2025-07-17
年間27,000人が受講する東大発“AI講座を運営する松尾研――『人生が変わった』を生み出す仕事
日本のAI教育をリードし、起業家やデータサイエンティストを多数輩出してきた東京大学・松尾・岩澤研究室(以下、松尾研)。
年間30講座以上を全国の学生・社会人へ無償で提供し、実社会との共同研究やインキュベーション体制を整えるなど、その活動は“スタートアップさながら”のスピード感にあふれています。
今回は、教育プラットフォームチームの中心メンバーである中務様に、松尾研で働くやりがいや魅力、そしてAI教育の未来についてお話しいただきました。
この記事の監修者
Education Career 編集部
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目次
データサイエンス講座を無償開講する東大・松尾研で企画職を務める
▲東京大学 松尾研究室 教育プラットフォームチーム 中務 のぞみ様
—自己紹介をお願いします。
松尾研の教育プラットフォームチームで講座の企画運営をしている中務です。
前職ではIT系の人材育成企業にて、講座の企画開発や講師、新サービスの企画開発を行っておりました。
2023年2月よりこの松尾研にジョインし、現在ではメイン講座の企画運営や、年間30講座以上ある講座の運営管理を担当しています。
—松尾研は、日本のAI教育の第一人者として知られている東京大学の松尾豊教授の研究室ですよね。内閣府のAI戦略会議の座長を務められたり、卒業生の中には起業家や著名なエンジニアの方も多いと伺っています。
おっしゃる通りです。
松尾研では全国の学生向けにデータサイエンスやAIの講座を年間30講座以上、無償で提供しています。
さらに松尾研と伴走する組織である株式会社松尾研究所が企業との共同研究を行っているため、講座を受けた優秀な学生や意欲ある学生にインターンとして参加してもらい、学んだスキルを社会実装する機会にもつなげています。
その経験を踏まえ、さらに起業へ進んでいく学生も多く、その後押しもしています。
基礎研究、講座提供、共同研究、そしてインキュベーションがエコシステムとしてつながる仕組みを通じ、先駆者を社会に輩出していくことをミッションとしている研究室です。
—東大に限らず、全国の学生に無償で提供しているんですね。
そうなんです。学生の機会を最大化することを重視しているので、教育資金のない学生でも学べるように無償で講座を提供しています。
—東京大学に属す組織でありつつ、日本全国のAI人材育成に資する取り組みを行っているのですね。
おっしゃる通りです。
松尾研の理念に共感し転職を決意
—中務様が松尾研に入ったのは2023年ということですが、それまでは企業の人材育成に携わっていらっしゃったのですよね。
はい、そうです。
—前職ではどのような業務を行っていたのですか。
日系の大手企業の人材育成を担う人材育成企業に所属し、グループ全体および他社向けの人材育成を行っていました。
主にIT系の人材育成で、クラウドやサーバー管理、プログラミングなどの講座の企画・開発、コンテンツ作成、講師登壇などを手掛けていました。また、新しい学習サービスの考案や企画、実装にも携わっていました。
私がファーストキャリアに人材育成企業を選んだのは、大学時代に福祉系NPOに関わった経験がきっかけです。
そのNPOは資金面の余裕のなさから人材育成に投資することが難しく、長期的な就労が難しかったり将来のキャリアを描きづらい状況を目の当たりにしました。
非常に重要なことをしているNPOでも、人材が長続きしないという課題があったのです。そこで、まずはビジネススキルの教育を提供できるようになりたいと思い、人材育成企業に入りました。
—なぜ転職しようと思ったのでしょうか。
人材育成企業で一般的なビジネススキルを学びながら、教育を提供するという経験を12年ほど積む中で、松尾研が全国の学生に無償で教育機会を提供していることを知りました。
私がもともとやりたかった「教育資金のないところにでも教育機会を提供する」というテーマを実際に形にしている組織だったので、ここでなら「自分が持っているものを還元できるのでは」と思い、転職を決めました。
—入ることを決める際、迷いはありましたか。
前職に不満があったわけではないので、正直かなり悩みました。
ただ、組織のカルチャーがスピード感にあふれ、何でも試せそうだという魅力を感じて、思いきって転職を決めました。
現在は「東京大学の職員」という立場で勤務しています。
年間27,000名超の受講生を抱えるオンライン教育プラットフォームを運営
▲GCI講座は、全回オンライン講義かつアーカイブ視聴も可能。ただ無償であるだけでなく、真に「学び」につながるシステムを目指している。
—松尾研は全国に無償で講座を展開しているとおっしゃっていましたが、代表的なものを教えていただけますか。
メイン講座は「東京大学グローバル消費インテリジェンス寄附講座(GCI)」です。
プログラミングが初めての方でも、データサイエンティストの入り口に立つまでのスキルを習得できるような内容の講座です。
全15回のボリュームある講座で4月と10月の年2回開講ですが、毎期ごとに受講者数が大きく増えており、1講座あたりの受講生数は5,000名規模になっています。
—オンラインで提供しているのですか。
はい。全国どこからでも受講できるよう、基本的には全回オンライン配信です。またリアルタイムの受講が難しい方のために録画も提供しています。
さらにSlack上ですべての受講者同士が互いに疑問を解決したり、学習を深めたりできる環境を用意しています。
—年間27,000人以上も参加していると、Slackのチャンネル管理などが大変そうですね。
多少の属性別チャンネルはありますが、基本的には1つの大きなチャンネルで自己紹介をしたり、各回の質問や疑問を共有したりしているので、運営側の管理工数はそれほど大きくはありません。
—主にどんな方が講座に参加しているのでしょうか。
ほとんどは大学生ですが、中高生や社会人、さらには小学生の受講もあります。皆さん非常に優秀です。
参加は抽選制ですが、できるだけ多くの方が受講できるようにしています。
—無償でここまでやるのは大変だと思いますが、運営資金はどう確保しているのですか。
産学連携の一環として、研究や教育の活性化を目的としていただいている企業からの寄付金が主な資金源です。
—企業からも支援を受けられるのは、インターンや共同研究などで学生が社会に出ていく仕組みがあるからでしょうか。
はい。活動に共感してくださる企業が多く、エコシステムとして機能しているからだと認識しています。
講座準備からアシスタントのマネジメントまで一手に担う
—中務様は講座運営にどのように関わっているのですか。
私はGCI講座のメインリードとして、カリキュラム構成や育成する人材像の定義、そのための最終課題や内容構成を決めるといった部分を担当しています。
また、当講座では修了生から30名以上ティーチングアシスタント(TA)として活躍しており、質問対応やオンラインでの質疑応答会などをTA主体で実施いただき、「学ぶ側」から「教える側」へとシフトするサイクルができています。
私はそのTAのマネジメントも含め、開講から閉講まで先頭に立って運営しています。
—同じような業務をされる方は他にもいらっしゃるのですか。
はい、私のほかにもマーケティングを担当して講座を周知するメンバーや、他講座との連携を図るメンバーなどがいます。
—他の講座も同様に運営されているのでしょうか。
企画職は8名、運営進行管理を行うサポート職6名、合計14名の体制で全講座を回しています。
当研究室では年間30講座以上開講しますが、1つの講座に1名ないし数名の企画職とサポート職がついてプロジェクト単位で運営する仕組みです。
—サポート職の方はどのような業務を行うのでしょうか。
サポート職は「コーディネーター」と呼ばれます。Webでの広報や受講者の募集・対応、教材準備から講師のアサインといった担当講座の開講準備から、開講期間中の講座運営、閉講後の修了判定まで、一貫して講座を支援してくれています。
意思決定は企画職がしますが、日々の運用進行管理はコーディネーターがカバーしてくれています。
週4・時短・繁忙期でも短い残業と働きやすい環境
▲出勤日数や勤務時間帯など働きやすい環境で、長期的なキャリアビジョンも持ちやすい。
—勤務時間帯はどのように決まっていますか?
メンバーによって勤務時間がそれぞれ違い、多様な働き方ができています。たとえば週4勤務や時短勤務の者もいます。
フルタイムのメンバーは9時半から18時という勤務時間が一般的ですが、ライフスタイルに合わせて多少の調整は可能ですね。
—開講時間帯は夜が多いのでしょうか。
講座によります。
学生のみを対象とする講座には平日の日中に開講するものもあります。社会人も受け入れている講座は、夕方から夜の時間帯が多いですね。
—担当する講座によっては夜に対応する場合も出てきますよね。
はい、あります。
とはいえ、先述の受講生から募ったTAやインターンと一緒に講座の運営を行っていますから、必ずしも職員自身が定時後の勤務を常に行うわけではありません。
—土日に開講することはあるのですか?
今のところ土日の開講はありません。
受講者を集めたイベントを開催することはありますが、それも年に数回ほどですね。
—講座数や受講者数を聞くと運営側もかなり忙しそうです。実際はいかがでしょうか。
やはり繁忙期はあります。特に開講前のタイミングは忙しくなりますが、それでも残業時間は月で10時間から20時間程度です。
繁忙期以外はほぼ定時で上がれる日も珍しくありませんね。
勤務時間や出勤日数も個人の都合に合わせて調整できますし、残業時間も少なめですから、安心して働ける環境なのではないかと思います。
求められるのは関連業界の経験より、基本的なビジネススキル
—コーディネーターの皆さまは、前職でどんな経歴が多いのか気になります。ITや教育業界出身など、関連する経験が必要なのでしょうか。
さまざまな業界の出身者が入職しています。たとえば金融や広告代理店など、まったく異なる業界の者もいます。しかし、それまでの社会人経験で身につけたスキルが活きる仕事ですから、他業界出身でも問題はありません。
もちろんITや教育業界の経験があれば、それを活かした発展的な業務をより多く任せられるとは思います。
ただ、それよりも松尾研が展開する大規模なAI教育への共感、社会貢献性の高さが重要です。
松尾研では新しい講座が毎期立ち上がりますので、コーディネーターの皆様が持つ裁量権も大きいです。変化を楽しみつつ、先々に起こることを見通しながら、的確かつ柔軟に取り組める方がより活躍できる環境だと考えています。
—一般的な大学職員というと、毎年同じ業務を繰り返すような安定的なイメージがあると思うのですが、松尾研の場合は変化がかなり大きいということでしょうか。
そうですね。いわゆる大学職員のような、定型の仕事を安定して続けたいという方よりは、毎回違うことにチャレンジして楽しく働きたいという方に向いていると思います。
—松尾研に入職するにあたって「ここはキャッチアップしておいたほうがいい」というスキルはありますか。
基本的なPC操作、事務的なスキル、そして複数の講座を並行して管理・運用するマルチタスク能力は必要かと思います。しかしAIの知識などは必須ではないので、ご安心ください。
「キャリアに直結する学び」が提供される場
▲松尾研の講座受講を通じ、多くの人から「人生が変わった」と声が寄せられているという。
—中務様ご自身も企画職で講座の内容や運営をしていると思いますが、ここで働く大きな魅力ややりがいはどこにあると感じますか。
やはり、受講生の方から「人生が変わった」と言っていただけることが大きいですね。
受講後に松尾研究所が行う共同研究にインターンとして参加して、その後、実際にデータサイエンス分野に就職する学生もいますし、自分で起業する学生もいます。社会人でも、まったく異なる職業からデータサイエンスの道に進まれる方がたくさんいらっしゃいます。
そういった方々が新たなキャリアを築いていく場面に立ち会えるところに大きなやりがいを感じます。
—一般的な大学の講義のイメージとは異なり、松尾研の講座はキャリアに直結している印象がありますね。
そうですね。手を動かしながらスキルを身につけて、それを社会実装するところまでセットで体験できますので、非常にキャリアに直結する機会だと思います。
—最近は生成AIが身近になってきていますよね。業務でのAIの発展や変化をどのように感じていらっしゃいますか。
講師からは講座の内容を作る段階で、AIと相談しながらカリキュラムを組むというのはよく耳にしますね。
私も壁打ち相手としてAIを使いながら企画を考えることはあります。やはりChatGPTが出てから、大きく変わったと感じます。
—AI教育という観点で見ると、どのような課題があるとお考えでしょうか。
AIが社会やビジネスの中で普及してきたとはいえ、中高での情報教育が十分に行き届いていないと感じています。
松尾研では主に大学生を中心に講座を提供していますが、中には「ハードルが高い」と感じる方も少なくありません。
やはり中高の情報教育と大学・社会で求められるスキルとの間にギャップがあると思います。
—そのギャップを埋めるために何か取り組んでいらっしゃることはありますか。
初学者向けに、最新の動向をキャッチアップできるようなコンテンツを提供しています。中高生や文系の方でも入っていきやすい講座を整えています。
松尾研が描く今後のビジョン
—松尾研は今後どういった方向を目指しているのでしょうか。
現在、松尾研では年間2.7万人の受講者に講座を提供していますが、もっと広げて日本全体にインパクトを与え、社会に貢献していきたいと考えています。具体的には2025年度は7万人、2026年度は20万人に講座を提供するのが目標です。
—2.7万人から20万人というと、約10倍近いスケールですね。スタートアップのようなスピード感があります。
そうですね。まさにスタートアップのようなカルチャーだと思います。
—組織としても規模を拡大していく必要がありますね。
おっしゃる通りです。
この記事をご覧の方々は、教育を通じて人生や社会に貢献したいという思いをお持ちだと思います。
松尾研のビジョンに共感し、「今しかできないことを、スピード感ある組織でやってみたい」と思う方は、ぜひご応募ください。
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この記事の監修者
Education Career 編集部
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