

おっしゃる通り、一人前の教師として現場に立つには時間が必要です。そのため新規開校は多くても年に4校程度、少ない時は1校に抑えています。

教師の育成とキャリアパス

—社内の育成体制やキャリアパスについて教えていただけますか。

キャリア入社の方も最初の2年間は新卒と同じく「キャリア新人・2年目研修」と「キャリア新人・2年目個別研修」に参加します。地域別研修にも参加し、新入社員と同様に授業のバックアップ体制を整えます。前職で塾講師経験のある方も同様です。

私自身は新卒入社ですが、大学時代に別の学習塾で集団授業の経験がありました。しかし入社後、授業に特化して何十年も教えている先輩方の授業を見た時、「こんな伝え方があるのか」と目から鱗が落ちるような経験をしました。

一方でキャリア入社の方が持っている黒板の前に立つ経験や大勢の生徒を前にしても緊張しないといった点は、大きなアドバンテージとなります。

当社の授業は生徒に積極的に当て、答えてもらいながら進めるスタイルです。生徒が間違えたり内容を忘れていたりする時には教師がサポートし、うまく答えられた時にはしっかり褒めることで生徒が前向きで明るい教室環境を築きます。

キャリア入社の方には当社の雰囲気や授業の進め方に慣れてもらうため、新卒と同様の研修機会を提供しています。当社の研修を経験すると、経験者の方でも図の見やすさや板書のまとめ方、生徒に答えさせるコミュニケーションの取り方などに驚かれることがあります。

ただ細かなマニュアルがあるわけではありません。教師それぞれの個性を活かすことを重視しており、研修ではキャリア入社の方の強みを活かすアドバイスをしています。

例えば、20代の教師は授業技術はまだ習熟過程にありますが、生徒との感性が近く、コミュニケーションを通じて良好な関係を築きやすいでしょう。逆に30代以降の教師は生徒の感性からは少しずつ離れていきますが、授業技術が習熟していきます。

—未経験で入社されて活躍されている方もいらっしゃるのですか。

はい。キャリア入社は経験者の方が多いですが、一部未経験の方もいます。

東北、大阪や関西、九州地方など神奈川県外からの応募も多く、他塾の管理職や上席の方からも、営業活動がなく授業に集中できるという理由で応募をいただくことが多いです。

—入社後のキャリアパスについて、一般的なモデルを教えていただけますか。

はい。まず新卒入社1年目の職位は「ルーキー」で、基本的には1教科を担当します。

2年目には「レギュラー」となり、第2教科の中2を担当し、この頃から自分で教材を作成できるようになります。

3年目もレギュラーで中3の第2教科を担当し、4年目には「ミドル」に昇格します。ミドルはスクール内で2教科を安心して任せられる職位で、後輩の指導も行います。

ミドルの次は副教室長ポジションの「シニア」で、教務の責任者を務め、教室運営にも携わり、研修担当や高校ガイダンスも担当します。

「教室長」は引き続き授業を担当しながら教室運営の責任者を務めます。

さらに4~9校程度の校舎を管轄する「ブロック長」があり、授業を担当しつつ各教室にアドバイスを行い、執行役員会に参加します。

その上の「本部長」は現場の最高責任者として、授業を行いながら各スクールやブロックにアドバイスを行います。

そして「取締役」も授業を担当しながら会社全体の経営に携わります。

—キャリア入社の方も最初はルーキーからスタートするのですか。

キャリア入社の方の職位は、採用面接での模擬授業やこれまでの経験に応じて決定します。レギュラースタートのケースもあれば、ミドル、シニアスタートのケースもあります。

数年で教室長になることもありますし、新卒入社の社員と同じ基準で役職に就くことが可能です。

—レギュラーやミドルへの昇格基準はどのような点を見ていますか。

レギュラーは担当クラス・教科で決まります。第2教科の中2を担当すればR1(レギュラー1)、中3の第2教科も担当すればR2(レギュラー2)となります。

ミドルへの昇格は、レギュラー職位で授業を安心して任せられると判断された場合です。判断基準としては、年に2回実施される生徒アンケートの評価、年に2回教師が受ける認定テストの結果、研修での模擬授業の様子などを総合的に判断して決定します。

—貴社は平均年収が700万円を超えており、業界的にもかなりの高水準ですよね。

そうですね。業界の中でも高い水準ですし、実は藤沢市に本社を置く企業の従業員平均年収ランキングでは2位です。

—数年前よりも上がっているようですが、意識的に引き上げているのでしょうか。

はい。数年かけて給与施策を進め、従業員の給与を引き上げています。やはり人材産業である学習塾は授業を行う教師が非常に重要ですから、待遇をしっかりとしたいと考えています。

少子化が進む今でも当社は高い生徒数を維持しています。高校部では新入生の受付開始日に校舎が満員になることもありますし、最速の校舎では受付開始から2〜3時間で定員に達します。中学部の充席率も今年度は88%です。

こうした各教室が地域に根差し信頼を積み重ねてきた実績が、給与施策を進める背景にあります。

ステップが「変えないこと」と「変えていくこと」

▲50年の歴史を持つステップは、時代の変化に合わせて求められるサービスをいち早く提供し続けている。

—こだわりを持つ面がある一方で、やはり改善するべき課題もあるのでしょうか。

今後も営業活動は一切行わず、教室長、ブロック長、本部長、取締役といった全ての教師が授業を大切にしていきます。これは今後も変わらない点です。

一方、時代の変化には柔軟に対応していきたいと考えています。

例えば15年ほど前には神奈川県の公立入試で独自入試があり、各高校が独自に問題を作成していたんです。学校によっては数学の平均点が30点(100点満点)と非常に難しい年もあり、それぞれの学校に特化した対策が必要でした。そのため教材研究部が早期に問題を研究し、対策プリント作成等に着手しました。

また2020年のコロナ禍で生徒が教室に来られない時期には、早期にZoomでの授業やホームルームを始めました。教師がその日の授業を撮影し、動画をアップロードして生徒が視聴できるようにするなど迅速に対応しました。

現在は高校無償化について、公立・私立選択の変化を見据えて情報収集を進めています。

—高校無償化で私立へ流れる生徒が増える可能性についてはどうお考えですか。

一定数の生徒は私立を選択するかもしれません。しかし神奈川県では学区が撤廃され自分の行きたい学校を選べるようになったため、今でも人気校への応募が集中しています。

そのため魅力ある公立高校であれば、無償化後でもそれほど多くの生徒が私立に流れることはないと見ています。

—松浦様から見て、「良い先生」とはどのような先生でしょうか。

生徒と接する現場において、人から頼られることや人が喜ぶことに価値を見出す方です。

また生徒に共感しながら楽しくコミュニケーションを取ったり、授業を通じて生徒の成長に喜びを感じられる方です。

そして何よりも、1年、2年、3年と時間をかけて生徒の成長を応援したいという気持ちがある方こそ当社で活躍できるでしょう。そのような方とぜひ一緒に仕事をしたいと思っています。

教育業界でキャリアを考える方へのメッセージ

—最後に、教育業界でキャリアを検討されている方へメッセージをお願いします。

当社は教えることが好きな人が集まる学習塾です。生徒の成長を応援したいという方は、ぜひ応募してみてください。

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この記事の監修者

Education Career 編集部

教育業界専門の転職エージェント「Education Career」の編集部です。年間で数百名の教育業界出身者の転職やキャリアの支援を行う転職エージェントとして、教育業界での転職活動やキャリアに役立つ記事を更新しています。

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